寝子高雑巾がけレース、出会い系？｜リアクション

寝子高雑巾がけレース、出会い系？

○ラストスパート！

　先頭を行くシダが、かように言った。
「ペア戦　楽しいが　単調だ　シダと　かようも　対戦しよう　対戦」
「え、俺達で対戦？」
「ゴミ　ひとつひろう　1ポイント　２人　進む　息あわせたまま　スピードゆるめず　拾う
　ゴールした時　ポイント多い方が　勝ちだ　勝者　
　かよう　勝ったら　いつもの蜂蜜　ずっと安くしてやる　ずっと」
「おお、それは嬉しいな」
　ベトナム産のライチ蜂蜜と蜂蜜キャンディが美味しいと聞いたのがきっかけでシダの店に行ったかようには、願ったり叶ったりの条件だ。
「シダ　勝ったら　道場終わってから　一時間マッサージしろ　ずっと　毎日　お前の腕力　鍛錬にもなる　な」
　シダは振り向いてかようにウィンクする。
「いいだろう、負けないぜ」　
「いいか　ヴァン　それでいこう　いくぞ　かよう　モッハイバーボン（1　2　3　4）」
　こうして二人の対戦が始まった。
　単純に考えれば先に行く者がゴミを多く見つけられるが、雑巾がけで巻きあがった埃が後から落ちてきたりもするからわからない。
　廊下はますます綺麗になっていった。
　
　本番に強い碧南もスタミナ切れすることなく、順調に飛ばしている。
（先輩、運動部じゃないのに息切れしてない……すごい）
　そんなことを思いながら前を行く鷹取先輩を見つめていると、登り階段にさしかかった。
「先頭が見えたよ、羽生くん」
　前を向いたまま洋二が言う。
　目を上へ向けると、野球のユニフォーム姿が見えた。
「あれを抜けば、トップですね」
　できることなら邪魔されずに二人きりで走り続けたいけれど、ペア券は魅力だ。
　碧南と洋二はスピードを上げ、差を少しずつ縮めていく。
　
　その後ろから来るのは修とあおいだった。
「終盤の登りは体力勝負だ。頑張れ、あおい」
「私は大丈夫。修君もがんばって」
　修とあおいは励ましあって階段を登っていく。

　北校舎３階。残りは直線のみだ。
「シダ先生、後ろから追いついてきてるぜ」
　気配を感じて後ろを振り向いたかようが言う。
「まってろンゴーン　シダの胃袋と　足が　本気出す！　ゴミ拾いも　どっちも　勝つぞ　シダ」
　本気スイッチが入ったシダが、よだれを垂らしながら走る！
　その人間離れした速さには洋二と碧南も及ばなかった。
「すごい速さだな、でも負けないぜ！」
　かようも必死でついていく。

　ゴールで待つ理事長や久保田先生の姿が見えた。
「モッハイバーボン！！」
　かようの手がシダの手をしっかりつかむ。
「ゴール！」　
「優勝だ！」　

　そして間もなく碧南と洋二が後に続いた。
　手を繋いでゴールした瞬間、碧南は胸キュンの極みでぼぉーっとしてしまった。
「ありがとう羽生君、楽しいレースだったよ」
　洋二が笑った。

　修とあおいは、手をしっかり繋いで３着でゴールした。
「優勝は逃したけど３位入賞だ。あおいのおかげだ」
「こちらこそ、修くんのおかげだよ」
　綺麗になった廊下を見合った二人に笑みがこぼれる。
「ああ、でもこれを」
　修がリュックからケアのクリームを取り出し差し出す。
「掃除って手が荒れるから。良かったら……」
　真っ赤になって言う修から、あおいは笑顔でクリームを受け取った。
「ありがとう。修くんすごく頑張ったんだね。顔が赤いよ」
　そして、
「修くんも塗っておくといいよ」
　と使った後のクリームを修に渡してくれたのだった。

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