悩みを解いてしんぜよ～！｜リアクション

悩みを解いてしんぜよ～！

■真境名アリサの場合
　女性の一人暮らしというのは気楽なもので、部屋の中では自由にしていられるしうるさく言う親もいない。
　しかし本気で困ることもあるのだ。
　それが。
「風邪ひいた……」
　体温計を翳して呟く。
　呟いた声は見事にガラッガラだった。
　誰かにうつされたかなーと思って記憶の糸をたぐると、店のお客で妙にゲホゲホいってる人が居たきがした。
　あの人風邪ひいてたのか。
　そんな時にあんなお店にくるなよと思ったが、お客の来るタイミングまで選ぶようではつとまらない。
　飲み手を選ばぬワインはいいワイン。
　それにあれだよ、冬場に暖房ガンガンにつけて乾燥しきったフロアで接客してれば身体も弱るってもんだよ。あと裸同然のあの格好。
「とりあえず。今日も仕事はお休みか」
　文字通り身体が資本のお仕事である。風邪をひいたら働けない。周りにうつしたらそれこそ大惨事である。
　ということで、お店側は気前よく休みにしてくれた。
　常駐する必要がないとはいえ、休むべき時に休めるのはいい職場だ。
　インフルエンザやノロウィルス中毒になったスタッフに『いいから出社してこい』と言い出す企業よりずっといい。あの上司はあたまおかしい。付き合ってたら今頃死ぬより酷い目にあっていただろう。
　とはいえ。
「今日はなんにもやることないな」
　布団の中で天井のしみをかぞえる。
　熱のせいか、無駄に将来のこととか考えてしまった。
　この仕事で結婚できるのだろうか。独身のまま老後を迎えたら？　年金とかまともに貰えるかな？　働けなくなったとして、他につぶしのきく仕事じゃあない。間違いないなく若いうちにしかできないし、仮にできても一生続ける仕事とは思えない。じゃあ今から十年ごとかどうすんの……ぐるぐるぐる。
「う、きもちわる」
　なにもしていないと気分が悪くなる。
　せめて暇つぶしにとスマートホンのスイッチを入れた。
　するとメールの着信シグナルが。
「なんだろ。お店からかな」
　開いてみると、懸賞サイトからの当選通知だった。
「……旅行券、十万円分か」
　まあ、生きていればいいこともわるいこともある。
　急に熱を出して仕事を休むこともあれば、急に旅行券が当たることもある。
　もしかしたらなんかまかり間違って宝くじとか当たるかもしんないし、玉の輿で結婚したと思ったら借金背負って生き地獄になるかもしんないし。
「ま、将来のことなんて考えてもしかたないか。とりあえず……寝とこ」
　ふと視線をベッドサイドに向けるとかサンマさんがかぼちゃネコにくわえられてる置物があった。
　小さなハッピーさんきゅうです。
　アリサは目を瞑り、とっぷりと眠りに落ちた。

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