【星幽塔】第六階層　浮島でスタンプラリー｜リアクション

【星幽塔】第六階層　浮島でスタンプラリー

＞お化け屋敷の島
　ユェライの背中の上で、響タルトはご機嫌だった。
（どの島も楽しかったなー！　次は何だろ？　それに記念品も気になるなぁ）
　彼女はユェライに「記念品が何か分かる？」と問うが、竜は「おたのしみだよ」と笑って答えなかった。
　タルトが竜の進む先を見ていると、木々に覆われた島が見えてきた。

「とーちゃくーっ！　ここでは何をするのかなー？」
　タルトがわくわくしていると……、ベンチで想花がぐったりしている。どうやら、かなりしんどかったらしい。
「……ねぇ、大丈夫？」
「うん。……少し休んだらちょっと回復したかも」
　想花がどうにか答えていると、淡い黒の人影が現れた。その影は想花に水を渡し、もう少し休むよう言っているように見える。
（……ん？）
　タルトは不思議そうにしていると、妖精が飛んできてタルトの影に触る。とたんにそこから浮かび上がり、タルトの影は嬉しそうに本体の手を取った。
「おぉ！　これは面白いね！！」
　妖精は、この島を訪れた人の影に次々と触れているのを見、タルトは興味深そうにそれを見ていた。

「これはまた本格的だね！」
　タルトが屋敷を見、傍らの影もこくこくと頷く。
　少し過ごして分かった事だが、影は話す事は出来ないが言葉は分かるらしい。タルトが声をかけると身振り手振りで答えてくれる。
　彼女は己の影と屋敷の前に行くと、古めかしいワンピースを着た女性が説明してくれた。
「なるほど、自分の影とお化け屋敷をクリアすればいいんだね！　がんばろうね！」
　タルトに、影も頷く。
　わくわくしながら中に入ると、早速幽霊がお出迎え。古いオブジェが動いたり、いつの間にか背後にゾンビがいたり、とけっこうおもしろい。
　元々タルトはオカルト好きであり、その上似た性格の影も一緒である。まさに百人力と言えるだろう。だが、彼女は他の冒険者達の様子も熱心に観察していた。というのも……？
（実は『影と本体の関係性』にも惹かれるんだよね～！　最初は反発しあうけど次第に引かれていくとか……）
　BLが見れないかな？　とか考えながら観察していくうちに、興味深い関係を見つけたのだろう、目をキラキラさせて観察していた。視線の先には、小柄な少年とその影がおり、少年が影に翻弄されながらも助け合いお化け屋敷を進んでいるのだ。
（そうそう、これこれ！　あー、薄い本が厚くなっちゃうよぉ～！）
　興奮状態のタルトの横で、同じようにテンションが上がっているタルトの影。どうやら、似た者同士のようだ。
　二人は、しばしの間妄想フルスロットルで観察を続けていた。

「あーっ、楽しかった！　ねー？」
　タルトはいきいきした様子でお化け屋敷を出る。傍らの影もまた、ご機嫌な様子だ。二人の楽し気な姿に、スタンプ係を務めていた髭面の男――ヤグロ・サイファは「お気に召したようで何より」とにっこり笑った。
「これで全て揃ったね。あとは景品を貰うだけ！　何かなぁ？」
　タルトがうきうきそう言えば、影が少し寂し気な様子で彼女のポニテを軽く引っ張る。不思議そうにしていると、ヤグロが「君がこの島を離れると、その影は消えるのだ」と説明してくれた。
（そっか、寂しかったんだね）
　タルトが影の頭をそっと撫でると、影は嬉しそうに微笑む。名残惜しくなった彼女は
（もうちょっとだけ、遊んでから移動しようかな）
　と考えるのだった。

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