いざ特売という名の戦場へ｜リアクション

いざ特売という名の戦場へ

●意外な落とし穴

　椿美咲紀は商店街にある衣料品店にやってきた。しかし店はまだ開いていない。開店前にやってきたのには理由がある。そのヒントは手に握られた1枚の広告チラシ。美咲紀の狙いは『プリントTシャツワゴンセール』である。
　美咲紀はガーデニングや家庭菜園の土いじりの時にTシャツを作業着として使っている。土汚れは簡単には落ちないので、汚れても大丈夫な服が適している。しかしTシャツなら何でもいいというわけでもない。

（作業的にはなるべく白い物を着用推奨なのです）

　熱中症予防と日焼け対策のため、白い服でないと危険。つまり安いTシャツを多量に準備しておきたいと考えるのは自然なこと。
　そして今回のセールを広告で知った美咲紀は、1枚でも多くゲットするという闘志を燃やしながらやってきた。チラシにはサンプルとしてTシャツのプリント柄が数点載っている。1着の値段は500円。しかしデザインは少し前に話題になったものばかり。でも作業着として使うには十分。

「この特売は狙い目。柄が多少古くても、問題ナイ！！」

　開店と同時に突撃するべく構えをとる。そして、店の扉が開かれた。
　美咲紀はまっすぐTシャツが大量に入ったワゴンに向かって突き進む。すると同じ目的であろうガーデナー仲間なご近所さんの姿が何人か見えた。

（負けませんよっ……！）

　お互いにそんな意志を込めた視線を送りあう。このセールに来ているということは目的のTシャツも同じ。だからこそ負けられない。美咲紀は人混みに揉まれつつも、どうにかワゴンのなかから白っぽいTシャツを掴みとった。人混みを抜けて一安心……とはならなかった。

「はっ！？　よくよく見たらお値段に差が！？」

　自分が掴んだTシャツの値札を見て、値段の差に気づいた美咲紀。

「色柄マシじゃん、な物は割引率低め！　とんだトラップなのです！」

　慌ててチラシを取り出す。金額の部分を改めて見ると『500円～』となっている。

「この『～』が！！」

　思わぬ罠である。美咲紀は再び人混みに突撃してTシャツを探す。しかし最低金額だと黒っぽいTシャツばかり。白くて、納得できる値段のを必死に探す。そうしている間にもTシャツの山は減っていく。それでもなんとか数点確保することができた。

「何枚か買えました……もう数枚欲しかったけど、残念……」

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