なんだかとっても、たのし草！｜リアクション

なんだかとっても、たのし草！

　飲みさしのミルクティーとアイスコーヒーの氷がゆっくり溶けて、からりと鳴る。

　新装開店のカフェは休日とはいえひっそりとして、時子も鶯も、ゆっくり進む時間を楽しんでいた。
　ほぼお互い初対面だったが、たがいに詮索しあうようなこともなく、気ままに振る舞っていた。

「そんなに暑いのですか」
「たまらないわね」
「不思議ですね･･････過ごしやすいと思うのですが」
　ミルクティーを置いて、時子は扇子を取り出し風を送る。

「涼しいですか･･････まだ暑いですか･･････」

　どこの文字ともしれぬ、分厚い海外の書物を鸞は机の上に置く。
　青白い喉を晒して、けだるげに視線を外へ遣る。
　まるでここだけ隔絶した空間のように、穏やかだがどこか不穏な時間が過ぎていく。

「髪が汗で張り付いて、うざったいったらない」
「纏めて差し上げましょうか」
「お願い」

　長くつややかな髪を時子の繊手がまとめるにまかせ、鸞はひたすら本に読みふける。
　まるで幼なじみか何かのような、隠微なほど親密な時間が過ぎる。
　ヘアバンドでくくりあげ、アップに髪をまとめる。

「本当に世話焼きなのね」
「なんとなく、そんな気分なんです」
「項が綺麗に出せるのね。センスあるわよ」
　鏡台に移った自分たちの姿を、しげしげと見つめる二人。

「お世話させていただきました」
　帰り際、丁寧に頭を下げる時子に、鸞は笑いかける。
「本当に変な子ね」

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