魔界からの試練　――宵闇の商人キーシェイロン――｜リアクション

魔界からの試練　――宵闇の商人キーシェイロン――

「なかなか様になってるじゃん」
「そうか？」
　璃音にそう言われ、ちょっと照れる亮。
　そんな彼が買い物をしようとキーシェイロンに話しかけると、彼は璃音と亮を見、後ろに並んでいた羽生碧南の姿を確認した上でにっこり笑った。
「皆さんは、拳闘士とお見受けいたしました。さぞ、その手足に磨きをかけていらっしゃる事でしょうね」
「戦場でそれが本物だって証明してみせる」
　亮が挑発的な笑みで答えるものの、璃音と碧南は僅かに身を竦ませる。何故だろう、キーシェイロンの気配が僅かにかわったような気がしたのだ。
　しかし、碧南はすぐ気合を入れなおして微笑む。
（このジョブは、コズエル戦の時にもやったわ。それに、身体能力には自信があるのよ）
　こっそりと拳を握り締めて頷く彼女を、キーシェイロンはどこか楽しげな瞳で見つめた。
「俺はこれを貰おうかな」
　そう言ったのは八神修。彼はその魔法を確認しながら、懐に仕舞った武器を確認する。『魔銃ナイチンゲール』は治癒士専用の武器で、修としてはこれの使いどころだ、と思ったようだ。
「八神さん、今回治癒士なんですよねー。あと桜庭さんと恵御納さんも。私のビルド、ブラッドナイトだから治癒が面倒くさいかもしれませんけど、よろしくおねがいしますね？」
　そう言ったのは屋敷野梢。今回の彼女は重戦士である。ただ、ビルドがダークヒーロー的なブラッドナイトだったのだ。
（大剣を掲げ、傷つく事を恐れず、かつ不沈艦のように闘う姿はまさにダークヒーロー！　厨二心を擽るタンクジョブですよねぇ）
　とわくわくしていると夜海霧楓が並んでいた。彼が手にしている物はポーションとスクロール２本のようだ。
（このＳＯＣも三回目だが、いい加減誰が何の目的でやってるのか気になってきたな）
　楓は僅かに目を細めて眼鏡をかけなおし、キーシェイロンをみやる。
（それを話してもらおうか、キーシェイロンに）
　楓は深呼吸をすると早速買い物をすませるのであった。

（およ、今回は魔導士だのー。大魔法がメインって言うけどさ。防御魔法だの妨害魔法だのも役割なのよね。そういう事で今回は木属性でいこうかな）
　買い物風景を見つつアイテムなどを整理していた黒兎都は小さく頷く。彼女は参加者の中に見知った顔を見つけ、なにやら閃いたようだった。
「いいアイデアでもあるのか？」
　傍らにいた重戦士の御剣刀の問いかけに、都は小さく頷いたが「内緒」と言ってくすり、と笑う。刀はそれが気になりつつもにやり、と笑う。
（前回取得したスキルを使うのにちょうどいい。これ、使ってみたかったんだよな）
　ガンガン行くぜ！　とこちらは気合十分なようであった。
　刀が気合を入れなおしていると、キーシェイロンが周囲の冒険者達を見渡した上で指を鳴らす。と、屋台は消えてしまった。
「お買い物は以上で？　それでは、試練の時間にしましょうかね」
　キーシェイロンは翼を広げると、不敵な笑みを零した。

　――いよいよ、開戦である。

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