久保田先生の女子力アップ大作戦！　着物編！｜リアクション

久保田先生の女子力アップ大作戦！　着物編！

　和やかな気持ちで見守っていた紫だったが、着信音がしたため自分のカバンを取りに行く。
「先生すみません、電話で外に行ってきます」
「オッケー！　何かあったら呼ぶね」
「お願いします。……はい、仙藤です」
　紫は通話をするため外に向かった。あまり長い会話にはならなそうだが、せっかくなので久保田先生は他の人と話をしたいと思った。近くに修と美咲紀がいたので声をかける。修は美咲紀の着付けを手伝っていたのか、帯や小物を数点脇に置いていた。
「やっほー。ふたりとも着物似合ってるね！」
「あっ。みわちゃんセンセ！　センセも似合ってますよー。文学的で知的な佇まいになってますもん」
「えへへ。もっと褒めて」
　久保田先生の調子のいいコメントに美咲紀が明るい笑顔を見せる。
「先生とこういった場で会う機会が増えましたね。女子力アップとやらはまだ続けているんですか？」
　修が久保田先生に座布団を用意しながら尋ねると、先生は腕を組み眉間にしわを寄せながらうーんとうなった。
「正直、女子力は前ほど気にしてないかなぁ。
　なんかねー、アップ『しなきゃ』とは思わなくなってきたの。目の前のことを頑張ってたら、女の人らしい趣味も楽しいんだなぁって、気持ちが前向きになってきたんだ」
「それは何よりですね。楽しいのが一番です！」
「そうだね、楽しくなくちゃね！　着物を着たことはほとんどないけど、文学作品で知識だけはあったりするんだ。私、着物と相性良いのかも！」
「初めは姿勢や歩き方に違和感があるかもしれませんが、こういったものは慣れですから。鎌倉や京都を和服で散策するのも楽しいですよ」
「和服でおでかけ、憧れる！」
　抹茶ソフトを食べている姿を想像しながら、久保田先生がにっこりと笑顔を作る。
「先生が着付けを覚えたら、いつか彼氏さんと和装デートができるかもしれませんねー。カッコよく素敵に彼氏をプロデュースするのも女子力のうちですよ！」
「うーん。私ちょっと前までおしゃれ興味なかったからなぁ。ちゃんと洗濯してある服を着ていたらそれでいいんだけど、男性の着付けがどういうものかは興味があるな！　袴って男女で着方が違うんでしょ？」
　久保田先生の問いに、修がそうですねと頷く。
「帯を締める位置が男は腹の下になりますね。せっかくですから実演しましょうか？」
「おー。見たい見たい！」
　修は塩田さんから袴を借りて実際に着つけてみせ、小物類を体に巻くなど小技を紹介してみせた。慣れた手つきに久保田先生が感心してみせる。
「少し前の時代ではこの服装が普通でしたから。練習すればだれでもできます」
「まずは女性の着付けからチャレンジですねー。シュー君で練習すればすぐに覚えてしまいますよ！
　はいっ、この着物で練習しましょ」
　美咲紀が女性用の着物をもって修に近づき、修から頭に軽く手刀をもらった。

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