あの日のあとで｜リアクション

あの日のあとで

　星ヶ丘に位置する自宅は、朝鳥さゆるにとって、大方、クローゼットとしての役割しか果たしていない。
　けれど、いつでも自由に使えるバスルームは、あって困るものではなかった。
　例えそれが、高校生の少女がひとりで暮らすには広すぎる、空虚な邸宅の中にあったとしても。
　――ザア、ザア、ザア、ザア。
　一体、バスルームに足を踏み入れてから何時間が経っただろう。
　さゆるはもうずっと、熱いシャワーの雨を浴びながら、何かに耐え続けていた。
　狂気、絶望、破滅願望――さゆるを内側から食い尽さんとするものは、あまりに多い。
　シャワーを止める、湯気にくぐもった姿見に、さゆる自身の姿が映る。
（――っ！）
　衝動のままに、さゆるは、己の拳で鏡ごと『自分』を叩き割った。けれど。