ブラックサンタウォーズ｜リアクション

ブラックサンタウォーズ

【ミルカ・アハティアラは見た】

　サンタの犯行は鮮やかだった。

（サンタさんのニセモノなうえに悪い人なんてヒドい！）

　ミルカは、そんなサンタの悪行をじっと見つめて、怒っていた。
（サンタさんは素敵なプレゼントと笑顔を届ける人なんです！　悪いことをする偽者は許せません！）
　彼女は、小さい頃から寝子島育ちではあるものの、出身はフィンランドで、島では仕事で不在の両親に代わって、クリスマス雑貨店を営む祖父のもとで世話になっていた。
　そんなミルカにとって、サンタを穢すような行為は許されないこと。

（これ以上、悪いことをする前に止めなくちゃ！）

　ミルカは、サンタの前に回り込むと、両手を広げて「止まって！」と叫んだ。
「おや？」
　目の前に現れた少女にサンタは片眉を吊り上げた。
「ああ、お嬢ちゃんもプレゼントが欲しいんだね。よしよし、サンタさんがプレゼントを――」
「あなたは、サンタさんなんかじゃありません！」
　ミルカは、サンタの言葉を遮るように叫んだ。
「みんなが楽しみにしているクリスマスを壊すようなことはやめてください！」
「……ふふ。どうやらお嬢ちゃんは見てはいけないものを見てしまったようだ。そんなきみには――こいつをやろう！」
　サンタは白い袋から白い猫のぬいぐるみをミルカに押しつけてきた。
「……っ」
　ミルカは、ぬいぐるみを押しつけられるとほぼ同時に、自身のろっこん《Joulutonttu》を発動させた。

「うん？」

　ブラックサンタは白い猫になったミルカと消えてしまったぬいぐるみに目を瞬かせる。

　次の瞬間、サンタの頭上に消えたぬいぐるみがぽとりと落ちてきた。
　ミルカは、ろっこんで転移させたそのぬいぐるみで、サンタをネコに変えられないかと思ったのだが――。

「ふむ？」

　サンタは、特に変調をきたす様子もなく、ぬいぐるみを回収すると再び次の獲物を探して街を徘徊し始める。
　その後ろでミルカが変身した白いネコが、サンタの背中に向かって、「にゃー」と何かを訴えるように鳴いていた。

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