【星幽塔】第六階層　浮島でスタンプラリー｜リアクション

【星幽塔】第六階層　浮島でスタンプラリー

＞温泉の島にて
　ふわふわと湯気漂う温泉の島。
　ゆるやかな時間が流れる……かと思いきや、転がったりはねたりする卵を追いかける冒険者達の姿が。
「……ったく、意外とすばしっこい！！」
　ティオレ・ユリウェイスもまた、素早く転がる卵に翻弄されていた。

（そう言えば、最近少し退屈かも……）
　という具合にちょうど暇を持て余していたティオレは、第六階層でのイベントを聞き参加してみる事に。
　そして温泉の島を訪れ、スタンプを貰う方法を聞く。
　最初のうちは「温泉卵だから、温泉につければいいのね」と、軽い気持ちで卵を手にした。そこまではよい。
「できたての温泉卵、きっと美味しいわよね」
　と卵を温泉に沈められた籠へ入れて少しした後。卵がいつの間にか籠から零れ、温泉から飛び出たのである。
「えっ？！」
　あっけにとられたティオレだが、すぐに追いかける。卵はコロコロ転がって、ティオレの手が迫るたびに跳ね飛ぶ。
「こいつ……！」
　掴もうとして飛び掛かった彼女だが、音を立てて温泉の中へ落ちてしまう。卵はその間に跳ね飛びながら温泉の周りをまわっている。
　ティオレはゆっくりと立ち上がると、濡れた髪を払った。
　普段から凛とした彼女ではあるが、その表情はとても厳しい。全身から殺気が溢れ、肉食獣のような獰猛さが眼差しに滲む。

　――ナメられたら殺す！

　ティオレは、卵を追いかける。
　とっつ構えて温泉卵にしなければ気が済まない。しなやかな筋肉を総動員し、跳ねて転がる卵を追いかける。
　彼女自身は真剣なのだが、周囲から見れば滑稽な光景で……。しかし、温泉卵を作ろうとしている冒険者はだれもそんな状況だったからか、ほぼ誰も見ていない。
　そう、スタンプ担当としてのんびりしているフローレンス・アイメルトとちょうどこの島にやってきたラッセル以外は……！
（案外難しそうですね……）
　フローレンスは予想外に跳ねる卵を見ながら、次に開催するときは別の条件にするべきだろうか、と冷静に考えた。

　それからしばらくして……。
「これで……！」
　ティオレが卵にダイブする。そして、その手が卵をキャッチする頃には、汗だくになっていた。ふぅ、と強くため息をついたティオレは汗を拭いながら
（温泉って入れるのかしら）
　と呼吸を整えながら考えたのだった。

　観念したのか、卵は温泉内の籠に再び入れられた後は静かに茹でられていた。
　頃合いを見計らって引き上げ、器に割ればとろりとした美味しそうな温泉卵が出てくる。さっそく食べてみると、本当に美味しかった。
「これはこれで……、美味しいわね」
「本当におつかれさまです」
　フローレンスがそういってティオレのカードにスタンプを押す。ティオレは苦笑しながら、温泉卵を食べるのだった。
　一方、見ていたラッセルは、先ほどティオレから発せられた殺気と、跳ねて逃げ回る卵に思わず小さく「……おぅ」と呻いた。
「なかなか難しそうだな」
　ラッセルが声をかけると、ティオレは「えぇ……」と頷く。
「やるなら、温泉に落ちたりちょっとした怪我も覚悟することね」
　どこか遠い目をして語るティオレに、ラッセルは「ああ……」と小さく頷いた。

　なお、ラッセルもまた卵を追いかけて温泉に落ちた……らしい。

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