SAME & TREASURE｜リアクション

SAME & TREASURE

■フェイズ３　エスケープ＆チェイス
　状況は最終段階へと移行した。
　お宝を粗方取り終え、地上へと戻るフェイズだ。
　豪ザメや亮ザメが暴れ回ったおかげでお宝回収が殆ど出来なかったかに見えても、樹が能力を使ってお宝を掃除機のように吸い集めていたのだ。
「けど、私の大活躍もそろそろおしまい。最後の裏技の出番かな……！」
　亮ザメがものすごいスピードで突っ込んでくる。
　樹はショットガンを乱射し必死の抵抗をする――ふりをして、あるものを眼前に瞬間移動させた。
　ボール状の物体。
　チカッと光る赤いライト。
　突き出た銃口がマシンガンの弾を大量にはき出す。
　それは、あやめが序盤に設置したセンサータレットである。
「なんでここに――しまった！」
　亮が至近距離から弾幕に晒される。
　だがここで引いたら男じゃあない。
　ダメージ覚悟で突っ込み、そのまま樹を食らいついて浚っていく。
　致命傷。しかしデスではない。
　もう一体いける！
　恐ろしい順で言えば莉鳥を……！
　と思ったところで、あやめが躍り出た。

　浅葱あやめ。その温厚な性格ゆえに暴力的なことを嫌い、このゲームの最中であっても『お互い痛くないのかな』と心配するほど優しい青年である。
　幸い自分がキルされた時も痛みを感じなかったので、相手もそうだと信じて戦っているが……。
「チームが、勝つには……僕が生き残る必要は、ないんだ」
　ハープーンを手に、亮ザメの前に躍り出る。
　射撃。
　それも牽制ではない。自分に注意を向け、後に引けなくさせるための射撃だ。
　傷ついた亮ザメとはいえ強靱な身体能力をもったサメだ。素早く間に割り込んだあやめの、ややブレた射撃は彼のわきをかすめていく。
　だがそれでいい。
「僕を……食べればいい」

　ばくん、という音をたててあやめが食べられる。
　莉鳥が背後を狙われたその途端の出来事だ。
　振り返れば亮ザメ。しかし口を閉じた直後のことだ。再びの攻撃はできない。
　距離といい体勢といい、絶好の攻撃チャンスだ。
　マシンガンを向け、同時に指先も向ける。
　全力射撃と電撃の合わせ技が亮のスーパーボディをめちゃくちゃにしていく。
　真珠色の豪ザメが横から突っ込んできたのはまさにそんなタイミングだった。
　絶体絶命。
　しかし。

「その手は読んでいた」
　酸素ボンベが間に割り込む。豪ザメの口にねじ込まれるようにして挟まった酸素ボンベ。莉鳥から拡散した電撃が触れ、爆発を起こす。
　修はあらかじめ分解して保持していた沈没船の船体やいくつかのパーツを盾にして莉鳥を庇い、その場から急速離脱した。
「へっ……」
　それまで真珠鮫のボディを活用していくつものキルをとってきた豪が、ここへきて修に向けて笑ったように見えた。
「忘れてたぜ、八神。お前が持ってるのは銃の腕だけじゃあなかったな」
　沈んでいく真珠色のボディ。きらめく身体が、差し込む陽光と混じって美しく輝いた。
　そして修は、莉鳥を抱えたまま海面へと上がっていく。

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