死と隣り合わせの節分～鬼はフジコ～｜リアクション

死と隣り合わせの節分～鬼はフジコ～

「ルヴィア、悪い。汚れてないか？　痛かったり怖くないか？」
　教室のロッカーに人形と写真を置き、刀は『ルヴィア』についた煤汚れを拭いていく。
「すぐに終わらせてやるからな。早く俺たちの部屋に帰ろう」
　ついで写真を見て安心したように笑う。この寝子島で彼女たちはきっと無事のはずだ。それが幸いだった。
「！？」
　校舎が砲撃でも喰らったかのように揺れた。近い。そして聞こえてくる音声。
「来たなフジコ。覚悟しろよ！」
　刀は豆を握り締め、走り出した。

「っ！　今すごい揺れたわね」
「フジコが校舎に突入してきたようじゃな、急ごう！」
　頭の上の千嵐博士に頷き返しながら、美野梨は職員室に入る。背を向けていた尚輝の肩を叩いた。
「五十嵐先生、液体の調合が完成しまし――せ、先生！？」
　美野梨が手を離す。異様に冷たかった。
　氷漬けになった尚輝が倒れる。
「いかん！」
　博士の叫びに破壊音が重なった。机に隠れていたフジコが美野梨に飛びかかる。
「よくも先生を！」
　ポケットに入れていた改造銃を取り出す。引き金を引けば、内蔵された豆が次々と発射された。
「アン！　ヤン！」
　命中した豆に聞きたくもない嬌声を上げ、それでもフジコが前進してくる。
「当てる数がまだ少ないのじゃ！　頭を狙え！」
「でも私、銃はあまり……！」
　廊下まで退避した美野梨が絶望的な表情になる。
　もう一体のフジコが廊下にいたのだ。
「フジコホール――」
「させるか！」
　横合いから熊吉がフジコに殴りかかった。
「神野、早く逃げんか！」
「熊先生、でも！」
「俺なら心配いらん」
　そう言った熊吉の身体がメキメキと変貌を遂げていく。
「俺の正体は人間ではなく、鬼！　人に紛れて姿を隠していた地獄の眷属だからな！」
「なんと、この時代にまだ鬼が生きていたとは！」
　博士もびっくりな超展開である。
「今のうちに……ぐはぁ！」
　二体のフジコが鬼の熊吉を襲う。
「ダブルフジコ波動砲！」
「ウボアああー！？」
「先生ー！」
　フジコの特大エネルギー波に消える熊吉。美野梨は涙を流しながら銃を乱射した。
　フジコの一体が頭部に何発も受け、爆発する。
「先生の仇！……あ、あれ？」
　豆が出なくなった。豆切れだ。フジコが笑った。
「ジ・エンド」
「それはお前だ！」
　天井を『分解』し、瓦礫とともに修と刀がフジコを強襲する。
「お前は俺たちの好きなフジコ先生じゃない！」
　修が豆袋を大量に投擲し、ろっこんで袋のみを分解した。
　ヤツは巨体のわりに速い。ならどう戦うか――答えがこれだ。
　かわし切れないほど大量の豆で押し切る！
「ヤルワネ、デモフジコファイヤーデ燃……」
　大量の豆を燃焼ガスで焼き尽くそうとするじぇのさいだー☆フジコ。
「遅い！」
　刀が脳内で撃鉄を落とす。加速した刀は突っ込んだ勢いでフジコの体勢を崩すと、その背後へと駆け抜けた。
「鬼はー外！　福はー内！」
「HIBABOBEBE！」
　高速豆まきが背を猛打し、修の大量豆が前面からぶつかる。フジコが絶叫を上げた。
「威力に量、決定打だ」
　修がパチンコで放った豆が、フジコの眉間にめりこんだ。
　二度目の爆発が廊下を席巻する。
「先生、仇はとりましたよ……」
　風に服をなびかせ、美野梨は呟いた。
　次の瞬間、彼女たちの身体を怖気が襲った。

「えっ」
　遠くを見つめたサキリが声をあげた。
「どうした？」
　武道が視線を追う。
　空に、誰かがいた。
「な……」
　なんだ、この圧倒的な絶望感は！？
　次の瞬間、大気が突然凍り出した。
　空にいるフジコの口から寒波が放射され、校舎が一気に凍りついていく。

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