寝子高雑巾がけレース、出会い系？｜リアクション

寝子高雑巾がけレース、出会い系？

○スタート！

　その他の選手もあわせ９組が位置について、スタートを待ち受ける。
「ハァイ、理事長の桜栄あずさよ。
　スタートは南校舎３階西側階段付近。各階を往復したら階段を降りて１階まで行ってね。
　南校舎の１階を終えたら、渡り廊下を渡って北校舎へ。
　北校舎は階を上がりながら同様に進んで北校舎３階西側階段付近がゴールよ。
　雑巾のサイズ規定は縦２０ｃｍ×横３０ｃｍが目安。
　自分の手が一部でも雑巾に触れている状態で廊下を拭いて、初めて『雑巾がけ』と判断するわ。
　優勝者にはペア券が待ってるわよー」
　理事長の解説の後に、久保田美和先生が続く。
「では位置について！　用意ー……スタート！」
　生徒たちが一斉にスタートした！

（賞品、星ヶ丘のホテルのビュッフェ券って本当かな）
　ワカメ頭をなびかせ走る洋二を追いかけて、四つんばいで雑巾がけ走りをしながら碧南は思う。
（理事長が出すというから信憑性はありそうだけど……）
　ちらりと、洋二がこちらを振り返った。
（鷹取先輩とならどこへでも行ってもいい気がする。頑張らなきゃ！）
　普段感じることのない四つんばいで走る振動が、碧南の胸にダイレクトに伝わり不思議にときめかせる。
　
　他の生徒と違い修は背中にリュックを背負っていた。
「ルールを守り、汚れを確実に拭おう。レースだから速度も重視するけどね」
　あおいへの気配りを忘れず、やみくもに飛ばすことはしない。
　最後尾だが、このまま終わらない気配がする。

　トップを走るのは、シダとかようのペアだ。
（背も同じくらいだし、大体の動き方も道場で見てるからわかる）
　四つんばいで走りだしたかようは、先を走るシダを見る。
　昨年の優勝者だけあって四つんばい姿勢とは思えないスピードだ。
　こちらを振り返るシダに向かってかようは言った。
「意地でもついていくから俺に合わせて手加減とかやめてくれよ。置いていってやるくらいの気合いでいい。俺も負けず嫌いだから、そうしてくれた方が調子が上がるんだ。のろのろしてたら、逆に俺が先生を置いてっちまうからな」
「ヴァン（うん）　かよう　お前　見所ある　　遠慮しない　とばす　ついてこい　優勝するぞ　優勝　シダ」
　シダはチャーミングな笑みを見せた。
「ペア　息あわせろ　声かける　聞け　あわせろ　シダも　お前　声聞く　ホンサオダウ　大丈夫　信頼してる」
　シダの言葉に頷き、声に合わせながらかようは考える。
（雑巾がけレースはいつも道場でやってるし問題ない。ただ道場と違って階段とかあるしそこは気をつけよう。突進だけではダメだ）
　シダは獣のように自然に、追うかようは慎重に階段を下っていく。
　その後ろは抜きつ抜かれつ、団子状態で集団が追う形だ。
　

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