NEKOJIMA Of TANKS　眠猫島夢大戦・陸戦編｜リアクション

NEKOJIMA Of TANKS　眠猫島夢大戦・陸戦編

■勝敗を握るもの
　いくつかのぶつかり合いの中で、紅組白組双方の戦力が徐々に削れていった。
　お互いが敵陣地の占領よりも敵戦車の撃破を優先したことが、おそらくはその原因だろう……と、狭い戦車内で神薙焔は思った。
　ゲーマーの蒼やサバゲー趣味の海斗とはまた別の、ＦＰＳゲームとサバゲーの両方をやりこむのが焔である。
　それゆえＦＰＳ特有の体力を使わない対人戦闘と、リアル空間で体力を消耗するサバイバルゲーム。その両方のカンを培っていた。
　今その二つが上手に合致したところである。
「と、ゆーわけでっ！」
　Ｔ字路を塞ぐように割り込んできた戦車に無理矢理体当たりを仕掛け、砲撃で後続の一機を撃破しながら別の道へ入り込む。
「この際だから前に出てガンガン行くわよ！　相手もそのつもりなら、わざわざ陣地の守りを固める必要ナシ！」
　目にかかった髪をかきあげ、ヘアバンドで押さえ込む。
「残ってる味方、バックアップよろしく！」

　一方、敵チームが全面攻勢に出たことに早くも気づいた者がいた。
　猫屋敷姫。楽観主義の慎重派。焔と同じく激戦区となるラインまで飛び出しつつ、昼飯角度（建物の角っこからちょいちょいと斜めに出たり入ったりする戦車ゲーの用語）で敵の砲撃をしのいでいた。
「攻めてくると分かっているなら受け方もあるのです。次の路地を右へ、バックで入って待ち伏せますよっ」
　姫は自機を近隣住宅街の中へ紛れ込ませ、わざと袋小路に逃げ込んだ。
　追撃するのは蒼＆紫機だ。
「どこいったのかしら」
「回り込みに注意して角から追げ――」
「撃てっ！」
　待ち伏せに気づいてバックしようとした瞬間を狙って砲撃。
　元々細い路地である。逃げようにもブロック塀に車体をぶつけて上手にさがれず、まともに砲撃をくらってしまった。
　白旗があがる蒼＆紫機。車体を押しのけて路地から脱出する姫。
　一旦広い通りへ出ると、美咲紀が合流した。
『相手はもうすぐ全滅。勝機なので――ぎゃん！？』
　美咲紀の通信が途中で途切れた。
　横から打ち込まれた砲撃によって激しく横転。
　美咲紀は車内でにゃんこにまみれながら目をぐるぐるにしていた。
『ううー……あとはまかせるのです』
「いわずもがなっ」
　姫は運転手のシートを蹴って加速を指示。素早くギアレバーを操作すると、にゃんこー戦車はたいへんな速力で通りをダッシュした。
　それを追うように姿を見せる焔機。
　同じく加速して速度で横に並ぶと、ハッチを開けて顔を出した。
　挑戦とみて同じく頭を出す姫。
「やあやあ我こそは、ってのは野暮だけど」
　ビッと指を突きつける焔。
「動いてるのはあたしととあんたの二人だけ。一騎打ちといこうじゃないのよ」
「ふふん」
　髪をかきあげ、どこか蠱惑的に笑う姫。
「望むところです」
　頭を引っ込める。
　道路は大きく開けた駐車場へ到達。
　双方砲身回頭からの砲撃。
　交差した砲弾が抜け、遠くの乗用車が爆発を起こした。
　駐車された自動車をジグザグにぬけながら焔は右へ、姫は左へ。一度距離をとった二人はモールの路地へと突っ込んでいった。
　二階の渡り廊下をくぐり抜け、視界が晴れた瞬間に違いの車体が現われる。読んでいたかのように砲撃する姫。その砲撃を読んでいたかのように速度をあげてかわす焔。
　即座にカーブをかけ、履帯を犠牲にしながら姫の脇へと回り込む。
「しまっ――」
　回頭が間に合わない。
　至近距離からの砲撃。大きく傾く姫機。上がる白旗。
　そして――。
『チェックメイトだ』
　モールの窓越しに放たれた砲弾が、焔機の側面に直撃した。
　そう、これまでなにげに描写から外れていた修機が、ひっそりと身を隠していたのだ。姫はそれを察して一騎打ちに持ち込んだのである。
「ふう……」
　ハッチをあけ、頭を出す修。
「なんとか勝てたか。ギリギリだった」

　鳴り響くファンファーレ。
　にゃんこ楽団の表彰式が執り行なわれ、白組のチームメイトたちは壇上に上げられていた。
　そして、空に大きく浮かぶ煙文字。
　――Thank you for playing!! Thank you! Thank you!
　そして、夢は覚めていく。

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あとがき

担当マスター：青空綿飴
ファンレターはマスターページから！

おつかれさまでした！
普段のからだを使ったバトルとはちょっと違った乗り物バトル。お楽しみ頂けましたでしょうか。
はじめてっぽい戦車バトルでしたが、皆さんいろんなアプローチを考えていらっしゃるんですね。
それでは、また戦場でお会いしましょう！　ごきげんよう！

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