【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

60.

　そのさまを、じっと見つめる探検部。
　みゆきが何を考えているか、周囲は理解していた。
　罠で、こまちを止めることはできない。だが、切り札がある。　

　北原みゆきは逡巡する。
　コメディエアーとはいえ、このありさまはあまりにも酷烈で、あまりにも凄惨だ。
　何より怒りに任せて破壊した後、彼女の心がどれほど傷つくかわかわない。

　こまちを緊急停止させるブレーキ。
　それを、彼女は持っていた。
　北原みゆきのろっこん『トラブル・メーカー』。

　その効果、対象になった人間が行った『一番自信のある特技』の、失敗確率上昇！

　ただこれは……。

（――諸刃の刃）

　盾にして、剣。
　発動すれば、誰かを傷つけてしまう。
　このコメディエアーの下で、狙った効果が得られるかもわからない。

　人を傷つけ、貶めることをなにより恐れる、みゆきに与えられた力。
　託されたのだろうか、あるいは、背負わされたのであろうか。

　傷口にして、ナイフ。
　
　それでも、彼女をこのままほおっておけない。
　覚悟を決めて、発動動作に移るみゆき。
「トラブルメーカー！」
　気合とともに打ち出す。

　ふっと、糸の切れたように倒れるこまち。
　彼女の肢体の上に、無数の花弁が舞い落ちる。
（よし！）
　その瞬間、飛び込んできた何者かが、ろっこんの範囲内に、僅かに被さる。

　あれは、生物部？

　美野梨と話していた猫が、にゃあと一声鳴いて、走り去る。
　怪訝な顔をする美野梨。
（ろっこんが切れたのかしら？）
　もともと衆人環視下では、不安定な発動しかできないろっこんだ。
　効果が切れてしまうのには慣れている。
　
　静けさの戻った廊下。だが、みゆきの心は晴れない。
　
（……何か、言った方がいいのかな？）
　みゆきは悩んでいた。

　親し気に猫と心を通じ合わせる美野梨。
　彼女にとっては、それが『得意なこと』だったのだろう。
　微妙に責任を感じないでもない。
　なんとか、フォローできるなら、しておきたい。
　幸い、今は猫の着ぐるみ。
　コメディエアーの影響的なあれで、猫が話しているのかと思われるかもしれない。
　無理かもしれない。

　その時、美野梨がこっちを向いた。