天界よりの試練　――花咲く風のコズエル――｜リアクション

天界よりの試練　――花咲く風のコズエル――

　――？　？　？

『なぁ、見たか？　先日のコズエル戦！』
『見た見た！　レイドの人数にしては少し少ないのに、よく勝てたよね！』
『なんか、初心者混じってなかったか？』
『いたいた！　でもその割にＫＯされた人数少なくない？』
『それだけ、連携が取れているってことでしょ？　あーん、かわいい子もいるし、楽しみ～♪』
『だったら、もっと楽しませてくれるのではないですか？』
『それ、言えてる～！　あぁ、どんな子たちが遊んでくれるのかしら？』
『燃えてきた……。　早く戦ってみたい……』
『天界側ばかりズルイですよ。次は我々魔界側がお相手させていただきます』
『わかってるって……』
『それじゃ、次はこの――の番ね。うふっ、滾るわぁ～！』

『それにしても、コズエルもお疲れ様。今はゆっくり休んでね』

（……ん？）
　眠っていたはずの夜海霧楓は、見た内容に表情を曇らせる。なぜだろう、薄暗い部屋の中で天使っぽい影と悪魔っぽい影が楽しげに話しているイメージがわいた。『ＳＯＣ』の影響だろう、とつめたい水を飲みつつ首をふるってからベッドに戻るが……、なかなか夢の残像は消えてくれなかった。

　＊　＊　＊　＊　＊

　それから数日後。
　登校した屋敷野梢は、正門でばったりとサキリ・デイジーカッターと会う。
「おはよう」
「おはようございます」
　そう、挨拶しあうものの、なぜか二人とも歩みを止めてしまう。というのも、お互いに『ＳＯＣ』での戦いのことを意識してしまったからだ。
　サキリは直感で、コズエル＝梢だと感じ取ったし、梢は梢でサキリがとどめをさした事を覚えている。

「「……」」

　二人は、なんとなくのぎこちなさを覚えながら見つめあい、言葉を探る。だが、サキリは言いたかった言葉を思い出し、やわらかい表情で梢に言う。
「屋敷野、君はゲームの天使より普段の方がずっと可愛いよ」
「？！　そんな事を言っても、何もでませんからね、デイジーカッター君？」
　一瞬面食らった梢だが、すぐにいつもの調子へと戻る。２人はおかしくなって笑い合うと、何気ない話をしながら下駄箱へと向かう。その背中に、如月庚と旅鴉月詠が声をかける。
「あのときは、なかなかいい戦いだったぜ」
「なかなか味わえないものがあったね」
　そんな言葉に梢とサキリが苦笑するなりうなづくなりで、また日常が戻ってくる。あの『ＳＯＣ』での死闘がうそだったかのように、笑いあう自分たちがなんだかおかしいけれども、それでいい、と思いながら。

　＊　＊　＊　＊　＊　＊

　この戦闘を最後に、『ＳＯＣ』でのコズエルイベントは終了する。だが、これからもイベント戦闘は続くし、また別の『極天使』が……あるいは『悪魔』が挑戦状をたたきつけてくるかもしれない。
　『ＳＯＣ』のプレイヤーたちはコズエル戦の思い出を語りつつも、次のイベント戦闘へと爪を研ぐ。

　――天使だろうと、悪魔だろうと、己の武器と魂にかけて……。

（終）

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