シャンシャンシャンのその前に｜リアクション

シャンシャンシャンのその前に

　ろっこん水を囲み、ひたすらご機嫌な朱蘭たちを見ながら、テオは溜息をつく。
「いろいろあるもんだぜ」
　その頬に、ネコじゃらしが擦り付けられた。
　クリスマスバージョン、特別使用ネコじゃらし。わざわざ綾花が購入したものだ。
　じゃれたいという欲望と、神様としての矜持をたもちたいという信念がせめぎ合いながら、尻尾をパタパタ振って反応してしまうテオ。
「赤と緑で、可愛いんですよね」
　ぱたぱたと上下にスイングさせると、テオの腕がそれを追いかける。
「テオ、トナカイが可愛いので、サンタの服とか、ツリーっぽい服とかどうですか？」
「コスプレが……したいわけじゃ……ない」ひょいひょいと、ネコじゃらしの穂を追いかける。
「テオは、なんでも似合いそうです」

　逃れようとするテオを、夏朝が抱き上げる。
「暖かいところで寝られてる？」
「心配するな。うまくやっている」
「できるかどうかわからないけど……。
　テオ君やみんなや、猫さんを招いて、パーティもしたいな……」
　――猫さんＯＫな場所とか、分からないけど……。
　みんな、仲良く幸せになれる方法があるといい。
　夏朝がサンタポストに入れたお願いと、それは響き合う提案だった。
　綾花も、他の皆も賛成する。
「俺も忙しいけど、やるときには呼んでくれ。――後悔させないぜ」
　テオが渋くつぶやいた。

「うひ～」
　購入した商品を見て、はつなが笑う。
　最初の緊張はどこかへ行ってしまった。
　楽しそうに微笑みかける雅人。
　――寝子高に転入して、緊張していた彼女。
　だが、雅人と知り合えて、打ち解けることができた。
　彼の友達も多く、彼らもいい人そうだ。

　雅人は頷く。他人のペースを忖度し、思いやれる友人。
　寝子高には、そんな素敵な連中が、沢山いる。
　
　間違いはないだろう。
　なんといっても、ずっと、他人のプレゼントを必死で選んでいた二人。
　他人のことに思いを巡らし、あれやこれや何時間でも考えていられる二人。

　――あの二人こそ、生徒会長と副生徒会長、高校のトップ二人なのだから。