「なんか俺ってさ、自分から険しい選択を選んでる気がするんだよナ?」
そう
志波 武道は焚火の番をしている
ティオレ・ユリウェイスに心の内なる言葉を漏らす。
時間帯はとうにてっぺんを回り、深夜1時に差し掛かろうとしていた。
他の仲間は明日のために野宿を余儀なくされ、今は見張りのふたりが起きているという状況。
ティオレは無言のまま武道をじっと見詰めるだけだ。下手に言葉を発して対話するのではなく、ここは聞き役に徹するべきだと彼女は判断した。
「いやいきなりティオレさんにこんなことを言うのも妙なんだけどさ……『今回』の件、俺はどーしても我慢できなかったんだ。俺たちは部外者だけど、妄信的な信仰にもほどがあった。だから……」
項垂れる武道に、ティオレは干し肉と水を差しだして彼を労わる。
「……武道は、間違っていない。むしろ私や仲間は感謝しているよ。しかし、どうしたものかな」
ティオレも日中に起きた出来事を思い返すと、途端に重い頭痛に見舞われてしまった。
――
事の発端は、蛇竜退治を終えた猛者たちが第四階層へ足を踏み入れてしばし経過してからだ。
今回は先導役として
ラピス・D・マクレガーが猛者たちの案内を務めていた。
「ここ第四階層は『騒めく密林』といってな? 貴様らの住む世界ではお目にかかれない、様々な動植物が生息しているジャングルで階層の隅から隅まで埋め尽くされておるぞ。うっかり横道に入ったら、案内役なしでは遭難必至だ。決してはぐれるでないぞ?」
奇妙な動植物に猛者たちは目を輝かせながら、観光気分でラピスの後ろを付いてゆく。
小一時間ほど鬱蒼とした草木を掻き分けていくと、まるで古代文明めいた遺跡の街が突如として目の前に現れた。
「ここが東の賢者の王都『ジェム・リュ・ク』だ! 第四階層は大河を挟んだ東西2つの国に別れていてな? 古代のアステリズムの子孫である東の賢者と西の賢者が互いに切磋琢磨し合いながら治めているのだ」
ラピスの言葉通り、どこか宗教めいた彫像や建築物に猛者たちは目を見張る。
と、ここでラピスは強い言葉で猛者たちに牽制した。
「よいか? 郷に入れば郷に従え、という言葉が貴様らの世界にはあると聞く。ジェム・リュ・クでは賢者が定めた『掟』が絶対である。これは妾でも逆らえぬ絶対的なものだ、くれぐれも波風を立てぬようにな」
ラピスが猛者たちに警告を促す。だが、それは残念ながら守られることはなかった。
最初は武道をはじめとする猛者たちが王都見学をしていたのがきっかけだった。
何やら祭りを執り行うというので、猛者たちは街の人に案内されてゆく。
そこで彼らが視たのは……。
「あれは、影剛石(シャドーストーン)!?」
武道はやけに着飾った褐色肌の少女が抱えている赤黒い石に目を疑った。
彼はそれが何なのかをよく理解してた。
影剛石は『賢者の石』とも呼称される、どんな願望をも叶えてくれる宝石だ。
だが願いを叶えるためには、代償として大量の生き血を吸わせなくてはならないのだ。
当然、願いが大きければ大きいほど、必要となる血液量は増えてゆく。
その少女は色とりどりの花で飾られた祭壇に駆け上がると、そこに祀られていた黄金の短剣を手に取って天へ掲げた。キラキラと輝く刃の先にあるものは、まごうことなき少女自身の肉と皮だ。
武道の身体は次の瞬間、弾丸のように前に飛び出していった。ほとんど無意識の行動だった。
「やめろー!」
少女が笑顔のまま短剣を自分の首筋――頸動脈に添えた瞬間、武道のろっこん「スイ・マー」で少女を昏倒させて自死を防いでみせた。
眠りこける少女を抱きかかえる武道が、唖然としている街の人々へ叫んだ。
「俺たちはそんな事を望んじゃいない! 生贄を捧げるような真似はやめてくれ!」
思わず口から迸った感情。それをぶつけられた住人達は、一気に激怒してしまった。
――
「……んで、結局、王都から追放されちゃって、西へ渡る関所も出禁になっちゃったんだよネー」
「まさか生贄信仰が根付いた土地柄だったなんてね。ラピスが王都に残って説得を試みたが……」
「いやいや、あれ捕縛じゃん……明日、俺たちが弁明しないとラピスちゃん、処刑されちゃうって話じゃん……」
王国側が生贄の儀式を妨害されたことに腹を立て、ラピスの身柄を拘束する代わりに猛者たちは命拾いしたのだ。
故に、明日は強引にでも王都『ジェム・リュ・ク』に忍び込み、神殿に囚われたラピスを救出して西へ渡るべく大河を超えねばならないのだ。
「でもティオレさん? 俺はできれば他の方法も模索できないかな~って思ったりなんかしたり?」
「武道がそれを望むなら試みればいい。交渉するなら東の賢者の元へ行かねばならないよ。どのみち、忍び込むしかないだろうね」
「やっぱそうなるかぁ~!」
「ただ、穏便に済ませたいのなら、潜入時の行動を考えなくてはね。どんなにこちらが交渉を持ちかけようが、ラピス奪還の際に死傷者が出てしまったら、その時点で……」
「……うーん、ぞっとしないな」
ふたりは爆ぜる火花を見詰めながら、同じタイミングで溜息を吐いた。
こうして、日が昇った直後から『ラピス救出作戦』が決行される。
猛者たちはそれぞれ、何を為すべきか考えるのであった……。
ドーモ、乾物こと焼きスルメです。
リゲイン オア ネゴシエイト!
参加者様の行動で、今後の冒険が大きく左右されるシナリオガイドです!
概要
【現在の状況】
武道さんは王都『ジェム・リュ・ク』の祝祭の中で執り行われた『生贄の儀』を妨害したことで、猛者たちは王都を追放されて野宿した後の明朝からスタートです。
ラピスは猛者たちの命と引き換えに身柄を拘束され、24時間後には処刑されてしまいます。
もしもラピスがこのシナリオで死亡しても冒険は続きますが、後味の悪い結果になるでしょう。
ですので、猛者たちはラピス奪還作戦を決行する事にしました!
お尋ね者になった猛者たちは、街の人の目を掻い潜り、東の賢者が住まう神殿の地下牢を目指します。
そこでラピスを救出した後、第四階層のジャングルを掻き分けて大河を渡り、西の賢者の国へ亡命を果たさねばなりません!
ただし、参加者の皆様の行動次第では、この作戦の細部が変更されるでしょう。
東の賢者に会いに行くのか否か、警備兵または街の人達に見つかったらどうするのかなど……。
連携するのが一番ですが、個別行動でもOKです!
(ただし、自分の行動が思わぬ影響を与えることを常々考慮して行動してください)
猛者たちの選択で、文字通り東の賢者の都の未来が変わるでしょう……!
星の力
星幽塔にいると、星の力 と呼ばれる光が宿ります。
★ 基本的な説明は、こちらの 星の力とは をご確認ください。
星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようですが、
このシナリオの中では変化しませんので、このシナリオではひとつだけ選んでください。
ひとともれいびにはひとつだけですが、
ほしびとには、第二の星の力(虹)もあります。
★ 虹についての説明は、こちらの 第二の星の力 をご確認ください。
アクションでは、どの星の光をまとい、その光がどのような形になったかを
キャラクターの行動欄の冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のように書いてください。
衣装などにこだわりがあれば、それもあわせてご記入ください。
衣装とアイテムの持ち込みについて
塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
※【星幽塔】シナリオのアクション投稿時、作物・装備品アイテムを所持し、
【アイテム名】、【URL】を記載することで、
シナリオの中で作物(及びその加工品、料理など)・装備品を使用することができます。
※URLをお忘れなく!!!
※オーダーメイド装備品について
鍛冶工房のトピックを経る(またはシナリオなどで得る)場合のみ
アクション冒頭で指定した星の力とは別に、装備品固有の《特殊効果》が認められます。
アイテム説明欄に、トピックでの完成時の書き込みURL・シナリオ入手時のURLを記載してください。
例:http://rakkami.com/topic/read/2577/2116
それでは、皆様のご参加をお待ちしてます!