霊界の風は今日も乾いていた。どこもかしこもってわけじゃあないが、少なくとも街のあやかしどもはこの赤い砂塵を好んだ。かぎなれた故郷の空気ってのはいいもんだ、生者もあやかしもそこのところは変わらない。
そのとき
ペンシルは鼻先をひくひくとさせ、崖の上から街を睥睨していた。新たな稀人の気配を風の中にかぎ取って、品のよい毛並みをなびかせながら眼下を見据えていた。
ペンシルが尾に握る杖は街の象徴だ。ひと振りすればその姿は瞬間、崖の下、赤茶けた街の中心にあった。見事な腕前だろう? ペンシルが千の魔法を操ると言われているのは、実のところ本当のことだ。
広場にはすでに住人たちの姿があった。
「ああ、ペンシル。あんたも来たんだね。物見高いこったよ」
夕顔 サキがペンシルを振り返り、いつものニヤケ顔を浮かべた。人のことが言えたものか、街の連中などこぞって客人を出迎えに集っているではないか。
占い師の夕顔が先に告げたとおりだ。かのネコジマからの来訪者が、どうやら商店街を訪れるらしい。
「さーて、僕好みのカワイイコはいるかなぁ? 楽しみだねぇ」
「……人間たらしもたいがいにしいや。そのうち刺されんで、アンタ」
「願ったりかなったり、大歓迎だよそれ」
白檀 カオルに
山田 エレキはいつもの調子で軽口を叩き合い、
犬塚 ハウルはさて……ああ。そこにいたか。いつものように遠巻きから眺めていた。
霊界の風は決して慈しむような穏やかさを持ちはしないが、そのときは誰もが砂塵に混じりこむ、黄金色の希望の粒を目にしていた。あのペンシルでさえ髭をふるわせ、おさえがたきをおさえていたのだ。
「ここはどこだ? ふむ、興味深いね」
かくて予言のとおり立ち現れた
卵城 秘月の姿に、街の面々は大いに湧きたったものだ。
ペンシルの上げた高いひと鳴きは歓喜の色を乗せ、乾いた空へと遠く、遠く響いてゆく。
そういうわけで、諸君。これは魔法商店街の面々を語る物語でもあり、君たちを語る物語でもある。
願わくはこの邂逅が、たがいにとって実りあるものであればよいのだが、ね。
墨谷幽です。よろしくお願いいたします~。
卵城 秘月さん、ガイドにご登場いただきましてありがとうございます。
ご参加いただける場合は、どうぞガイドのイメージにこだわらず、自由にアクションをお書きくださいませ~。
霊界を舞台に、三話~程度のミニシリーズとなる予定です。
若干のホラー要素を含みます。
このシナリオの概要
霊界のとある商店街へ現れたあなた。
今回は、ここへ住まう人々の暮らしに触れ、あやかしの日常へ迫るお話となります。
舞台は、霊界のどこかにある『魔法商店街』。
数百メートルほど連なるアーケード街と、その周囲に民家が建っています。
街の周辺は赤茶けた荒野が広がっていて、なんだか西部劇のような雰囲気です。
住まうあやかしは種族も年齢もいろいろですが、いずれもなんらかの魔法を修めた『魔法使い』であるそうです。
皆さんは、彼らから魔法を学ぶことができます。
学んだ魔法はこのシナリオシリーズ内で活用でき、
次回以降のバトルやミッションなどで役に立つ可能性があります。
魔法を学ぶには、街の著名な魔法使いたちに師事し、教えを受けましょう。
いずれも個性的で癖のあるあやかしたちなので、苦労するかもしれませんけれど。
なお、街はなんらかのトラブルや危機に直面し、救いの手を求めているようです。
詳細は不明ですが、街の人々にたずねてみれば、なにか分かるかもしれません。
アクションでできること
観光気分で、魔法商店街や霊界の雰囲気を気ままに楽しむもよし。
お店でなにか珍しいお土産を物色してみるもよし。
あるいは街のあやかしたちと交流し、魔法を学んでみるもよし、です。
以下に、師事できる魔法使いたちを紹介します。
なお、彼らの多くは人の姿をしていますが、下記に掲載されている情報はあくまで"自称"であり、
必ずしも正しいとは限りません。
交流を深めるうち、彼らの本当の正体が明らかになってゆく……かもしれません。
◆『ペンシル』 種族:猫?
顔に口ヒゲのような模様がある、ちょっとふてぶてしい猫。言葉はしゃべりません。
尻尾に杖を握っており、七色の魔法を操る偉大な魔法使いとされています。
決まったすみかはなく、街の内外を歩いている姿をよく見かけることができます。
皆さんはまずペンシルに師事し、魔法の基本中の基本を学ぶことになります。
☆学べる魔法:"リセット"の魔法
◆『山田 エレキ』 種族:電気の妖怪
関西弁を話す、ちょっとダウナーな少女。ぶっきらぼうですが面倒見はいいほう。
人間の世界で、電線を流れる電流の中に生まれた、新しいタイプの妖怪だそうです。
商店街で電気屋を営んでおり、主に付喪神となった電化製品を売っています。
NINKYODO FNYATCHの付喪神をオトモに連れていて、暇さえあればひとりで遊んでいます。
☆学べる魔法:"致命"の魔法
◆『犬塚 ハウル』 種族:狼男とひとのハーフ
黒髪ロングヘアのウルフカット。クールな一匹狼……というか、シャイな青年。
珍しい人間とあやかしのハーフで、苦難に満ちた人生を歩んできたようです。
他人との交流を好まずとっつきづらいですが、心を許した相手に対しては義理堅い一面も。
商店街の土産物屋に居候しており、売っているアクセサリやインテリアなどは彼の作品です。
☆学べる魔法:"変質"の魔法
◆『白檀 カオル』 種族:香水びんの付喪神
落ちついた理知的な雰囲気を漂わせる青年。その実かなり軽薄で軟派な性格をしています。
人を食った態度や飄々とした言動でケムにまく、いまいち信用ならない人物ですが、
天才肌で多様な魔法を使いこなす、ペンシルに次ぐ魔法の達人です。
霊界に咲く植物を使った香水を売っています。
☆学べる魔法:"解析"の魔法
◆『夕顔 サキ』 種族:化け狐
老成したしゃべり方の女性。幼い少女、ギャル、老婆などいくつもの姿を使い分ける変化の名人。
寝子島と魔法商店街をつなぐ役割を担い、彼女の営む秘密の雑貨屋は、どちらにも同時に存在しています。
占い師としての顔も持ち、タロットを操り、時として重大な未来を言い当てることもあるのだとか。
気さくな性格なので、困ったときにはあれこれと世話をやいてくれるでしょう。
☆学べる魔法:"予言"の魔法
※あやかしさんは、商店街を訪れたことがあったり、住人と知人だったりすることにしてもOKです。
NPCについて
登録済みのキャラクターでしたら誰でも登場可能です。
また、墨谷のシナリオに登場したNPCでしたら、登録・未登録問わず登場OKです。
ただし、不自然でないシチュエーションに限ります。登場が難しい場合もありますので、ご了承ください。
Xキャラクターも登場可能です。
口調などのキャラクター設定は、アクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
なおこのシリーズにおいては、既存の登録NPCとの交流要素はやや薄めになります。
シリーズならではのお話やシチュエーションを主にお楽しみいただけましたら幸いです。
以上になります。
どなたでもお気軽にどうぞ。
それでは、ご参加をお待ちしております~!