冬休みは、どんな楽しい思い出を作ろう。
そう浮かれていた
綾辻 綾花の出鼻を挫いたのは、
クリスマスだった。
突然というわけでもない。
早川 珪には明確な言葉こそ口にはしていないが、想いを伝えてきた。その上で緩やかに関係を深められていると……少なくとも綾花は思っていたから、あんな行動に出たのだけれど。
(やっぱり、あれは)
避けられたのか、そうでないのか。気にはなりつつもピタリと止まってくれる想いでもない。
だから綾花は、受験勉強を口実に珪と会う時間を作った。彼と同じように司書になりたいことも伝えてあったし、どうしても珪でなければならないのだと伝えれば無碍にされないとも思った。
何より、こうして落ち込んでいる間にできることが、やらなければならないことがたくさんある。
(約束したんだから、勉強もがんばらなくちゃ)
「それじゃあ、綾辻さんには簡単な復習になるかもしれないけど」
「基本は大事ですよね、今日はよろしくお願いします!」
2人が訪れたのは、木天蓼大学の本部キャンパス。もちろん目当ては、一般開放されている大学付属の図書館だ。
寝子島高等学校の図書室とは比べものにならないほど広く、図書館の蔵書も桁違い。そして何より、数年前までここに珪が通っていたのかと思うと、綾花も興味が人一倍湧いてしまう。
「図書館にも色々と種類があって……」
キャンパスの中を案内しながら、市立や県立の図書館との違いなどを説明する珪は、とても『先生』の顔をしていた。
司書になるための勉強がしたいと言ったのだから、この指導は間違っていないし、嬉しく思う。
……ただ、もうちょっとだけ。
(デートっぽくても良かったんだけどな)
口実選びを間違えたのだろうか。それとも、理由が弱かったのだろうか。
今日だって本当は、珪の部屋に行きたかった。なのに、クリスマスのことが気になってそうとは言い出せないまま、こうして『勉強』という願いだけ叶ってしまっている。
(もしかして、何か隠したいことがあるとか?)
料理や簡単な掃除で部屋の物を触らせてもらうことはあるけれど、それでも入れない部屋はあるし、勝手に引き出しを開けることも無い。
そういうところに隠しきれない何かを、珪が持っている? まさか、彼に限って。
「っと、ごめん。電話……」
相手の名前を見て眉を顰めた珪は、消音モードにしてスマートフォンをしまい直そうとした。が、それを許さぬとばかりにスマホは着信を知らせるランプが光り輝いている。
「私のことなら、お気になさらず」
「ごめん、手短に済ますから」
数歩離れた先で通話を始めた珪に、聞き耳を立てるのも悪いかなと思いながら、綾花は学内の掲示物を見た。
さまざまな学部や同好会などのお知らせは、今の綾花に関係あるものはないけれど、端っこのほうにはカフェテリアや図書館といった、一般開放されている施設の利用についてがまとめられていた。
「だから春には帰るって……」
珍しく、珪が少し砕けた口調で話している。帰る、ということはご実家からの電話だろうか。
年末年始は寝子島にいたし、この正月は顔を出さなかったのだろう。であれば、こんなやりとりも頷ける。
「それは断ってるだろ。考えてないんだ、見合いなんて――」
(え?)
見合い。その言葉に反応して、綾花は思わず珪を見る。それと同時に、「しまった」と言いたげな珪もまた、綾花を見ていた。
もしかして珪が今日、部屋に入れてくれなかった理由と関係しているのだろうか。
「とにかく、今は人と一緒なんだ。あとでかけ直すから」
なかば無理矢理会話を押し切った珪は、何を言ってもいいわけがましくなるのを覚悟して、綾花に掻い摘まんで話そうとした。
「あの、本当に断っているんだ。そこは勘違いしないでくれるかな」
「じゃあ、春にはご実家に帰るっていうのは本当ですか?」
それもいいと思う。
転々としていたって、家族のいるその場所が珪にとって寛げる場所だろうし、ご両親と顔を合わせて話す時間はあったほうがいい。
でも、そこにはまだ、綾花は立ち入れない場所だ。
「春なら、寝子島にご招待するのもいいですよね!」
桜がいっぱいの九夜山を散策したあとは展望台から海を見下ろして、寝子温泉で身体を休めるのもいい。
色とりどりの花が咲き乱れたエノコロ岬ではご両親の末永い睦まじさを願い、珪の職場である寝子高を案内するのもいいだろう。
(もしかしたら春には……)
2人は交際しているかもしれない。そうであったなら、不自然なくご両親を案内することができるだろうか。
まだ学生の時分であったなら、とても慕っている生徒としてになってしまうだろうが……「お嫁さんに」なんて言ってもらえるような素敵な気遣いができないだろうか。
そういうことを考える余裕が出てきて、自然と綾花から笑みが零れる。その様子に、珪はホッとした。
あともう少し、されどまだ遠く。
今このときしかない時間を、どう過ごそうか?
リクエストありがとうございます、浅野悠希です。
こちらは、綾辻 綾花さんのプライベートが満載なシナリオです。
概要
■日時新年を迎え数日、冬休み中の出来事です。
お昼頃から早川先生が心配しない時間まで、のんびりお過ごし頂けます。
■状況
現在、2人は木天蓼大学の本部キャンパスにいます。
ここまでは早川先生の愛車で来ており、自由に移動が可能です。
ちょっと気になる話題を耳にしてしまった綾辻さんと、距離感に迷っている早川先生。
このまま『勉強』をするか、楽しい『デート』で気持ちを切り替えるか、それとも……?
■できること
・各種図書館を巡って違いを勉強する
・寝子島の資料を集めて観光プランを考える
・折を見てお部屋に行きたいってぶつかってみる!
などなど、ガイドに縛られず自由にアクションを書いて頂ければと思います。
もちろん申請いただきました内容も、描写可能ですのでご安心くださいね。
NPCとXキャラ
今回登場とお伺いしてますのは、NPC:早川 珪
早川先生は何か、考えていること、迷っていることがありそうです。
綾辻さんに素っ気ない態度をしないようにと十分気をつけてはいますが、距離感がまだ難しそう。
普段と様相が違うことに気づいたなら、綾辻さんから手を差し伸べてみましょう。
彼の悩み(本音)が、少し聞き出せそうです。
※独自ルール※
参照シナリオ、アイテムの持ち込み、Xキャラの情報をアクションに記載する際、 短縮表記が可能 です。【参照シナリオについて】
他のシナリオ、コミュニティなどの描写や設定を参照することは、原則的には採用されにくいとなっています。
・事実を確認するだけで良く、深い読み込みがいらないもの
・どうしても前提にしてもらわないと困るもの
これらに関しましては、できる限り参考にしますので『URLの一部』をお知らせ下さい。
【例】シナリオID3242の9ページと、トピックID2853の181番目の書き込みを参照依頼する。
- T/2853/181の結果を受けてS/3242?p=9で●●を成功しました。●●の情報はある前提の行動です。 -
など、シナリオを『S』としたり、トピックを『T』としたり短縮表記で大丈夫です。
IDから該当ページまでのURLは省略せず、そのまま提示して下さい。
・過去参加して頂いた浅野のシナリオに関しても、記憶違いを避けるためにご協力頂けると助かります!
・必須じゃないけど知っておいて欲しいなという事柄については、余力があれば確認させて頂きます。
【アイテムについて】
カプセルギアなどアイテムを持ち込む際、指定単語と共にマイリストIDまたはアイテムIDを記入してください。
【例】牧 雪人が『【カプセルギア】ボナパルト2』を持ち込む場合
CG/206 ……と記載してください。
・カプセルギアを『CG』、その他マイリストを『ML』、アイテムを『I』と記載して下さい。
※なお、アイテムやマイリストは、アクション送信時の情報が保存されません。
執筆期間中に編集を行うと、アクションと齟齬が出てしまう可能性があります。
投稿締切から1週間は、該当のアイテムやマイリストを編集しないようにご協力ください。
【Xキャラについて】
Xキャラ図鑑はトピックなので、参照トピックと同じ手順で短縮可能です。『URLの一部』をお知らせ下さい。
X/2892/(書き込み番号) をお知らせ頂くか、
またはイラストページに補足がある場合はXI/(イラストID)も合わせて記入してください。
※浅野の独自ルールのため、こちらは他MSへ対応を迫る行為はお控え下さい。
それでは、よい1日をお過ごし下さいね!