死と隣り合わせの節分～鬼はフジコ～｜リアクション

死と隣り合わせの節分～鬼はフジコ～

「ん……」
　葉月はプールサイドで身を起こした。唐突な寒波に周囲が凍っている。校舎は白い霜と雪に覆われていた。
「校舎の影になって助かったのね」
　奇跡的に助かったようだ。
「みんなは無事なの……？」
「死ンダンジャナイカシラ？」
　機械的な答えは、空から降ってきた。
「じぇのさいだー☆フジコ……」
　その、メイン機だろう。
　それまで戦ってきたフジコたちとは、明らかに存在感が違う。
「山荘ブリネ」
「そんなの、知らない！」
　葉月は付近にあった博士の装置などに身を隠しつつ、豆を投げつける。
　――こうなってしまったら、物影から不意打ちを狙うしか。
「無駄ヨ」
「！？」
　フジコがかき消えた。次の瞬間には背後を取られ、葉月は腕をねじられている。
　力の差がありすぎる。
「氷像ニナリナサイ」
　プールを背に、フジコが口を開いた。凍えるガスが漏れ出てくる。
　――冷たい。
　葉月は薄れていく意識の中で、動かせる腕で「それ」をつかんだ。フジコに向け、引き金を引く。
　水鉄砲だった。水滴がフジコを濡らす。
「アラ、何ノツモリカシラ？」
　ダメージすらない攻撃に笑おうとしたフジコはしかし、弾けたスパークに葉月を離し、よろめいた。
「コ、コレハ！」
「水をかけただけでも効果はある――これはあなたを倒すために作った液体よ」
　葉月は地を蹴って、全身でフジコに押し当たる。
「そしてプールに張った水は全部……」
「ソ、ソンナ！　イヤアア！？」
　絶叫は水飛沫に呑まれた。
　プールサイドで見下ろす葉月の前で、じぇのさいだー☆フジコはもがきながら兵器を乱射した。
　そのどれもが、水面下で不発に終わっていく。
　このプールこそ、豆を大量に溶かした液体の培養池だったのだ。
　もがきながら、じぇのさいだー☆フジコのメイン機は溶けていく。
「やったのか」
　葉月が声に振り返る。武道やサキリ、美野梨に刀、修がいた。
　皆傷ついたり凍傷を負ったりしていたが、無事だったのだ。
「ええ、これで終わり」
　葉月は水面へと視線を戻した。
　すでにフジコの形は崩れ、水銀のようになっていた。金属の液体は、そのままプールに溶けて薄れていく。
　やがて排水口が開かれ、全てが流れていった。
「勝った」
　ついにジェノサイドな悪夢に打ち勝ったのだ。
　生き残った六人は、静かにそれを分かち合った。

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