【星幽塔】第四階層　星ノ守人のお見合い譚？｜リアクション

【星幽塔】第四階層　星ノ守人のお見合い譚？

前編：シドニウムの本音

　第四階層の竜、カドュケウスの依頼を受けた冒険者（＋噂を聞きつけた冒険者）たち４人は、ひとまずアステリズムが一人、シドニウム・カトルの自宅兼診療所へとやってきた。
　家の主であるシドニウムはテーブルに伏せて眠ってしまっている。ちらりと見えた寝顔は、少し悲しそうだった。
「うわあ、イケメン☆　これは恋の鞘当てが始まるのも無理ないね」
　そう言ったのは響タルト。彼女は何か納得したような顔でうんうん、と頷いている。その傍らで水上桜が「夢の中なのに妙にリアルね」と呟きながらシドニウムを見つめていた。
（理由を確かめないことには、ね。しかし、お見合いに乗り気でない理由って何かしら？）
　ふと脳裏に浮かんだのは『既に好きな人がいる』『嘗て好きな人がいて、その人との別れを未だ引きずっている』『そもそも色恋沙汰に興味がない』そして……？
（実は『アーッ！』な人だった……パターン？）
　と真顔で首をかしげる桜。何を考えたのだろう、と彼女を見ていたタルトも首をかしげる。
「まずはおこさないと」
　稲積柚春はハーブの棚から複数ハーブを取り出し吟味する。そして入れられるのはタイムのハーブティー。
（ハーブはお薬にもなるから、と思っていたけれどちゃんとそろっててよかった）
　慣れた手つきで入れられたハーブディーの香りに心が安らいでいるとややあってシドニウムがわずかに呻きながら身を起こした。
「……ん？　稲積殿か……。それに……」
　眠っている間に訪れた４人の乙女に、シドニウムは「失礼」と眼鏡をかけなおし一礼する。
「今日は、どうしたんだ？　依頼なのか？」
「ええ。私たちは、カドュケウスさんから依頼を受けてきたの」
　そういったのは、嘉渡洲稀跡。彼女は真面目な顔でお見合いを受けない理由を聞きたい、と切り出した。それにシドニウムは表情を険しくする。
「父上からの依頼と聞いていたから嫌な予感がしていた。そういうことか……」
「ねむって自分だけで納得しないで。断るならあいての言葉を聞いてからにしてほしいかな」
　ハーブティーを進めつつ柚春が言えば、稀跡が静かに言葉を続ける。
「勝手な話だけど、理由だけでもきけないと依頼を受けた者は『お見合いを受けさせる方向でしか動けなくなる』の。でも受けないという意思は尊重したいわ。安全とは限らないし……」
　稀跡の言葉に柚春もこくり、と頷く。シドニウムは苦々しい顔になりつつも「それもそうだな」とどこか寂し気に肩を竦める。だが、そこでひょっこりとタルトが首を突っ込んだ。
「お見合いしたくないって聞いてたけど、わかるよ。親の言いなりは嫌だよね」
　タルトがうんうん、と頷きながらシドニウムのそばにより、にこっ、と笑う。
「もしかして、ほかに気になる人いたりしません？」
「過去の恋を引きずっているとか、恋愛沙汰自体興味がないパターンもあるわよね」
　桜が相槌を打っているとタルトは純粋な目で
「幼馴染のやんちゃ男子とか、ライバルの美青年とか！　アステリズムのメンバーにいい人いないの？　自分の心を見つめなおしたほうがいいよっ」
　と言い出した。桜は「あー……」と何とも言えないという目になる。シドニウムはタルトの言葉に大いに苦笑した。
「うーん、我輩が見合いを断る理由は自分自身の事を見つめなおした結果でもあるのだ」
「おお！」
　何か期待するような眼を向けるタルト。だが、桜は……？

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