――星幽塔・第四階層
「はぁ……」
診療所件自宅のテーブルにつっぷしているのは、持ち主である
シドニウム・カトル。彼は深いため息をついて小さく呟く。
「だから、我輩はお見合いなどしないと言った筈なのに」
シドニウムはどこか寂し気な眼差しを壁にはった絵を睨みつけながら言葉を続ける。その絵は薄桃色の髪を綺麗に結った妙齢の女性の絵である。
「母さんだって、そうだったし。何より……我輩が結婚などしてはいけないのだ」
シドニウムはそれだけ言うと瞳を閉ざし、あっという間に眠りに落ちた。
一方その頃。北の祠の前では竜のカドュケウスが冒険者たちに愚痴をこぼしていた。
「せっかくお見合い話を持ってきたというのに、どうして断ろうとするのだ……」
「お見合い、ね……」
カドュケウスの言葉に、
嘉渡洲 稀跡は目をぱちくり。急に言われても困るものである。
「そもそもカトルさんはどうしてお見合いを?」
「実は別の階層に暮らす医師の娘さんがシドニウムを見染めたそうだ。それでお見合いの話をもってきたのだが……なぜかシドニウムは乗り気ではないのだ」
カドュケウスはちょっと悲しそうにため息をつく。
ちなみに、今まで2度お見合いの話が持ち上がったが、シドニウムが断ってしまったらしい。その話を聞いて稀跡はふと、考えた。
「カトルさんには、理由を聞いたの?」
「あやつは、私に答えてくれないのだ。だから、困っておる」
カドュケウスは三度ため息をつき、その大きな体をちょっとだけ小さくした。そんな様子に稀跡も少し心配になってしまう。
「それで、私は何をすればいいのかしら?」
「希望としては、シドニウムにお見合いをさせてほしい。せめて見合いをしない理由を聞き出してほしいのだ。既にお見合いの相手がこちらに来ているから、本人に事情を話さなくてはならない」
カドュケウスは、しっぽで器用にペンを持つとすらすらと依頼書を認め、冒険者たちに見せるのだった。
一方、シドニウムに見合い話が持ちかけられた……と汽水の湖の畔で聞いた者が一人。
(シドニウム先生がお見合い? ちょっと気になるわ)
ほんのりとシドニウムが気になる人魚の乙女、リラはそわそわとしてしまう。金の髪を揺らした彼女は不安げに診療所の方を見た。
(もし、シドニウム先生がその人と結婚したら……)
脳裏によぎる光景に、リラはちょっと涙ぐむ。彼女は首をふるふると振るとぐっ、とこぶしを握り締めた。
「ううん、弱気はだめよ、リラ! シドニウム先生にアタックすればいいのよ!」
彼女はどこからともなく青白く輝く液体が入った瓶を取り出すと、一気に飲み干した。すると……綺麗な尾びれがすらりとした二本の脚へと変化する。彼女はどこからともなく取り出した巻きスカートと下着を身に着けると、よろよろと町へと向かっていった。
「大丈夫ですか?」
そんな彼女に声をかける者がいた。藍色の髪と金色の目が特徴的で、ほっそりした女性だ。彼女はリラの様子を見ると体調をくずしているのだろう、と考え駆け寄った。
「あ、あのっ」
「肩を貸します。ここから少しありますがシドニウムさんの診療所に」
リラは断ろうとしたが、女性はリラに肩を貸し、ゆっくりと進み始める。あたふたするリラに、彼女は言った。
「私は、チグサ・ネージュ。第六階層から来た薬剤師です」
その時、リラはまだ知らなかった。彼女こそがシドニウムのお見合い相手であると……。そして、チグサはリラから香った匂いに対し表情を引き締める。
(嫌な予感がする。彼女は、危険な何かを口にしているような……)
チグサの目にとまったのは、巻きスカートに挟まれた小瓶だった。
――こうして、第四階層を舞台に喜劇の幕が上がる。
菊華です。
まず、ガイドに登場してくださった嘉渡洲 稀跡さん、まことにありがとうございます。
アクションに関してはガイドに関係なく自由に書いてくださいっ!
概要
今回は、第四階層のアステリズム・シドニウムに舞い込んだお見合い話!
しかしシドニウムは乗り気ではない様子。
そして、シドニウムに気がある人魚のリラも何やら行動を起こすようで……?
アクション
冒険者のみなさんは
・カドュケウスから依頼を受けた
・町で噂を聞いた
・魚人や人魚からリラの話を聞いた
・リラとチグサに会った
などいろんな理由をつけて自由にかかわってくださいっ!
>カドュケウスの依頼について
シドニウムの養父でもある竜、カドュケウスはシドニウムにお見合いをしてほしい、と考えています。
「孫の顔が見たいというのもあるけれど、家族を持ったほうが寂しくないのではないかとおもうのだ」
との事。
しかしシドニウムはお見合いに乗り気ではありません。
その理由をカドュケウスには話したくないみたいです。彼には彼なりに理由がある模様。
冒険者に対してならば話してくれるかもしれません。
カドュケウスの依頼は【シドニウムにお見合いを受けさせる】ことですが、
最低限【お見合いをしない理由を知る】ことができれば成功報酬を払ってくれるそうです。
>お見合い相手について
第六階層に暮らす医者の娘、チグサ・ネージュがお見合い相手です。
彼女は父親と共に薬草を求めて第四階層に向かった際、シドニウムに一目ぼれしたそうです。
リアクションにももちろん登場します。
チグサ・ネージュ(28歳/女性)
藍色の髪に白いメッシュが入った女性で額に赤い石が生えている。
金色の瞳が特徴。凛とした雰囲気を持つ。
チグサは冒険者に会った場合、シドニウムについて色々聞いてくるかもしれません。
>人魚について
シドニウムのお見合いのうわさを聞いたリラ。
彼女はこれがきっかけでシドニウムへのアタックを開始することに……。
彼女は薬で人間に変身し、陸に上がってきましたが歩くことはあまり上手ではないようです。
しかしチグサ曰く嫌な予感がする、とのこと。
リラ(?歳/女性)
汽水の湖に暮らす人魚の一人で、美しい金色の髪と綺麗な歌声の持ち主。
ふんわりとした雰囲気を持つ。
謎の薬で人間に変身している。
リラは冒険者に会った場合、シドニウムへのアタックについてアドバイスを求めるかもしれません。
→リラの登場したシナリオはこちら
※読まなくとも問題なくご参加いただけます
その他の登場NPC
シドニウム・カトル
第四階層を担当するかに座のアステリズム。
なぜか養父(竜)にお見合いに乗り気ではないし、理由を語らない。
カドュケウス
白い竜。シドニウムの養父でもある。彼としてはシドニウムに家族を持ってほしい。
星の力
星幽塔にいると、星の力 と呼ばれる光が宿ります。
★ 基本的な説明は、こちらの 星の力とは をご確認ください。
星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようですが、
このシナリオの中では変化しませんので、このシナリオではひとつだけ選んでください。
ひとともれいびにはひとつだけですが、
ほしびとには、第二の星の力(虹)もあります。
★ 虹についての説明は、こちらの 第二の星の力 をご確認ください。
アクションでは、どの星の光をまとい、その光がどのような形になったかを
キャラクターの行動欄の冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のように書いてください。
衣装などにこだわりがあれば、それもあわせてご記入ください。
衣装とアイテムの持ち込みについて
塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
※【星幽塔】シナリオのアクション投稿時、作物・装備品アイテムを所持し、
【アイテム名】、【URL】を記載することで、
シナリオの中で作物(及びその加工品、料理など)・装備品を使用することができます。
※URLをお忘れなく!!!
※オーダーメイド装備品についてNew!
鍛冶工房のトピックを経る(またはシナリオなどで得る)場合のみ
アクション冒頭で指定した星の力とは別に、装備品固有の《特殊効果》が認められます。
アイテム説明欄に、トピックでの完成時の書き込みURL・シナリオ入手時のURLを記載してください。
例:http://rakkami.com/topic/read/2577/2116