『あなたも猫カフェ』においでませ｜リアクション

『あなたも猫カフェ』においでませ

「まだ家に帰るのは早いなあ」
　佐藤瀬莉はそう言って、腕時計から顔を上げた。
　もう少し、シーサイドタウンで過ごすのがいいかもしれない。
　そんなとき目についたのが、『あなたも猫カフェ』の看板である。
「猫かぁ……」
（特別、猫が好きってわけでもないけど……）
　当然、家の近所にも猫はいるし、かわいいとは思うけれど、時計に集中しているときは、声がうるさいな、と思うこともある。
「でも、ここで時間潰せばちょうどいいかも」
　瀬莉は猫カフェの扉に手をかけた。
　――と、すぐに。
「にゃあああっ」
「キャッ」
　突然走り寄ってきた茶トラに驚いて、思わず一歩、後退る。
「にゃ、にゃっ」
　猫はそんな瀬莉の足に、問答無用に猫パンチを繰り出した。
「あらあら、だめよ茶トラちゃん」
　店員が、猫を抱きあげつつ、「いらっしゃいませ」と声をかける。
「お店にいらしたのは初めてかしら？　ではお嬢さん、この中から、好きな猫耳と尻尾を選んでくれる？」
（え、猫のコスプレ……？）
　瀬莉はきょとんとしたまま、入口にずらりと並ぶ猫耳を見やった。
　その奥の、猫がたくさんいるスペースを見れば、お客さんはみんな猫耳猫尻尾をつけている。
（そっか、猫になりきって遊ぶ店なんだね）
　納得し、選んだのはもふもふのミケ猫耳。
　その耳と、同じタイプの尻尾を身につけて、入口に設置してある鏡の前で、くるりと回る。
（うん、けっこう似合ってる）
　そこに続いたのが、高校生の二人組だ。

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