白熱エアガンバトル in ショッピングモール｜リアクション

白熱エアガンバトル in ショッピングモール

●支度の時間・白組サイド
　ショッピングモールをサバイバルゲームにするといい理由が三つある。
　一つ目はとても頑丈でそうそう崩れないこと。
　二つ目はわざと見通しを悪くした作りが銃撃戦を楽しませてくれること。
　三つ目は、スタッフ用の大きな更衣室があることだ。
「山のフィールドは、あまりこういう部分が整いませんからね」
　スチールロッカーを閉じ、ナタリア・シシロヴァは呟いた。
　コスチュームは旧ソ連軍タイプの軍服だ。
　旧ソ連ってなんだろうと思った人は歴史の教科書とか引っ張り出してほしい。
　更衣室を出ると、『武器貸し出し所』と書かれた部屋へと案内された。
　入ってみると、既に他の参加者たちで賑わっている。
　右を見ればカウボーイスタイルの鎌八まもる。
　左を見れば山奥へでも突入するのかというほど気合いのはいった装備の龍目豪がいた。
　サバゲーといえば山奥のレンタルフィールドに車をつけたおっさんたちが、軍服姿でぞろぞろ下りてくるというある種独特な光景が広がるもんだが、さすがは初心者向けのイベントと言ったところだろうか。
「まずは銃を選ばないとな。どれどれ……？」
　ラミネート加工されたカタログがカウンターに張り出され、種類別に銃の写真が表示されている。
　さすがというべきか、一種類とっても幅広いモデルが用意されている。
　まもるはカウボーイハットをしっかりとかぶり直すと、ウッドストックのボルトアクションライフルを指定した。
「やっぱり開拓時代といえばこれだよね。うん、似合う似合う」
　商業倫理やその他色々に配慮して略称や通称でよぶことにするが、ＷＣ社のＭ７０という狙撃銃だ。西部開拓時代にめっちゃ活躍した銃器メーカーの２０世紀初頭のもので、実は開拓時代と半世紀ほど違う。品揃えの限界というかＷＣ社の限界というか、雰囲気重視の選択である。
　どのみち基本性能は一緒で出てくる弾も専用ペイント弾なので、趣味で選んで構わない。
「牧場の射撃ゲームとは全然違う。これは楽しめそうだ」
「ほう、射撃の経験があるのか」
　豪が同社のショットガンを手にとって振り返る。
「まあまあってとこかな。相手にポニテさえいなけりゃ大丈夫だ」
　パチンとウィンクするまもるに、豪は『そうか』と深く突っ込まない姿勢で応えた。
「俺は初心者なんだが、射撃部と戦いたいと思ってるんだ。だから敵対する白組にした。同じチームだな！」
「みたいだね、つんつん兄さん」
「つんつん兄さん？」
　豪は首を傾げてショットガンをかついだ。
　ちなみに種類はM1887ソードオフタイプ。『なんか見たことあるから』という理由で選んだが、ターミネート２でシュワちゃんがバイクに乗りながらがんがん撃ってたやつである。
　その一方、染井湊は銃選びにすこしばかり迷っていた。
　豪のように映画や漫画の影響で選べれば楽だが、そういう指標がないとどれも同じに見えてくるものである。
「初心者向けの装備がいいかな」
　そう言いつつ、湊の服装は陸上自衛隊タイプの迷彩服。スタッフはそれに合わせてか八九式と呼ばれる自動小銃を手渡した。
　要するに現役の自衛隊装備である。見た目の印象も含め一番安定する、らしい。
「サバイバルゲームには昔から興味があったけど、服まで借りられるのは、便利だね」
「だよな。ゲームの中に入った気分だ」
　にかっと笑う七峯亨。
　彼はアメリカ海兵隊の迷彩服である。ピクセルもしくはデジタルカモフラージュといってドット絵みたいな迷彩柄が特徴だ。使う自動小銃も服に合わせたM4カービン銃だ。
「誰も居ない大型施設でサバゲすんのは、やっぱわくわくするよな。服から装備から一式借りれて、なにげに電気も通ってるし」
　リアルなサバイバルゲームでレンタルしている服は大抵真っ黒なよくわかんないやつだったりするが、本格的な気分を味わって貰おうとここではガチなアイテムを揃えていた。
　設備もサバイバルゲームをするためだけに維持管理されていて、ゲームが終わればスタッフが飛び散った塗装を掃除したり壊れた部分をメンテしたりしてくれる。
　なかなかに贅沢な遊びである。
「……」
　ナタリアは早速満足そうな初心者たちの様子を一通り眺めてから、うむと頷いて狙撃銃を手に取った。六三年採用の超有名な狙撃銃とまで言えば、もはや説明はいらないだろう。服装との年代違いはさておいて。

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