魔界からの試練　――宵闇の商人キーシェイロン――｜リアクション

魔界からの試練　――宵闇の商人キーシェイロン――

　それでも、キーシェイロンの拳が強力なのに変わりはない。拳闘士である碧南と亮、七緒は今回唯一の軽戦士である九月と連携を取りながら前線を維持していた。
「うわっ！？」
　九月が突撃したとたん、キーシェイロンの体が薄くなって掻き消える。金色の光を放って消えたところから『悪魔の皮算用』を使われたらしい。
　詠唱が気になるのだろう、キーシェイロンが梢と真白の側へといつの間にやら転移していた。
「これはちょっと厳しいですねぇ？」
『そちらこそ、何か怖い事を企んでいるようで』
　梢の言葉に、キーシェイロンが苦笑しながらも威圧を放つ。真白を庇うように立ちはだかる梢の周囲には相変わらず亡者の手が蠢き、真白によって放たれた炎の球が浮かんでいる。
　突如、激しい爆発音が響き渡る。キーシェイロンは高く飛ぼうと翼を広げるも、亡者の手が彼の足を離さない。
「これならどうだ？」
　亡者の手を避けるべく楓が虚空に足場を作る。真白が放った炎の球が一気に減ったからこそできる芸当だ。
　梢はここぞとばかりに剣を振るい、加勢しようと亮、碧南、璃音の拳闘士トリオが己の拳や足を振るう。
「援護しちゃいますよ～！　はいはーいっ♪」
　二一はここぞとばかりに風をふかせる。『サダクビアの刃』で果敢に攻め立てると後方から軽やかなメロディーが聞こえてくる。

(・∀・)　＜テンション上げてこー♪

　きぐるみさんが軽やかにドラムを奏で、あわせるかのような衛のタンバリンと左右の神楽鈴が合わさる。
　左右はここまでずっとキーシェイロンを対象にBS【凍結】を与えるスキル『氷姫のキス』をかけ続けるも、ボスが対象だけあって掛かりにくい。前衛の防御力を上げる『守りの音』や攻撃力アップする『攻めの音』（正し２つともかけつづける事で防具と武器に氷が張ってくる）の合間に放つが、効果は今ひとつのようだ。
「うーん、ボス相手には厳しいですね」
「でも、やるだけやっとけ！」
　テンポよくタンバリンを奏でる衛は引き続き『ラビット・ダンス』をかけ続けていた。
　きぐるみさんはここでBGMに合わせた演奏から、ちょっとドラムから楽器をボンゴとコンガへチェンジし、神秘的なメロディーを奏でる。

(・ω－)＜土剋水だが、留めたい水なら土と相性がいい、と言えるよ

　きぐるみさんは左右の魔法属性に合わせて土水スキル『眠れる龍脈』「（防御力を上げ回復速度を上げる）を発動させる。
　そんな中でもキーシェイロンは爽やかな笑顔のまま、駆けつけた刀と接近戦を演じている。容赦ない拳の一撃を受け流し、刀は壁になり続ける。
「こっちだよっ！」
　刀にヘイトが来ているうちにラッシュを仕掛ける璃音。それをキーシェイロンは困ったような笑顔で受け、その違いに「ん？」と内心で首を傾げ考察したくなる。
　だが、翼が襲い掛かってきたので意識を戻して捌き、棍で応戦する。
　複数メンバーのダメージがたまってきたのを察知した修は瞬時に魔銃ナイチンゲールを手にする。少し離れた場所では夏朝も金猫を準備していた。
「七緒先輩たちは任せた！　俺は御剣たちを！」
「はいっ！　もっかい金猫いくよーっ！」
　夏朝が杖を振るい、修が銃を構える。そうしている間に再び幻像を残して移転するキーシェイロン。

　――やはり、拳闘士がいるとつい本気になりかけますねぇ。

　同時に放たれる金色の光が、彼と夏朝を確実に狙っていた。