【星幽塔】酒場にて　→飲む　→話す　→外に出る　→脱ぐ｜リアクション

【星幽塔】酒場にて　→飲む　→話す　→外に出る　→脱ぐ

　立花なつの買い物は順調に進んでいた。

「へぇ、お姉さん彼氏いないの？　全然そんな風に見えないよ～」
　店先でなつは店員の女の子と親しげに話す。何だか普通なその光景に思わず忘れそうになるが、ここは異世界なのだ。その証拠になつの服装はファンタジーな和服だし、彼が話している店員の頭には、茶色い耳がぴょこんと覗いていた。

（……そういえば、この前学校の女の子に可愛いヘアゴムもらったっけ）
　ふとなつは思い出し和服の袂をさぐる。不思議な事に寝子島で身に着けていた物は、全てこの袂に入っていた。買い物もこのお陰で物々交換出来たのだ。なつは袂から、花の飾りがついたヘアゴムを探し出し、店員の獣耳の横にそっと当ててやった。
「うん、お姉さんによく似合うよ」
　恥じらう店員に微笑むなつ。そこに冷ややかな声がかけられた。
「……何やってんだ？　なつ」
　え、となつが後ろを振り向くと。竪琴を持った獅子目悠月が呆れ顔で立っていた。

「じゃあねお姉さん～」
　店員と手を振り合って店を出たなつは、悠月に向き合った。
「悠月もこっち来てたんだね～。衣裳かっこいい！」
「なつもすごい変わったな。……で、その荷物はなんだ？」
　悠月はなつの肩にかけられたずた袋を指さす。ああとなつが頷いた。
「台所用品とか、食材とか。まもるやアカリなんかと宿屋をするんだ～。日暮さんも協力してくれてるよ。そうだ、悠月も来ない？」
　悠月は少し考えてから言った。
「そうだな……じゃあ武器屋寄ったらそっちに行くよ」
「武器？」
「ああ。弓と矢を手に入れようと思ってさ。俺は竜退治でここに呼ばれたみたいなんだ」
「それアカリも言ってた。何だか大変だね～」
　これから宿屋の準備を手伝うとなつが言う。悠月は彼に後で立ち寄ると約束し、２人は別れた。