『あなたも猫カフェ』においでませ｜リアクション

『あなたも猫カフェ』においでませ

　自身が選んだ耳尻尾と同じ白猫が通りがかったので、アリサはそっと手を伸ばしてみた。
（たしかこの子はつんつんだって、紹介のポスター書いてあったけど……ええっ？）
　ぺろり、白猫ちゃんは、アリサの手を舐めて、するりと通り抜けていく。
（おもちゃ使ったら、こっち来てくれるかな）
　それならばと選んだおもちゃは、近くに転がっていた音の鳴るボール。
　それをころころ転がすと、ちょっと大人なムギワラ猫がやってきた。
「みあ」
　ムギワラは、夢中になってボールにじゃれつきながら、アリサの方へと寄ってくる。
　そのうちごろんと、アリサの膝の上に転がった。
「わ、この子ももふもふだっ」
　あったかくてかわいくて、まさに癒しの塊、それが猫。
　こんなかわいい子たちと遊ぶうち、アリサの疲労もストレスも、どこかへ飛んでいってしまった。

　疲れ知らずの美咲紀は、ちらちらと白猫を見ながらも、ほかのにゃんこと戯れ続けていた。
「ちょ、キジシロちゃん、頭に上るのはやめてください、そこからちゅるりらんには届きませんって」
　遊んだ子達に配ろうと思っていたちゅるりらんを狙い、顔を突きだすキジシロ猫。
　たまらずねこじゃらしを止めれば、他の子たちもちゅるりらんを見つけて突撃だ。
「いっぱい動いてお腹すいたんですね、どうぞいっぱい舐め舐めしてくださいね」
　人の言葉なんてわからないだろうに、猫たちがそろって「うにゃ」と鳴く。
「はううう、かわいいのです。って、キジシロちゃん落ちるっ、あ、白猫さんこっちに来そう！」
　上を見たり前を見たり、餌をあげたり、美咲紀は大忙しだ。
　それでもにゃんこに囲まれているのは、大きな幸せ。
「キジトラちゃん一家とも遊びたいなあ」
　四匹を相手にしつつ、遠くを見れば、キジトラ一家は、あちこちに点在している。
「あ、でも茶トラちゃんがこっち見てる！　はわあ、嬉しい……」

　そうやって、女性たちが次々猫の魅力にやられているスペースに、夏朝と修もやってきた。
　相変わらず、トワはキジトラパパに手を舐めてもらおうと、必死である。
　それを邪魔することなど、年上としてできるはずがない。
「キジトラちゃん一家も気になるけど、どの猫さんも、可愛くて癒される…！」
　夏朝は、自分に近つく猫みんなに手を伸ばした。
「来てくれた…ありがとう、猫さん」
　ごろりと転がる猫の体は優しく撫ぜて。
　じゃれてくる猫には、ボールを転がしたり、ネズミのおもちゃで遊んだり。
　そこに、かしゃりと小さな音が。
「あ、八神君、今、写真撮ったでしょ？　僕、変な顔してなかった？」
「大丈夫、ほら、かわいく撮れてる」
　修は夏朝に、スマホの画面を見せる。その手を、どこからかやってきた猫ちゃんがぺろりと舐めた。
「ああ、八神君いいなあ！」
　夏朝が言ったそばから、別の子が、ぺろり。
「わああ、舐めてくれた、嬉しい……これがいいこと、かな？」
　微笑む夏朝を、修はまた、写真におさめる。
　そのうち、猫も疲れたのだろうか。
　一匹が、修の膝で眠り始めた。
「あ、寝た……」
　修は、ロングカーデガンの前身ごろを、ふわふわの毛の上にかけてやろうとし……。
「ちょ、待てっ」
　どうやら背中側の裾が、別の子の玩具になったらしい。思い切り引っ張られた。
「あはは、八神君モテモテだね」
　そこに響く、トワの声
「やりました、デス！　どんな良い事が起こるか楽しみにするのデス！」
「ああ、ついにキジトラに舐めてもらえたのか、ライトフェロゥさん」
　遠くからは「良かったな、トワ！」と流の声も聞こえる。
　トワは舐められた手を振って、レディらしく、その場で深く礼をした。

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