冬の日。新たな始まり｜リアクション

冬の日。新たな始まり

【始業式・寝子島小学校】

　寝子島小学校の体育館では始業式が始まっていた。

「ふわぁ……」
　３年生の曖浜瑠樹はクラスの列に並びながら、小さくあくびをした。
（まだちょっと眠いねぇ。でも寝ないように我慢我慢ー！）
　うん！　と瑠樹は気合いを入れる。校歌斉唱では歌が苦手なので小さな声でやり過ごし、校長先生のお話となった。

（校長先生のお話だぁ！　何があるのか、楽しみだねぇ。２学期のサンマさんは可愛かったなぁ）
　瑠樹は体育館の舞台をわくわくしながら見つめた。そう、寝子島小校長の雨宮花三郎は子供達を喜ばす事が大好き。２学期の始業式は瑠樹の言うようにサンマさんの着ぐるみで登場したのだ。
　瑠樹を始めたくさんの澄んだ瞳が舞台を注視する。その大注目の中、よたよたと登場したのは。

「……わぁ、マンボウくんだぁ！」

　瑠樹が思わず叫び、周囲からわっと歓声が上がった。その歓声に驚いたマンボウくん（※校長先生です）、きゅうっとひっくり返ってしまう。袖から出てきた先生方が慌ててマンボウくんを助け起こす光景に、体育館は爆笑の渦となった。

　何とか立ち上がったマンボウくんが演台で話し始める姿を見ながら、瑠樹はにこにこしていた。
（校長先生のマンボウくんも、可愛いねぇ……和むなぁ！）
　―――ああ、瑠樹くん迂闊に和んじゃだめぇ！　……と思ってももう遅かった。ゆるキャラや着ぐるみが大好きな瑠樹がこの状態で和まないはずはない。彼には全くそのつもりはなかったが、彼のろっこん＜ゆるゆる和みと恩恵の輪＞が発動してしまった。

　勿論こんなに『ひと』が多い所なのでその威力は控えめだった。しかしクラスのみんなを先生を含めほんわかした気持ちにさせるには十分で。３年２組は終始笑顔で始業式を終える事となった。