猫鳴館、自治会長選任戦｜リアクション

猫鳴館、自治会長選任戦

●幕間：パーティ準備はつつがなく（その２）

　一方、放送設備のある管理室には優と零の姿があった。
　主にエロテロを警戒した警備班を買って出たのだ。
　警備をするにあたり自陣の状況を知っておきたいという零を、優はこの管理室に案内した。
「ここに防犯モードのスイッチがあるよ。オンにすると、階段が滑り台になったり、大部屋のタライトラップが作動したりするんだ」
　優がそう説明しているところに、士がやってきた。荒太郎のところにも寄ったがちょうど米運びの手伝いに出ていて留守だったらしい。
「初島、ちょっといいか。テロ対策に防犯モードをオンにしてほしいんだが」
　もしかしたら、骨削派に対する先手にもなるかもしれない。――士がそう思ったかはわからないが。
　優が答える。
「こっちも、ちょうどそうしようかと思ってたところ。きっと警備の助けになるしねー」
「いいのでござるか？」
「このくらいやらないと、きっとエロテロを防ぐことはできないよ。パーティー中建物内で使用されるのは台所～裏庭のルート位だろうからその辺りだけ罠が作動しないようにしてっと」
「ふむ……システム内容と警備配置の予定を予め聞いておきたいところでござるが」
「そうだよね。念の為、支援部のみんなに罠の配置図を渡しておこうー」
　そういうと優は一旦部屋に戻り、寮内図のような書類を持ってきて零に手渡す。
「ついでだから防犯モードの新しい罠の試作として自分の部屋に仕掛けた罠の数々も起動しちゃおうかー」
　零と士が見守る中、優は実に楽しそうに。
　――ぽちっとな。

◇
　
　大福は天馬ひびきを伴って買い出しから帰ってきたところだった。ひびきは、明日の用意のために猫鳴館へ行こうとしていたところを、友人の大福と一緒になったのだ。
「フィリアさん残念だったね。星ヶ丘寮内にはいなかったみたい。どこか出掛けたのかなあ」
　星ヶ丘寮生のひびきは大福をそう慰める。大福は、ＰＫ事件の重要人物であったフィリアに今回のパーティの招待状を送ろうと星ヶ丘寮を訪ねた。しかし残念ながらフィリアの姿は見つからなかったのだ。
　大福はひとつため息をつく。
「今回は仕方がないか……でも、いつか絶対、猫鳴館を分かってもらおう」
　一方ひびきは、得意のクッキーをまた焼いて来てくれていた。
　ちょうど山を下りようとしていた武道とすれ違い、
「志波にぃ、これ、おみあげー」と渡す。もちろん大福にも。
　米を運んだ疲れでちょうど甘いものが欲しかった武道は、その場でぱくりとクッキーをいただき、
「ひびきちゃんマジ天使☆」
　と満面の笑みを浮かべた。
　そのとき。

＜防犯モードが起動しました。寮生は注意してください＞

　寮の方から放送が聞こえる。
「防犯モード起動だって」
　驚いた顔でひびきが大福を見ると、彼はうんざりしつつも涼しい顔だ。
「心配ないよ。食堂までの道にトラップはないから……。クッキー、鳶色彦にもお供えするつもりなんだろ？」
　鳶色彦の社は食堂にあるのだ。
「うん。そうなの」
「とりあえず食堂行こうぜ……俺についてくれば大丈夫だから」
　もちろん、ふたりは無事に食堂にたどり着き。
　一緒にねずの社の鳶色彦にひびき特製のココアクッキーをお供えして祈る。
「明日のパーティが成功しますように」