寮生の日常　～桜～｜リアクション

寮生の日常　～桜～

女子寮。雨寺凛と最上るるかの部屋。
夏休みも残り少なくなり、セミの鳴き声も前ほど聞かなくなってきた。
「凛は宿題終わった？」
ティーンズ向けのファッション誌を読みながら、るるかが尋ねる。凛が読みかけの楽譜から顔を上げた。
「あとちょっとで終わりそうだよ！」
「じゃあ一緒にやらない？」
「うん！　やるやるー！」
それぞれが宿題を取り出して床に寝転がる。お互いに苦手なところを教え合いながら進めているが、暑いこともありすぐに飽きてしまった。るるかがチョコレート菓子を食べながら凛にいたずらっぽい瞳を向ける。
「ねー。凛は夏休み何かあった？　胸がドキドキするような体験とか素敵な出会いとかさ！」
「えー？　夏休みはネコフェスでライブしたり海にいったり何かと青春って感じではあったけど……運命の出会いとかは無かったなぁ。それよりるるかちゃんはどうだったのさー♪」
「あたし？　もーっ。わかってるクセに聞かないで。イジワル！」
つん、と凛がるるかの二の腕を指でつつくと、るるかは照れたように唇をとがらせて体をよじった。るるかの様子を見て凛は思わずにやにやしてしまう。恋する友人は可愛かった。
「……練習頑張った甲斐あってフルートは上達したの」
「へぇ、そうなんだ！」
「そのうち凛とセッションしたいなあ」
「うんうん、またるるかちゃんのフルート聞きたいし、セッションは是非ともやりたいねぇ！」
凛はギターやベースの他にキーボードやバイオリンも弾くことができる。どの楽器でやろうか考えると楽しくなった。
「路上ライブとかどう、チャレンジしてみない？　凛もあたしも超可愛いし、こんな美少女が街角で演奏してたら大手芸能プロダクションにスカウトされる事間違いなし！」
「またまたぁ。私はそんなに可愛く無いって！　読モやってる、るるかちゃんには到底敵わないよー」
「凛も超かわいいよ。あたしが保証するもーん」
にこっと笑いながらるるかが凛の手をとった。手入れの行き届いたるるかの綺麗な爪が見える。
「ね、凛！　暑いから一緒にシャワー浴びない？　汗かいちゃった」
「へ？　い、一緒に入るの？」
「いいじゃん女同士なんだし、恥ずかしがる事ないない！　それにね、いつも使っているところ故障中なんだって。さっき圭花から連絡あったの。いつもと違うところ、ひとりだと緊張しちゃうもん」
「そうなんだ。えと、うん。じゃあ一緒にいこっか！」
少し緊張しながら、凛は用具をまとめてるるかと一緒にシャワールームへ向かった。女同士といえど落ち着かなくてタオルで前を隠す。一方、るるかはそこまで気にしていないようだ。
「わぁ……るるかちゃんおっきいなぁ」
「ありがと。あれ、凛、ちょっと胸おっきくなった？」
「へっ。わ、私はそこまで……ひゃううっ！？」
後ろからこっそり回されたるるかの手に、思わず声が上ずる凛。
「あはは、凛ってばくすぐったがり！　かーわいい♪」
「ちょっ、やめてよぉこういうのには弱いんだからぁ！」
お返しとばかりに凛もるるかに手を伸ばす。
「えっ。ちょっ。そこはダメ……あははっ」
「あはは！　るるかちゃんもくすぐったがりー！」
ふたりとも笑いすぎて少し涙目だ。お互いにシャワーを掛け合ってきゃーきゃー遊ぶ。シャワー室を出たら部屋に戻って髪を乾かす。凛の艶のある黒髪がドライヤーの風に揺れた。
「凛の髪キレイ……ね、なでてもいい？」
「どうぞー。髪は念入りに手入れしてるしつやつやさには自信あるよ！」
「わーサラサラ！　黒髪のストレートもいいよね」
「ありがとう。良かったら私の使ってるコンディショナー使ってみる？」
「うん♪」
お互いの髪をとかしあう。ふたりとも艶やかな綺麗な髪にしあがった。
「るるかちゃんの赤毛も綺麗だねー」
「ふふ。あたしの髪アレンジしていーよ♪」
「るるかちゃんは色んな髪型が似合いそうだねー！　ツインテとか結構いいかもっ」
「ふふ。うんと可愛くしてねっ」
シャンプーの香がほのかに香る室内で、女の子の時間は和やかに過ぎて行った。

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