月が綺麗ですね｜リアクション

月が綺麗ですね

【光彩、煌めき、影】

　店の扉を彩る煌めく星々のステンドグラスが、夕明りを店内に導いた。
　その光は一組の男と女が座るテーブルまで伸びて、卓上のガラス製のティーポットの中で、赤が、青が、緑が、乱反射する。
　女はまばゆい輝きに息を呑み、ぽつ、ぽつと続いていた会話が途切れる。男もまたその輝きを無視することはできず、2人の視線はティーポットの上で重なった。
　揺らめく光と、放たれる香気にあてられたのか、男は重たい口を開いた。しかしなにかの言葉が発せられることもなく、男は慌てて口を閉じ、壁時計に目を向けた。

　繊細なガラス細工のごとき時間に、無粋な鐘がヒビを入れた。

　ゴーン、ゴーン、。ゴーン、ゴーン、ゴーン。六つ響いた鐘の音に、男は頬を小さな安堵で緩ませる。
　その安堵を隠すかのようにわずかにうつむき「そろそろ閉店ですよね、それでは失礼します」と忙しなく席を立った。
　一方、女は微動だにせず、未だにティーポットに視線を注いだまま。
　その面差しは逆光で男からは見えず、一瞬の安堵を見せた癖に、今度は寂しそうに眉を下げた。

「I　LOVE　YOU」

訳：