本棚から分厚い写真集を取り出す。
両手に乗せてもずしりと重たい写真集の表紙を飾るのは、銀色の『月』の文字と深海色の空にぽつんと浮かぶ金色の丸い月。
桜が咲くより前――寝子島高校を卒業するより前に古本屋で購入したその写真集は、猫鳴寮からシーサイドタウンのマンションへ引っ越したとき、ほとんどいちばんに新しい本棚へと移している。
薄野を照らす十五夜に、夜更けの街に降る十六夜、払暁の光にかき消されそうな残月、黄昏の黄金と宵の藍を纏う夕月――さまざまな月の表情を蒐集した絶版本には、あの春の夜に見た真紅の月と同じ月の顔も掲載されている。
(ストロベリームーン……)
湿気を帯びた緩い夕風が開け放った窓から流れ込んでくる。
もうすぐ訪れるだろう梅雨の時期を思わせる風に、
綾辻 綾花はしとりと汗ばんだ額にてのひらで触れた。
今より風が冷たかった三月の頃、
早川 珪と――あの頃は『珪先生』だった彼と見た写真の頁を開く。
他の頁よりも何度も何度も繰り返し開いて眺めた『ストロベリームーン』の頁。
――赤い満月が現れるから『恋を叶える月』って別名もあるそうです
あの日、『珪先生』にそう言った。
本来使われていた『ストロベリームーン』の意味とは違うと知っていて、それでも『珪先生』には後世に付随された別の意味を知って欲しかった。
だって、三月のあのとき、思ってしまったのだ。
――少し先になるけど、六月の月を珪さんと一緒に見れたらいいな
その『少し先』が、今だ。
桜の季節が終わって、綾花と珪は『生徒と先生』の関係を終えた。
瑞々しい葉桜が萌え出ずる頃に始まったふたりの新しい関係を思うと、綾花の頬には桜のような薄紅が差す。
ふわりふわりと赤くなりつつあった頬は、
「……っ?!」
テーブルに置いたスマートフォンが珪からのNYAINメッセージ着信を告げた途端に苺の赤さとなった。
写真集を胸に抱え、飛びつくようにスマホを手に取る。
開いたメッセージ画面には、
――六月九日は空いているかい?
いつも通りの優しい口調と変わらぬメッセージが綴られている。
もちろんです、とすぐさま返信しながら、綾花は顔中で笑う。
(珪さん、覚えていてくれたんですね……!)
その日は綾花の誕生日だ。
――晴れるようだし、月も一緒に見よう
その上、三月の頃に綾花が口にした言葉を――本物のストロベリームーンを前に写真集を捲りたい、という言葉を覚えていてくれたとあっては、
(珪さん!)
思わず写真集もスマホも抱きしめてしまうというもの――
プライベートシナリオのご依頼、ありがとうございます。
ガイドのお届けまでお時間を頂いてしまいました。お待たせいたしました……!
ということで、綾辻さま。お誕生日デート! いたしましょう!
朝いちばんから夜まででも、夕方から夜まででも。お時間も場所もご自由にどうぞ!
ふたりで過ごしたいことをめいっぱい詰め込んでアクションをお書きください。
場所・イベント
☆星ヶ丘植物園『ねこの庭』
星ヶ丘の住宅街にある小さな植物園です。カフェを兼ねた硝子張りの温室とハーブ類を主とした庭園があります。
『ストロベリームーン・ナイト』と称した小規模イベントが行われています。
カフェが夜間特別営業中だったり、『紅い』飲食物が提供されていたり、『紅い』花が飾られていたり。
☆綾辻さんor早川さんのおうち
おうちデートもいいですよね! 朝から晩までずーっといっしょ!
ちょっぴり同棲気分でご近所スーパーにふたりでお買い物とかも楽しいかもしれません。
(舞台となるマンション/アパートの詳細情報がもしあるのであれば
該当シナリオ等をお教えくださいますととても助かります……!)
☆寝子ヶ浜海岸or九夜山頂上展望台
夕方から夜にかけての海岸もしくは展望台からの景色を眺めてのんびりお話も楽しいかもしれません。
夜になると星や夜景もきっと綺麗です。
一応、いくつかの場所をご用意してみました。
が、せっかくのプライベートシナリオです、何処に行かれるのも、
学生の頃は聞けなかったことを改めて聞いてみるのも、ご自由にどうぞ!
参照シナリオ等もありましたら、どうぞお教えください。
登場NPCについて
・早川 珪
桜の季節が終わり、晴れて綾辻さんと恋人となれて、
表面上は大人の男性を装っていますが、内心はどうでしょう……?
ふたりで過ごす初めての綾辻さんの誕生日です。プレゼントも用意している様子です。
・他のマスターさんが担当していない登録NPCやXキャラ、阿瀬が担当している登録・未登録NPCであれば、
不自然でなければ登場が可能です。
・Xキャラクターをご希望の場合は、口調やPCさんとの関係性などのキャラクター設定を
アクションにお書きください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、URLを書いて頂けましたら参照させていただきます。
それでは、お会いできますことを楽しみにお待ちしております。
どうぞよろしくお願いいたします。