ウサギ戦隊バニレンジャー！｜リアクション

ウサギ戦隊バニレンジャー！

■海の間
　いくつかの部屋を通り抜け。いくらかの雑魚を蹴散らしながら。
　バニレンジャー達が重厚な扉を開くと、心地良い潮の香りが彼女達の鼻腔をくすぐった。
「ここは……？」
　月があたりを見渡す。
　アジトの中のはずなのに、突如現れたビーチ。
　異空間に繋がったとしか思いようがない、深い海と白い砂浜。
　やや離れた海岸先の高台にはカラフルなビーチパラソルも立っている。
「ビーチバレーとかしたら楽しそう！」
「そうですね、海の家などありませんでしょうか。お腹が空いてきましたね」
　碧南が瞳を輝かせれば、紫苑が額に手を充て遠くを見やる。
「あ、砂浜から何か近づいてきます！」
　リリエルが海をどんぶらこ、と移動してくる物体に気がついた。

　ざっぱーーん、とビーチにピンクの亀の姿。
　その背中には小柄可愛い銀髪少女――旅鴉月詠がちょこんと座っていた。
「やっぱり君か、月詠。捕えた人たちを開放するんだ！」
　因縁の仲である月と月詠。二人の視線が混ざり合う。
「よくきたな、月。いや、バニレンジャーども！おまえ達の探す人質はあそこだ！」
　デーーン！と、月詠が指さした先は……高台の上。ビーチパラソルが立っている。

「さて、ここで私がどんな仕打ちを人質に与えたか見ていただこう」
　月詠がパチン！と指を鳴らすと、雑魚カメと雑魚タコがよいしょよいしょとモニターを準備した。
　そこに『とある少女の一日☆』とマジックで書かれたディスクを突っ込んだ。

　モニターに流れる映像には、一人の少女が眠らされてアジトに運ばれるシーン。
　この部屋である、海の間に運ばれるシーン。
　そしてタコやカメたちが竜宮城の如く、舞い踊り、少女をもてなすシーン。
「別に、危害を加えられてない……です？」
　リリエルがキョトンと首を傾げた。
　少女がビーチチェアに腰掛けると、運ばれてくるトロピカルなドリンクやかき氷。
「あら、美味しそうですねぇ」
　紫苑がうっとりとした表情を浮かべる。
「……なんなんだ、これは」
　月が脱力する。が、一人心中穏やかじゃないどころか、ワナワナと身震いするバニレンジャーがいた。
「って、この人質、あおいさんじゃないか！！！」
　映像に映る人質。茶色のツインテールの愛らしい少女は彰尋ととてもとても仲が良く、ぶっちゃければ気になるあの子☆である七夜あおいであった。
「つまり、あのビーチパラソルの下にあおいさんがいるのかっ！？」
　今すぐ駆けだそうとする彰尋だが。
「ちょっと待て」
　月が彰尋を止める。
「助けに行くなとは言わない。だが、いいのか？ ……その姿で」
　彼女を助けたい。颯爽とかっこよく助けたい。
　だが、今の彰尋の姿は……バニーガールである。そんな姿を見られていいのか俺！？
　頭を抱えて悩みだす彰尋。
「ちなみに、だ。本日の人質は一名様ではございません！」
　月詠がドヤ顔でモニターを早送りすると。
「……止めろ……っ。俺に触るなッ……」
　新たな画像が現れた。
「ゆ、悠月くん！？」
　それは手首を縄で縛られ、足枷をつけられた美しい少年――獅子目悠月の姿だった。
　身動きできない悠月に、タコ足が絡みつく姿はとても官能的で……
「え、えっちなことはいけないと思いますっ！」
　リリエルが顔を真っ赤にして叫ぶのだった。