きづいたら、あかちゃん｜リアクション

きづいたら、あかちゃん

　まほろが声をかけるが、泣き出した赤ちゃんは止まらない。紫もどうしたものか、とののこの涙をぬぐってやりつつ考える。
　そろそろミルクかな～、と様子を見に来たスグリはこの様子に思いっきり口をあんぐりとあけたまま固まってしまった。
「これ、どーなってるの？！」
（いーつーきー……お前なぁ……）
　何と説明したらいいのか解らず、亮はちらり、と樹を恨めしそうに見ながらも泣き出した赤ちゃん達の世話に奮闘する。スグリはこの状況を打破するには、と辺りを見渡す。保育士さんの助力を求めるためだ。
「オレ、ちょっと保育士さん捕まえて……」
「んっ！」（おかわり！）
　スグリが教室を出ようとしたとき、エプロンを何者かに掴まれた。よくみると、口元にご飯粒をつけた男の子がじーっ、とスグリを見つめていた。空腹で仕方なかったため、もくもくとご飯を食べていた勘三郎である。スプーンの握り方が拙（つたな）かったが、豪快な食べっぷりを見せていた彼は、その量では足りなかったらしい。
　そんな彼の様子を見ていたのか、はたまたあやしてもらって落ち着いたのか。ののこや奈津樹も落ち着きを取り戻す。しかし……その時、樹は……打ちひしがれていた。
（……文字、変にしか書けない？！）
　そう、彼女はわざと赤ちゃん達を泣かせている最中にろっこん『箱庭』を発動して紙とペンを呼び寄せ、『苦しゅうない、近こうよれ』と書こうとしたのである。が、しかし近くにあったのは油性ペン（しかも太い奴）のみ！　赤ちゃんの手にそのペンは太くて握れない。両手で持ち、どうにか文字を書こうとしたものの、みみずの這ったような文字になってしまった。
（とりあえず、読める、かな……）
　亮は樹にそれを見せられ……ぽふっ、と頭を撫でながら耳元で
「元に戻ったら覚えておけよ」
　とお説教を匂わせるコメントをするのであった。
　この後はスグリが作ってくれたミルクをのんで全員お腹一杯になり、お昼寝タイムになった。漸く平和が訪れた気がした一同は、心からほっ、としたのだった。

　こちらは１歳児クラス。
「みんな上手に食べるなぁ。あー、こら、お友達の分まで食べちゃだめやで？」
　奏は慣れた手つきで複数のおちびさんたちの面倒を見ていた。流石に１歳も過ぎれば食事もだいぶ大人と変わらない物に近くなってくる。
「落ち着いて食べるんですよ～」
　と椿美咲紀もまた奏にアドバイスを貰いながら奮闘する。もちろん、古苗木美姫も多くの子供達に頼られ、頑張っていた。
「おいしい」
「フォーク、上手にもって食べられるね。すごいねぇ」
　そう言って、１人の男の子に微笑んで誉める美姫。だが、彼女はその男の子が１歳児になってしまった澪乃湊弥とは気づいていない。
「ふふ～♪」（みきちゃんにほめられた～♪）
　と、心も子供に戻っている湊弥はどこか誇らしげな顔である。美姫に「はい、あーん」と食べさせてもらえば、なんだかほっぺが食べ物と嬉しさで膨らんだ気がした。
「うんしょ、うんしょ……」
　咲耶もまた、がんばってご飯を食べていた。使い慣れているスプーンやフォークも１歳児に戻ってしまうと、上手く持てない。だが、姉の手を煩わせるわけにはいかないのだ。
（がんばらなくちゃ！）
　と、奮闘する咲耶。と、そこへテオ救出にあたっていた修がエプロンを揺らして戻ってきた。
「ん？　こういうときはお皿をこうするといいよ」
「！」
　修は咲耶の後にまわり、介助しながら食べ方を教えていく。その様子を奏はどこか暖かな笑顔で見守っていたのだが……ここで『ちっちセンサー』が反応する！
「うぅ……」
「？　どうしたですか？」
　美咲紀が声をかけるも、その子はもじもじして恥ずかしそうにしている。と、奏がアドバイス。
「美咲紀ちゃん、この子トイレかもしれん！　連れてってあげて！」
「わかりました！」
　美咲紀はその子を連れてトイレへ。奏は少しでも手伝いになれたかな、と２人の背中を見送るのだった。だが、ここでまたもセンサーに引っかかる。ちらりとみればちょっともじもじし始めた咲耶の姿が。
「嬉野、もしかしてこの子もトイレかな？」
「そう思うわ……」
　修の問いかけに、奏はこくり、と頷く。と、「ぼくもー」と言うように手を上げる湊弥。
「それじゃ、いこうか。こっちは俺に任せてくれ」
「お願いします」
　修はそういうと咲耶と湊弥を連れて行く。他の子のお世話に回っていた美姫がそう言えば、修は咲耶と湊弥に「それじゃあ行こう」と手を引いて教室を後にした。

　こうして、ほのぼのと過ぎていく昼時間。
　ところで、神魂効果はいつ切れるのだろうか……？
　

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きづいたら、あかちゃん

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