魔界からの試練　――宵闇の商人キーシェイロン――｜リアクション

魔界からの試練　――宵闇の商人キーシェイロン――

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「勝った、のよね」
　戌貝二一はパソコンの前で、仲間達が勝利に沸く姿を見て呟いた。じわじわとこみ上げる喜びの中で、彼女はにっこり笑う。
（この勝利に、貢献できたならよかった。あの魔法は無駄じゃなかった。そうよね？）
　二一はくすり、と笑って立ち上がるときらきらした笑顔で拳を握った。
「次の新刊は、こういった激戦もいいかも」
　彼女は早速『SOC』本の需要とかを考えては資料集めを開始する。そして、自分の姉妹にも相談してみよう、と思うのだった。
　ちなみに結論から言うと、納得のいくものが出来上がりそこそこ好評だったようだ。

　一方、新田亮もまた我に帰った。
（まだまだ精進が足りないな）
　店に拳を突き上げ、静かに頷く。そうしながらも、地竜招来が使えてよかった、とも思う。アレが使えなかったら、ちょっとピンチだったかもしれない、と。
（あれはジョブ関係なしで出せるっぽいけど……）
　亮はその時、直感で察していたことがある。魔導士のときに比べて、威力が落ちている、と。
（つまりは、召還する度に強くなるけど本領を発揮するのが『召還する人が魔導士のとき』ってことかな）
　１人考察しながら天を仰ぎ、もっと鍛えていこうと決意する亮であった。

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『今回はほんと、ぎりぎりだったな』
『キーシェイロンもお疲れ様。どっちが勝つかわからない勝負だったわ』
『私達も、気を引き締めなくてはいけませんね』
『うんうん。もっと楽しませなくちゃ！』
『それだけじゃありませんよ。私達との戦いで強くなってもらわなくては』
『じゃないと、あいつは倒せないんじゃないかねぇ？』
『あれの強さは……おかしいでしょうに』
『ともかく、見守ろう。次のレイドまで』
『召還の準備はできています。次は誰が出ますか？』
『それじゃ、私が。ふふっ、腕が鳴りますね』

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　こうして、『宵闇の商人　キーシェイロン』戦は幕を閉じた。だが、その数日後、何気なくネットで『SOC』で遊んでいた白真白は、そこで友達から奇妙な噂を聞くことになる。

　――特別『レイド戦』に参加し敗北したPCが、
　　　数名行方不明になっているらしい。

　――プレイヤーは生きているものの、PCが行方不明になった人は
　　ゲームのデータが凍結しているらしい。

（これって……なにかあるのかな）
　真白は不思議そうに思ったが、その一方で彼女含めゲームに入ったことのある面々には不思議なメールが届いていた。

『ゲームに勝ち進んでください。
　そして、私達を乗り越え、潜む存在を打ち倒して……』

　七緒璃音は自分のスマホに送られたメールを見、不思議そうに首をかしげた。
（前に巻き込まれたときは、こんなことなかった。うーん、あのゲームも紙一重じゃないってこと？）
　璃音はもう一度首をひねり、ミネラルウォーターを呷る。小さくため息を吐いていると、薄野九月が駆け寄ってきた。
「おりおんせんぱーい！　なんか不思議なメールが来ていましたけど、おりおん先輩のところにも着ましたか？」
「うん。このとおり」
　璃音にメールを見せてもらい、九月は小さく息を呑む。２人は胸騒ぎを覚えながらスマホの画面を見つめるのだった。

（終）

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