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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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過去と今、夢と現、そして影
ふと気がつくと、そこはフツウの寝子島とは似ても似つかぬ雰囲気の歪みの世界。
そのことを確かめた仙藤 紫は、細い息を一つ吐くと、慎重に辺りを見回した。
と、背後に気配を感じて、そっと振り返る。
そこに立っていたのは、１２歳ほどに見える少女だった。
いかにも気ままそうで、さばさばした気性を思わせる顔立ち。
くるりとその瞳が紫を見上げれば、ウェーブが掛かったショートヘアがふわりと揺れた。
「菜緒……ちゃん？」
紫の唇から、少女の名が零れ落ちる。
沢渡菜緒。小学校時代、紫と一番の仲良しだった女の子だ。
その菜緒が、何故だかあの頃の姿のままで紫の前に立っている。
しかし、不可思議に目を丸くする時間すら、歪みの世界は紫に与えてはくれない。
辺りの影達がゆらゆらと蠢き出したかと思うと、それらは見る間に、おぞましい化け物へと姿を変えた。
ぞわり、と肌が粟立つ。
紫が口元を引き結び、距離を取るように一歩だけ後ずさった、その時。
「そんなことしたって、全然驚かないんだから！」
菜緒が、影達へと向かって大きな声で言い放った。
目の前で恐ろしい化け物が爪や牙を光らせているというのに、菜緒は怯むということを知らなかった。
彼女らしい、とは思うものの、幼い菜緒をこのままにしてはおけない。
「菜緒ちゃん、こっちよ」
紫は、菜緒に向かって己の手を差し出した。
目をぱちぱちとさせた菜緒が、ややあって、その手をぎゅっと握る。
そうして、２人はそのまま影に背を向けて駆け出した。
紫の方は、影に追いつかれはしないか、あれらを撒くにはどうすればいいかなどと思考しているのだけれど、
「ねえ、どうして、わたしの名前を知ってるの？」
なんて、菜緒は紫に、気の強さが窺える瞳を煌めかせて尋ねてくる。
菜緒が、紫とはとかく対照的な性質の持ち主であるのは、昔からのことだ。
「とにかく、今は逃げましょう。あとで、全部話すから」
そう言い含めて、紫は目に留まった角を右に曲がった。
闇雲に動いているわけではない。
幼い頃の記憶を頼りに、紫は影の化け物達を撒かんと道を選んでいるのだった。
（随分険呑な場所だけど……ここも、あそこも、よく覚えてる。記憶のままだわ）
この世界は、子供の時分、菜緒と巡った沢山の場所を写したような作りだ。
配置こそバラバラだけれど、幻想でツギハギされた部品の一つ一つには、確かに覚えがある。
（２人でよく、島のあちこちへ行ったわよね……）
そんなことを思いながら、紫は公園の中へととび込んだ。
昔、２人でよく遊んでいた懐かしい公園。
（記憶が確かなら、今の私でも入れるような大きな物置があったはず）
果たして、それは確かにそこに鎮座していた。
影は丁度、紫達の位置を見失っている。
それを確かめ、紫は菜緒を連れて、物置の中へと滑り込んだ。
菜緒が、焦れたようにして音を紡ぐ。
「ねえ、お姉ちゃんは誰？ ここはどこ？」
「ここがどこかは私にもわからないけど……菜緒ちゃんを助ける方法なら、何となくわかってる」
２つ目の問いに先に応じて、紫は自分が『仙藤紫』であることを静かに打ち明けた。
受け入れてもらえるかどうか、不安がないわけではなかったのだが、
「紫ちゃん、すごい美人さんだー！！」
という具合で、菜緒はきらきらと瞳を輝かせ、感動しきりといった様子。
（……こんな状況でもタフというかなんというか……）
予想外の反応だが、そんな菜緒と一緒だからこそ、生還を期することができる。
「とにかく《駅舎》を見つけましょう。そこから、元の世界へ帰ることができると思うから」
「わかった！ 一緒に頑張ろうね、紫ちゃん！」
元気いっぱいのお返事に頷いて、そんな彼女を背に庇うようにしながら物置の扉を開ける。
いつの間にか影は公園にまで侵入していたが、まだこちらに気づいてはいない。
紫は足元の石をそっと拾い上げた。
そうしてそれを、抜けようと思っている出口とは逆側の茂みに掘り投げる。
――がさり。
響いた音に、辺りの影達が注意を引かれる。
その隙を縫うようにして、紫は菜緒と共に、公園から脱出を果たした。
「紫ちゃん、すごいね！」
菜緒が、明るい声を出す。
自然、紫の目元もほんのりと和らいだ。
やがて――２人は無事に《駅舎》へと辿り着く。
「ほら、影に気付かれる前に」
紫に促されて、こくりと頷く菜緒。
その表情の寂しげに曇っているのを見て、紫は少しだけ笑った。
「いつかまた、逢いましょう」
「……うん！ またね！」
菜緒の顔に、鮮やかな笑みが戻る。
手を振りながら《駅舎》へと消えるその姿を、紫は少しだけしんみりとした気持ちで見送った。
そのことを確かめた仙藤 紫は、細い息を一つ吐くと、慎重に辺りを見回した。
と、背後に気配を感じて、そっと振り返る。
そこに立っていたのは、１２歳ほどに見える少女だった。
いかにも気ままそうで、さばさばした気性を思わせる顔立ち。
くるりとその瞳が紫を見上げれば、ウェーブが掛かったショートヘアがふわりと揺れた。
「菜緒……ちゃん？」
紫の唇から、少女の名が零れ落ちる。
沢渡菜緒。小学校時代、紫と一番の仲良しだった女の子だ。
その菜緒が、何故だかあの頃の姿のままで紫の前に立っている。
しかし、不可思議に目を丸くする時間すら、歪みの世界は紫に与えてはくれない。
辺りの影達がゆらゆらと蠢き出したかと思うと、それらは見る間に、おぞましい化け物へと姿を変えた。
ぞわり、と肌が粟立つ。
紫が口元を引き結び、距離を取るように一歩だけ後ずさった、その時。
「そんなことしたって、全然驚かないんだから！」
菜緒が、影達へと向かって大きな声で言い放った。
目の前で恐ろしい化け物が爪や牙を光らせているというのに、菜緒は怯むということを知らなかった。
彼女らしい、とは思うものの、幼い菜緒をこのままにしてはおけない。
「菜緒ちゃん、こっちよ」
紫は、菜緒に向かって己の手を差し出した。
目をぱちぱちとさせた菜緒が、ややあって、その手をぎゅっと握る。
そうして、２人はそのまま影に背を向けて駆け出した。
紫の方は、影に追いつかれはしないか、あれらを撒くにはどうすればいいかなどと思考しているのだけれど、
「ねえ、どうして、わたしの名前を知ってるの？」
なんて、菜緒は紫に、気の強さが窺える瞳を煌めかせて尋ねてくる。
菜緒が、紫とはとかく対照的な性質の持ち主であるのは、昔からのことだ。
「とにかく、今は逃げましょう。あとで、全部話すから」
そう言い含めて、紫は目に留まった角を右に曲がった。
闇雲に動いているわけではない。
幼い頃の記憶を頼りに、紫は影の化け物達を撒かんと道を選んでいるのだった。
（随分険呑な場所だけど……ここも、あそこも、よく覚えてる。記憶のままだわ）
この世界は、子供の時分、菜緒と巡った沢山の場所を写したような作りだ。
配置こそバラバラだけれど、幻想でツギハギされた部品の一つ一つには、確かに覚えがある。
（２人でよく、島のあちこちへ行ったわよね……）
そんなことを思いながら、紫は公園の中へととび込んだ。
昔、２人でよく遊んでいた懐かしい公園。
（記憶が確かなら、今の私でも入れるような大きな物置があったはず）
果たして、それは確かにそこに鎮座していた。
影は丁度、紫達の位置を見失っている。
それを確かめ、紫は菜緒を連れて、物置の中へと滑り込んだ。
菜緒が、焦れたようにして音を紡ぐ。
「ねえ、お姉ちゃんは誰？ ここはどこ？」
「ここがどこかは私にもわからないけど……菜緒ちゃんを助ける方法なら、何となくわかってる」
２つ目の問いに先に応じて、紫は自分が『仙藤紫』であることを静かに打ち明けた。
受け入れてもらえるかどうか、不安がないわけではなかったのだが、
「紫ちゃん、すごい美人さんだー！！」
という具合で、菜緒はきらきらと瞳を輝かせ、感動しきりといった様子。
（……こんな状況でもタフというかなんというか……）
予想外の反応だが、そんな菜緒と一緒だからこそ、生還を期することができる。
「とにかく《駅舎》を見つけましょう。そこから、元の世界へ帰ることができると思うから」
「わかった！ 一緒に頑張ろうね、紫ちゃん！」
元気いっぱいのお返事に頷いて、そんな彼女を背に庇うようにしながら物置の扉を開ける。
いつの間にか影は公園にまで侵入していたが、まだこちらに気づいてはいない。
紫は足元の石をそっと拾い上げた。
そうしてそれを、抜けようと思っている出口とは逆側の茂みに掘り投げる。
――がさり。
響いた音に、辺りの影達が注意を引かれる。
その隙を縫うようにして、紫は菜緒と共に、公園から脱出を果たした。
「紫ちゃん、すごいね！」
菜緒が、明るい声を出す。
自然、紫の目元もほんのりと和らいだ。
やがて――２人は無事に《駅舎》へと辿り着く。
「ほら、影に気付かれる前に」
紫に促されて、こくりと頷く菜緒。
その表情の寂しげに曇っているのを見て、紫は少しだけ笑った。
「……うん！ またね！」
菜緒の顔に、鮮やかな笑みが戻る。
手を振りながら《駅舎》へと消えるその姿を、紫は少しだけしんみりとした気持ちで見送った。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年03月31日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年04月07日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年04月07日 11時00分
