大怪獣襲来！～マンボウくん危機一髪～｜リアクション

大怪獣襲来！～マンボウくん危機一髪～

「何つう無茶振りしてくれてんだあの猫は」
　テオからの依頼に大きくため息をついたのは、七峯亨だ。その直後、彼は不敵に唇の端を歪める。
「ま、好き勝手暴れて良いってコトなら、思う存分やらせてもらおう」
「で、どういう状況なのコレ……」
　こめかみを抑え、問う矢萩咲。
「どういうコトかは俺も分からん、兎に角アイツを倒せと言う。デートじゃないが道は作る。連れても歩く。付き合えるか、咲」
　間髪入れずに咲は頷いた。
「愚問ね。こんなはた迷惑な現象、ほっとけないでしょ」
　そして、亨と同じ笑顔を浮かべる。
「それに……咲は亨君の彼女よ？　これくらい付き合えなくてどうするの」
　頷いた亨が叫んだ。
「デュワッッッ」
　巨大化する亨。その肩に乗る咲。
「……道は任せたわ。じゃあ、私があの巨大マンボウを……撃つ」
　ずしん、ずしん、と先を行くマンボウくんを追うように、亨は摺り足で移動する。前にある物すべて、街並みを潰しては均し、潰しては均し、圧して進む。咲はそんな彼の肩の上で、拳を振りかざし、真っ黒なビームをマンボウくん目がけて放った。
「きゅ！？　きゅうううう！？！？！？」
（悪いけど咲だってイライラしてるのよ……）
　彼女の負の感情がオーラとなり、再度彼女の拳に黒いオーラを纏わせる。
　偽物とはいえ、自分たちの住むこの場所を破壊されたら、居ても立っても居られないのが咲だった。あの家も、この店も、全て偽物だという事は判っている。それでも、皮肉なほどにそっくりなのだ。それを破壊しながら歩く巨大怪獣を易く許せるほど咲は寛大ではない。そこで、はたと自分が乗っている男がしていることに気付いた。
　――めっちゃ壊してる。
「亨君……いくらなんでも壊し過ぎよ」
「鬼が弐頭、そん前にこげな小んけものをひっ散らかすのが悪りぃ。だろ？」
　何も本物が壊れるわけじゃねえ、と亨は笑った。折角巨大化する機会だ。こんなことは滅多に、いや、二度とないかもしれない。それならば、
「壊す側にも回ってみてぇのさ」
　にたりと笑った彼に、咲は眉を顰めた。
「これが終わったら覚悟しなさい。久々に教育してあげるわ」
　とはいえ、それも咲が進むためにやっていることだと理解している。それならば、
（今はこの怒り込みであの巨大マンボウにぶつけるだけよ）
　ぐっと、拳を握りこんだ。

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