「さぁ、今日は何を作ろうか?」
霧生 渚砂が寝子ヶ浜海岸に打ち上げられてから、はや数ヶ月。
今ではすっかり島の雰囲気に打ち解け、居候先でケーキを焼くのが日課になりつつある。
「あ、サティ! 調理台の上に乗っちゃダメだぞ!」
オッドアイの白猫のサティが、渚砂の作業を興味深げに眺めている。
「サティ、お兄さんは今、ケーキ作りしてるからまた後で……」
渚砂がサティの目と向かい合った次の瞬間!
ブ チ ッ !
「うわぁ!? 自分の癖毛が飛び出したー!?」
突然、毛根から射出された渚砂の癖毛――俗にいうアホ毛が床に刺さると、見るみるうちに大きく膨れ上がり……。
もうひとりの渚砂へと変身していった。
「なんだなんだ? 自分が増えたぞ……? また神魂の仕業なのか?」
唖然とする渚砂に、もうひとりの渚砂は心底ガッカリした様子で口を開いた。
「随分と腑抜けた顔してるじゃないか。この島でだいぶ鈍ったんじゃないか、もうひとりの自分?」
ジリッと戦闘態勢に入る相手を見て、咄嗟にサティを抱えて真横に飛んだ。
瞬間移動と見紛う程の足運びから、一直線に襟元へ掴み掛る手を、渚砂は間一髪で掻い潜った。
一瞬でも遅れていたら、柔術で投げ飛ばされていたかもしれない。
「危ないじゃないか!?」
渚砂の非難の声に、淡々としたトーンで語る相手。
「当然だ、叩き潰すつもりでやっているからな」
再び構え、腰を落とした相手が渚砂を睨み付ける。
どこか、怒りに満ちた目力に渚砂は気圧されてしまいそうになる。
「ダメだ、よく分からないけど、ここで怯んだら守ることが出来ない!」
渚砂もエプロンを投げ捨て、柔術の構えを取る。
「……少しは覚悟が残っていたようだな」
相手は呼吸を整えると、自身の正体を明かした。
「自分はドッペルゲンガーと呼ばれる怪異だ。そしてオリジナルの存在の信念が具現化した存在でもあるぞ」
ドッペルゲンガーは語る。
今日1日、猫の目を見たものにドッペルゲンガーが現れ、自分の信念と向き合うことになるだろう、と。
「オリジナルが勝てば、自分は大人しく影の中へ戻ろう。だけど、もし自分が勝った場合は……」
それに渚砂が口を挟んだ。
「オリジナルが倒されて、ドッペルゲンガーに取って代わられる。そういう事か!」
都市伝説で『ドッペルゲンガーに会ったら死ぬ』という噂は、この事を指すのかもしれないと悟る。
渚砂は、今まさにそれを体験しようとしている。
「自分の信念……、大切な人を、みんなを守りたい!」
「ならば、自分を倒して証明してみせろ!」
ドッペルの拳がオリジナルの渚砂の頬を抉る!
だが、渚砂はドッペルの腕を掴んで、強引に投げ飛ばした!
机に突っ込み、調理器具もろとも床へ転がるドッペル渚砂。
彼は立ち上がると、オリジナルの渚砂へ向けて、こう叫んだ。
「来い! 己の魂を越えてゆけェッ!!」
霧生 渚砂さん、サンマ賞のご当選おめでとうございます!
という事で、ガイドに渚砂さんを起用した次第です。
それでは、概要です。
ガイド概要
本日、怪異ドッペルゲンガーが出現しやすくなっております。
恐らく神魂の影響でしょう。
出現条件は【猫の瞳を視界に入れる事】です。
寝子島は猫がたくさんいるので、何かのはずみで貴方のドッペルゲンガーが出現してしまうでしょう。
出現の仕方は人それぞれです(サンプルアクション参照)。
出現したドッペルゲンガーは好戦的です。
オリジナルの人物を力尽くで叩き潰そうとしてきます。
そして、最大の特徴は【オリジナルの存在が掲げている信念】をへし折るために行動します。
いわば、オリジナルの存在を試しています。
ドッペルゲンガーの猛攻を凌ぎつつ、自分の信念の強さを証明できれば勝利をもぎ取れるでしょう。
<PL情報>
ドッペルゲンガーは交友関係を結んでいる人たちに対して、オリジナルを偽物だと言い張ります。
お友達は騙されないための工夫をしましょう。
また、勝負は戦闘以外でも受け入れる場合があります。
腕力に自信のない方は、違う角度からアプローチをしてみましょう。
アクションの書き方のヒント
原則、ドッペルゲンガーは、あなたのアクションの【行動】部分と同じ行動を行います。
このままだと良くて相討ち止まりになってしまいます。
打ち勝つためには、【心情アクション】が重要となります。
また、必ず【己の信念】をアクション内に明記して下さい。
このシナリオはバトルシナリオの皮を被った心情描写シナリオです。
……とはいえ、相手を打ち倒す手段を、くれぐれも書き漏らさないようにお願い致します。
なお、ドッペルゲンガーは基本的にオリジナルと同じ記憶を有しています。
さらに、オリジナルの無意識の記憶も有していることがあります。
<こんな方にオススメ>
・今まで温めていたキャラクターの熱い想いをぶつける場所が欲しい!
・今までの経験を元に、キャラクターの覚悟を描きたい!
・自分と戦えるなんてワクワクするぜ!
・とにかく、今の自分を変えたい! 乗り越えたい!
マスターより
今回はキレイな乾物を目指しています。
よって、カオスを自重することを宣言します。
ひたすらストイックに皆様の覚悟を描かせていただく所存です。
ただし、厨二病は許可します!
ジャンルを確認していただき、奮ってご参加願います。
皆様の燃える想いを、是非アクションに詰め込んで下さいませ!