寝子島のちょうど中央付近にある、九夜山へと続く道。あまり人通りのないその道には、いつ置かれたのかも定かではない古い地蔵がある。
普段、その道を通る人々が手を合わせる時は、山へ入る際の安全を祈願することが多い。
しかしある日のこと、その地蔵の前に一枚の便箋が置かれていて。
『おじぞうさま、ありがとう。このまえ、おじぞうさまにおねがいしたおかげで、たくさんお友だちができました。いままで学校であまりなかよしの人がいなくてさびしかったけど、おねがいしたつぎの日にいきなり三人できて、いまは十人いじょうお友だちがいます。本当にありがとうございました』
便箋には、子供のものと思われるそんな微笑ましい文章が書かれていた。
その文章は、地蔵の前を通る人々を笑顔にさせた。同時に孤独な少女を救った地蔵に、ささやかな感謝を述べたりする人もいて。
しかしその時はまだ、少女の幸福が地蔵の力のよるものだと心の底から信じた人は少なかったかもしれない。
ただそれからしばらく経った頃、また地蔵の前に便箋が置かれてあり……。
『お地蔵様、このたびはあなた様のお力を目の当たりにし、たいそう驚くとともにとても感謝しております。あなた様に願ったおかげで、今までこの島では一人として出会うことのなかった同行の士に出会うことができました。それも、一人ではなく数人も。彼らは皆、私よりも三、四十歳も下の若者なのですが、私と同じく軍艦を心から愛する者たちで、その熱意や知識には三十年近く軍艦について学んできた私からしても感服するものがあります。今まで軍艦好きの人間になんて会ったことがなかったのにこんなことが起こるなど神の力……いえ、お地蔵様の力以外には考えられません。本当に感謝しております。ありがとうございました』
……そしてまたその後、しばらく経った頃に新たな便箋が。
『お地蔵様、覚えていただいておりますでしょうか。先日、息子のことをあなた様のもとにお願いに参った者です。このたびはお礼に来るだけでは飽き足らず、こんな手紙まで書いてきてしまいました。というのも、なんと数日前、四十を過ぎても彼女がいなかった息子が婚約したと報告してきたのです、お相手の女性は一ヶ月前に出会った方だそうで、一ヶ月前と言えば、ちょうどお地蔵様に「息子に良いご縁がありますように」と私がお願いに参った頃です。こんなことが起こるなんて本当に驚いておりますが、それ以上に感謝しております。息子に良いご縁をいただき、まことにありがとうございました』
それらの便箋を目にした人が、どう感じたかはしれない。
ただ最近、寝子島内に薄くだが、ある噂が広まりつつあった。
『九夜山へと入る道に置かれたお地蔵様に願うと、理想の友達や恋人ができる』という、そんな噂が……。
こんにちは、北見直弥です。
今回は、不思議なお地蔵様をめぐるシナリオをお送りします。
嘘か真かちょっと怪しいお地蔵様ですが、縁が欲しいと思っている皆さん、軽い気持ちでお参りしてみませんか?
こんな友達が欲しい、こんな恋人が欲しいとお地蔵様に向かってつぶやけば、もしかしたらそのうち願いが叶うかもしれませんよ。(あくまで「かも」ですが……)
あるいは、○○さんと友達に、恋人になりたいと具体的に言ってしまうのもありかも……。
というわけでアクションでは、皆さんがお地蔵様のもとへ行き、お願いし、帰るまでの行動、心情をご自由にお書きください。
もしお願いしているところを誰かに見られたら……と不安な人は、人目を忍んでこっそり来れば見られないかもしれません。
あるいは、たまたまお地蔵様を見かけたふうを装って、「今日の夕食に好物が出るようにお願いしておくかなぁ」なんて大声で言いながら、実際は別のことを願うのもいいでしょう。
もしかしたら運がいい人には、同じ時間にお願いに来ていた人と打ち解けてそのまま友達に……なんて展開もあるかもしれません。
なお、これは友達が少ない人専用のシナリオではなく、友達はたくさんいるけどもっと欲しいという方の参加も大歓迎です。
それでは皆様のご参加、心よりお待ちしております。