【星幽塔】第六階層　浮島でスタンプラリー｜リアクション

【星幽塔】第六階層　浮島でスタンプラリー

＞つむじ風の島では……？
「気持ちいい！」
　風が頬を撫でる感触に、風が髪を触る感触に月原想花は思わず声を上げる。つむじ風に乗ってくるくる回って遊んでいる彼女は、ストレス解消に壊せるものを探していた。

　少し前の事。
　どうにかこうにかこの島へやってきた想花は、眼前の光景に対し少しだけ目を見開く。風が渦を巻き、それに人が乗って遊んでいたり、その風にボールを乗せて遊んだりしている。
「なるほど、今度はつむじ風で遊んだりできるわけか……」
　しばらくその風を観察していた想花は、「ちょっと乗ってみたいな」と思う。
　最初にやってみたのは、枯れ枝などをつむじ風に当てて壊す事だった。それなりに強い風は、カラカラに乾いた枯れ枝をすぐに折ってしまう。また、壊してよい物として用意された古い小屋へあてると、バリバリと音を立てて壁や屋根を壊していく。
（これ、なかなかストレス発散になるかも！）
　すっきりした所で、次はつむじ風に乗ってみる事に。この地域に馴染みのある者はひょいと簡単につむじ風に乗っているが、他の階層の住人や冒険者達の中にはおっかなびっくりで乗る者も……。
「ちょっと緊張するなぁ」
　想花もチャレンジしようとしたが、最初のうちはするりと逃げられてしまい苦戦する。それを見かねたからか、ルーク・ポーラスターが声をかけてくれた。
　彼は想花に手本を見せながら言う。
「身体の力を抜いて。大丈夫、バランスさえ取れば簡単に落ちないからな！」
「うんっ」
　女性の冒険者に支えてもらいながら乗ると、なかなか楽しい。想花は暫くの間つむじ風のロデオを楽しんだ。

　暫くして、想花はつむじ風を渡りながら辺りを見渡した。
　（ひとしきり遊んだし、次はスタンプを探さなきゃ）
　スタンプラリーである事は忘れていない。彼女は目を凝らし、辺りを見渡した。すると……、スタンプを乗せたつむじ風が、ボロボロになった小屋の傍を通っていた。
（あった！）
　駆け出した想花だったが、突然スタンプを乗せたつむじ風が勢いを強める。理由はわからないが、勢いをつけて逃げていく。
　最初は走って追いかけていたが、徐々に引き離されていく。それどころか、横からきたつむじ風に邪魔をされ、スタンプは遠くに行ってしまった。
　再び追いかけるも、もうすぐ手に取れるという所で別のつむじ風に転ばされたり、つむじ風同士がぶつかってスピードを上げて逃げて行ったり……。
「そうだ、つむじ風にはつむじ風だよ！」
　想花は早そうなつむじ風にどうにか乗ると、スタンプを乗せたつむじ風を追いかける。人間の足で追うよりはちょっと早いのだろう。距離が縮まっていく。
　ぶつかりそうになってもするりと回避し、時には別のつむじ風に乗り移って追いかけていき……、ようやくスタンプをゲットすることが出来た。
（やったっ！）
　急いで自分のシートにスタンプを押し、再びつむじ風の上に乗せる。
　まるで生き物のように遠ざかる風を見送り、想花は小さく微笑むが……疲労困憊である。
「次の島で最後だったかな？　……次は、楽だといいな……。疲れた」
　島の端っこに、即席の停留所が作られていた。暫く待つと、淡い光を待った竜、ユェライが白銀の鱗を煌めかせながら降りてきたのだった。

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