ねこじまクラフト　MOD：MORE-EVERYDAYS｜リアクション

ねこじまクラフト　MOD：MORE-EVERYDAYS

■かりとれネコクラぐらし
　月詠がモンスターキャッスルの建材を丸ごと持ち帰ってまで壁の資材を欲したのは、集落で巨大農園の制作を同時進行で進めていたからである。
「麦にジャガイモにニンジンにサトウキビ……これに加えてお米に大豆にキャベツにきのこ！　きのこだけちょっと難しいですかねえ」
　腕組みしてうーんと唸る椿美咲紀。
　配置次第でどうとでもなるというのは、かえって配置の仕方に悩むものだ。
　ここがサンドボックスゲームのおもしろい所でもある。
　いちがいに畑を作るにしても、どんな配置でどういう形にどこへ作るのかまで考えられるのだ。ついでに言うと、気に入らなかったら（労力さえかければ）撤去できるというのも試行錯誤ができておもしろい。
　とはいえ今度は大規模農園。
　集落とは大きく離した場所にスクエアグリッドに分けて作ることになった。
　さいころの六の目状に並べた畑と、キノコ用の暗くてじめっとした小屋を用意する。
　更にサトウキビ用の縦に長い畑をグリッド二つ分さいて用意すれば完璧だ。
「これで食生活も豊かにするのです！　牧場もそろそろいい頃合いですね」
　そう言いつつ、今度は食材加工用の施設を作っていく。
　生で食べるのもいいが、保存するには日干しにしたほうが長持ちする。
　特にキノコや肉は干して保存したいし、なんなら燻製にしてもいい。燻製用のボックスがいるだろうか。石材でつくれるかな？

　一方。柵をひとつまたいだ隣には、増やしに増やした牛や鶏といった家畜がそれぞれかこわれていた。
「牛の丸焼きにできないのが残念だなあ。ステーキもいいけど、あの時みたあの……」
　本居陽毬は牛に餌をやりながら、虚空を見上げて妄想に浸っていた。
　どのときのどれだろう。あれかな、遊園地のイベントで牛の丸焼きをぐーるぐーるやってた時のやつかな。
「すごく、たべてる感じがあったよねえ」
「いやあ、結構めんどいと思うぜ？　今歩いてるやつをまんま焼くのって手間かかるだろ、たしか」
　横で大豆の日干しをしていた水守流が独り言に加わってきた。
「本来めんどい部分を大幅にカットできるってのも、このゲームのいいところだと思うぜ。田舎暮らしのいい部分だけを抜き取ってる感じでさ」
　農業の学校で酪農を専攻していると理解できそうな話だが、日本に何パーセントいるかってえはなしなので割愛しよう。
「それより餅だよ餅！　最近餅食ってねえしな！」
「いちがつにたくさん食べたじゃない」
「俺の中では半年は食ってねえ気分なんだよ！」
　そうと決まれば即実行。うりゃーと言って米を刈り取っていく。
　これも米作りを勉強してないと分からない話なので省略するが、生えてる稲穂をもぎ取れば即白米ってえわけじゃあない。だがこの世界では抜けば即白米である。ザ・便利。
「米も餅米も一緒ってカンジなのな。まあいいや、とりあえず杵と臼をだな……」
　その辺の丸太を利用した道具を用意すると、一度ふかした米を中に入れた。
　杵を振り上げる。
「よし本居、あのぺちぺちするやつやってくれ！　俺はめいっぱいつく！」
「いいけど、逆がいいなあ」
「杵って結構重いぞ？　まあ、ちょっとやってみろよ」
「うん、じゃあぺちぺちやって」
　流から杵を受け取り、振り上げる陽毬。
「交互にやるんだぞ。いいな？　せーの――」
　餅米をこねる流。同時に杵を叩き込む陽毬。
「うわああああああああああ！」

　……といっても事故らしい事故はなく、お餅はしっかり完成した。
「お餅は、いいよね。小さく見えてもお腹いっぱいになれるから」
　むにむに食べながらほっこり笑う陽毬。
　幸せそうで何よりですねって顔で眺めてから、流は重箱にお餅をちょいちょい詰めていった。
「折角作ったんだし、周りにも配ってくるわ。あ、本居！　俺が出てってる間に全部食うなよ？　絶対食うなよ？」
「うん、知ってるよ。『おすなおすな』ってやつだよね」
「フリじゃねーよ！」
　出て行く流。積み上げられたお餅。
　陽毬はそーっと手を伸ばしてから、ぷるぷる首を振った。
「ここにいるとほんとに食べちゃいそう。そうだ、集会場にいこっと！」

このページにイラストを設定する