【球技大会】本気の野球（黒猫組サイド） -前半-｜リアクション

【球技大会】本気の野球（黒猫組サイド） -前半-

【３回裏】

「よろしくね、真帆さん」
「よろしくお願いします！八重崎先輩！」

対して黒猫チームも女子バッテリーに交代。
白猫先発投手を食い入るように見ていた真帆が満を持してマウンドに上がった。

「負けないんだから……！」

白猫チームは打順が一週して、１番のエヴァから。

「これより我らは修羅に入る！玉という玉を打ち尽すのよ！」

一蓮托生と書かれた扇子を開きながらエヴァがベンチに向かって一喝する。
ベンチからは「おー！」という応えが。
その言葉に満足げに頷くと、エヴァはバッターボックスに向かって行った。
堂々とした足取りでバットをまっすぐ真帆に向ける。

「そのキレイな顔にぶっ飛ばしてやるわ」

口元がにやりと笑った。
その挑発が聞こえているのかいないのか、真帆は黙ったまま投球フォームに入った。
その姿は騎刃と同じ。低い位置からのアンダースローだった。

１球目。
エヴァの身体に一番近いストライクゾーンにまっすぐ入るストレート。
手が出せないほどの速さではないが、ストライクゾーンぎりぎりを掠める制球力には手こずりそうだ。
エヴァは改めて真帆を見る。

２球目。
今度は逆に外角低めを狙った変化球。外に逃げるスライダーを迷わず叩いてファール。

「速さには慣れたわね」

バットの感触を確かめながらもう一度構える。
３球目。
１球目と同じ位置に来たボールをすぐさま打ち返す。
ボールはまっすぐ真帆の顔にめがけて飛んで行ったが、真帆がよろけながらもキャッチ。
宣言通りのピッチャー返しだった。

「とられちゃった。残念」

次のバッターは月乃。

「負けないんだから―！」

外角低め、内角高めと揺さぶりをかける真帆の投球に、普通にバットを振ることを諦めバントの構えを取る。
こつんっという音とともにいい具合に球速を落としたボールがサード側に転がった。
すぐさまカンタが捕球するが、何という事だろう、環がこちらを見ていない！

「たまちゃん先輩ぃいいっ！？」

どうやら空を横切った鳥の影に気を取られていたようだ。
月乃は無事に一塁へ進出。
環はそのあとセカンドの創に「だめですよ！」と怒られていた。

３人目の打者はジョジョ……もとい空里花・Ｊ・見条。
真剣な表情のままバッターボックスに入る。
１球目の外角ストレートを見送ると、２球目のスライダーを思い切り振りぬく。
ボールはライトの頭を越えてフェンスに直撃。

「走れ！」

一塁の月乃に声をかけながら空里花も走り出す。

「あれはお手製まりも！うけとってぇ！！」

ボールを普段からライブで投げているお手製まりもに見立てて全力投球。
二塁で待ち構えていた創のグローブに叩き込んだ。
そのまま滑り込んできた空里花にタッチ。
月乃は三塁に進み、空里花はここでアウトとなった。

「もう少しだな。次は入れてやるよ」

ツーアウト三塁という絶好のチャンスで回ってきたのは四番の轟。
ベンチを出る直前、優に小さく耳打ちされた。

「初球は高めストレートが多いから、振って行こう」
「おう、任せろ！」

そして優の宣言通り、外角を狙ったストレートを思いっきり振りぬく。
轟の力の入れ方がよかったのか、相性が良かったのか。
ボールは左中間方面に飛距離を伸ばし、ぽすっとフェンスの向こうへ落ちていった。

「「「ホームラン！！！！」」」

観客席から歓声が沸きあがる。
球技大会初のホームランである。

満面の笑みでベンチに戻ってきた轟を白猫チームの全員が温かく迎える。
全員とハイタッチ。しかし見覚えのない人間が紛れ込んでいる。

「ホームランおめでとうございますー！」

黒猫チーム、回転院環が小さな可愛らしいクマのぬいぐるみを轟に押し付けて自分のポジションにスキップで帰って行った。

「……なんだあいつ？」

白猫チーム、２点追加。現在３－３の同点。

「く、悔しい……！」
「大丈夫よ真帆さん。コントロールは悪くなかったし、あとを打ち取ったらいいわ」
「……絶対、打たせないんだから……！」

真帆が次の打者を睨む。
バッターボックスでマイペースにバットを回している真美は、そんな視線などお構いなし。

「バットの扱いには、慣れてんのよ」

その呟きと共に放たれたのは、殺人的速球ライナー。
咄嗟にショートの旭が反応するが、受けた左手が鈍く痛んだ。

「……ぶつけたら１点じゃなかったっけ？」

スリーアウト、チェンジ。

このページにイラストを設定する