【星幽塔】第六階層　浮島でスタンプラリー｜リアクション

【星幽塔】第六階層　浮島でスタンプラリー

＞小さな竜のいる島
　一方その頃。水上桜は、川が流れる島へやってきた。
「ようこそ、お姉さん！」
「ここでは砂金を取るとスタンプが貰えるんだよ」
　サティアとチッタの二人がお揃いのオーバーオール姿で出迎える。二人の言葉に、桜はちらりと小川をみて少し考えた。
（砂金を取るだけなら楽なんだけど……、条件次第では難易度が上がるわね。地味に時間はかかるし、採れる量もシャレにならないくらい少ないのよ）
　桜は中学時代に家族旅行で砂金取り体験をしたことがあるため、色々と考えていた。
「なにか条件とかあるかしら？　例えば『砂金が取れればOK』とか、『一定量の砂金を取る必要がある』とか、制限時間がある、とか」
「何もないよ？　砂金さえ取れればスタンプをあげるよ！」
　サティアはそう言って見本を見せてくれた。
（それなら、簡単よね？）
　桜は内心で安堵の息を吐くのだった。

「きゃっ……」
　さっそく靴を脱いで川に入ると、案外水が冷たい事に思わず小さな悲鳴が上がる。だが、慣れてくればこれも心地よい。
　中学時代は、家族と共にわいわいと砂金取りを楽しんだが、今回は一人。黙々と行う。周りに冒険者もいるが、皆真剣である。
　砂を掬い、ユラユラと水の中で揺らしていくうちに金色の鱗のような物が出てくる。一目で砂金ではないとわかる代物だ。
「これ、何かしら？」
「それはこの子たちの鱗だよ」
　不思議そうに見ている桜に、チッタが小さな竜を見せて教えてくれた。子どもが抱っこできるほどの小さな、大人しい金色の竜だ。
「可愛い……」
　チッタにだっこされた竜はくうくうと眠っている。その姿に桜は思わず和んでしまう。
　二人曰く、この竜たちは島で暮らし、砂金の混じる砂を食べているため鱗が金色になるらしい。運がいいとすぐに砂金が見つかるとの事。
「……『運がいい』と……なのね」
　桜は小さく呟きながらパンニング皿を揺すっていると……、金色の粒が見えてきた。
（あっ……）
　桜が見えた金色の粒を見せると、サティアが「スタンプ押しますね！」と鞄からスタンプを取り出した。
　取れた砂金は記念に持ち帰るとの事で、桜は係の人に頼んで小瓶に移してもらった。
　それをカバンに仕舞い、桜はしばし竜と遊びながらサティアとチッタと共におしゃべりに興じる。
　２人曰く、この島には金鉱脈があるという。だが、この小さな竜たちの食糧であるため、砂金を時折とるだけに留めているとの事。桜が不思議そうに竜を見れば、「ぎゃう～？」と愛らしい声をあげるだけである。
「不思議な子達ね」
　そっと頭を撫でれば、竜は気持ちよさそうに目を細める。すべすべとした滑らかな手触りをしばし楽しんでいると、別の竜もまた桜に懐いたのか身体をこすりつけてくる。
「ふふっ、擽ったいわね」
　思わず笑ってしまう桜。
　よく見れば、衣服にも淡い金色の鱗が何枚もついており、チッタが「綺麗」と声を上げる。すると、二人の手伝いをしていたスタッフが言う。
「この子達の鱗はあまりとれないのです。もしかしたら脱皮が近いのかもしれません」
「へぇ……」
　桜は興味深そうに竜の鱗を手にした。
　この鱗は、縁起物らしい。桜はお守りをそれで作ることにした。

　竜と遊び、あと少しだけ砂金をとった桜。
　彼女は次の島へ行くべく準備を整える。
（今度は、純粋に竜と遊ぶために来てもいいかもしれない）
　彼女は二人と竜たちに手を振ると、空飛ぶ靴で次の島へと向かうのだった。

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