シャンシャンシャンのその前に｜リアクション

シャンシャンシャンのその前に

　借りた制服を手早く纏って、朱蘭は店内に躍り出た。
　――Joulupukki臨時お手伝い、酒浸朱蘭、爆誕！　である。

　棚の品物を陳列。
　歪んでしまった品物を飾り直し。
　不足した品物は、奥の物入れから取り出し、これも陳列。
　接客はミルカに任せ、裏方に徹する。
　一つ一つの作業をミルカに確認し、手際よく片付けつつ、次の段取りを決める。

　そんな彼女を頼もしそうに見上げるミルカ。
　固定のアルバイトはいないJoulupukkiだが、たまに他の人にヘルプに入ってもらうことがある。
　店内の忙しさもあるだろうが、朱蘭の仕事へ集中力、熟練は歴代ヘルプの中でもトップクラスだった。

　不真面目でお気楽と思われがちな朱蘭だが、仕事の手際は抜群にいい。
　本気を出せば、ざっとこんなものである。

　奥まったところにある品物を、そっと取って、手渡す。
　お客さんが誤って落としてしまったツリーの飾りを、元に戻す。
　感謝の言葉と笑顔がうれしい。
　込み合っていた店内が、徐々にスムーズに回り始める。

　すっかり良い気分の朱蘭。
　――この良い気分を、さらに盛り上げるためには……。

　半ば無意識に、シンクからグラスを取り出す。
　水をついで、グラスに十字の印。
　ろっこん『似非バッカスの施し』。
　液体を、酩酊効果のあるものに変化させる。
　
　心地よい酔いは、人生の妙薬。これなら未成年も大丈夫。
　せっかくなので、店の隅っこで品定めしている、気難しそうなおじさんにも一杯。
　と、グラスを持って走り寄ろうとすると。

「あ、店内は飲食禁止で！」

　ミルカの声が飛んだ。

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