『向日葵』、雪遊び｜リアクション

『向日葵』、雪遊び

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雪が降る中を、うさぎのような出で立ちの月が足早に歩いて行く。
だいぶ、足の先が冷たくなってきた。日が暮れていくにつれて寒さは増していくし、急がないと。
そう思って、歩き続けて。
やがて、『向日葵』の灯りが見え始めた頃。月は、足を止めた。
『向日葵』の店先――そこに広がるひまわり畑を、赤い瞳を細めて眺める。
「やっぱり綺麗だ」
白い息とともに、感嘆の声をもらす。
すっかり雪に埋もれた、ひまわり畑の一面の銀世界。雪だるまや、雪うさぎや、かまくらに……そうやってちょっと人の気配が残っているのが、逆にいい。
後ろで、入り口が開く音がした。
振り返れば、そこには日向の姿。ふわ、と彼女は柔らかく笑みを浮かべる。
「来てくださったんですね」
「はい」
ふっ、とつられるように微笑んで、月は『向日葵』に足を踏み入れた。
「何にします？」
「緑茶と……あと、水ようかんを」
「はーい」
程なくして運ばれてきたそれを、ゆっくりと食べつつ窓ごしに外を眺める。
雪遊びのあとに、埋もれつつある足あと。今さっき、自分がつけたばかりのくっきりした足あと。暮れの暗闇の中で、ぼんやりと浮かび上がる白。
眺めているうちに、少しずつ頭のなかにイメージが湧き上がってきて。
それを逃さないように、持ってきたノートに描きとめた。
（うん、良いじゃないか）
少し無理をした甲斐が、これであったというものだ。
手応えに満足しながら、月はまた水ようかんをひとくち食べた。
「ん、おいし」
我知らず口の端を上げる月に、くすりと日向が笑みをこぼして。
ゆっくりとした時間が、流れていく。

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