When Jesus heard that, He said,
"This sickness is not unto death, but for the glory of God,
that the Son of God may be glorified through it."
――――――From "The Gospel According to JOHN" Chapter 11
【殺人鬼は語り掛ける】
伽藍堂のオペラハウス。
誰もいない舞台を、見渡す限り無人の観客席で彼は彼女に話し掛ける。
「旧約聖書は読んだことあるかな? 新約聖書でも構わないよ」
白亜の殺人鬼、怪人セブンこと
芽森 菜々緒――もとい七男が隣に座る女性に尋ねた。
女性――レディ・ロゼッタは鎖で肢体を縛られ身動きが取れないが、首から上は拘束されていないので会話は可能である。
だが、ロゼッタは何も答えない。
七男は構わず彼女に語り掛けた。
「旧約聖書『サムエル記上』の18章28-29節、そしてヤコブの手紙3章16節。この2つに共通するものは何か? 分かるかい?」
上機嫌の七男はロゼッタの返答を待たずに答え出す。
「嫉妬だよ、嫉妬。まさかぼく自身が罪を妊むことになろうとはね。でも、ぼくの罪はまもなく、このあとの禊をもって清められるだろう。正しい行いだったと証明できる……。ののこ様もお喜びになるだろう」
ロゼッタは何も答えない。
その目は虚ろで、焦点が定まっていない。
物言わぬ彼女の顔を見遣る七男は、ニヤニヤと顔を近付ける。
「ぼく、実はお姉さんみたいな人、すっごく大好きなんだよね。美人で、知的好奇心旺盛で、使命感に突き動かされて生き急いじゃう。そんなお姉さんを見てるとさ、じわじわと真綿で首を絞めたくなっちゃうんだ……」
いっそ食べてしまおうか、と殺人鬼は犬歯を見せて笑う。
だが、ロゼッタの反応が全くない事が分かると、興が醒めたのか顔を離した。
「……つれないなぁ。ま、お姉さんは今回の『歌劇』の大事なキャストだ。しばらくそのままにしてあげるよ」
おい、と洗脳したもれいびの若い女性を呼び立てると、ロゼッタの顔に白い仮面を被せた。
すると突如、
レディ・ロゼッタと女性の姿が消えてしまった。
「これで準備万端だね」
七男は満足げに『誰もいない』観客席を眺める。
「ここの警備はキミに任せる。『死んでも』守り抜け。いいね?」
若い女性は無言で頷いた。
そして七男は一旦オペラハウスの外に出ると、愛用のハンターナイフをホルダーから抜き放つ。
「さぁて、まもなく正義と絶望渦巻く『審判の日』が開演する。まずは『招待状』を用意しないとね」
七男の眼前には、いかにも風体の悪いチンピラ男がいた。
その男から、常人とは違うナニカが醸し出されている事を七男は見逃さなかった。
もれいびの『匂い』――異能の気配と、悪意を抱く者の『瘴気』――。
実際、その男は近隣住民から忌み嫌われる札付きの不良で、昔から何回も警察の世話になっていた。
七男はそんな男の素性は知らないが、行動や雰囲気、『匂い』などで人物像を捉えた。
経験上、この目利きが外れた試しがないと彼は自負している。
「ははは――、早速『招待状』が歩いてきた。ツイてるなぁ!」
七男はナイフを突き立てたまま無垢な笑顔で男性に駆け寄ると、丁寧に挨拶した。
「こんばんわ、もれいびさん?」
「お前、なんでその事を、ってヒッ!?」
「そして、
さようなら」
白い死神は優しく男に微笑みかけた。
後日、ネットに地面に転がった男性の画像がアップされる。
男の上半身に着衣はなく、青い油性ペンで書かれた『7』でびっしり覆われていた。
そして、その手にはメッセージカードが……。
Dear fucking "MOREIBI" perverting fire of God !!
I am happy to announce that I am executing a large number of criminals.
The moment when the world changes without passing over !!
Therefore, SEVEN the phantom requests the pleasure of you at a hopeless-opera.
Please feel free to invite your friends.
But...it is necessary for you to look for a meeting place.
【灰猫は警告する】
君たちの行く手前を遮るように灰猫のらっかみ、
テオドロス・バルツァが立ち塞がる。
「……行くのか?」
諦観の念を感じさせる彼の表情。
それでも君たちの決心は揺るがないだろう。
「……人間同士のいざこざに俺は首をつっこむ義理はねぇよ。だがな、これだけは言っておく」
テオは先ほど確認した『オペラハウス』の入口を思い出しながら告げた。
「あそこで死んだら戻ってこれねぇからな。よく覚えておけ」
死ぬ、という言葉に一同は嫌が応にも喉を鳴らす。
「いいか、ボロボロになってでも必ず生きて帰って来い。ののこを、泣かせたら承知しねぇぞ……?」
そう言ってテオは走り去っていった。
これから向かうは嫉妬に狂う鬼の棲家。
覚悟ができたら、迷わず突入せよ!!
その行いが正しいと思うのならば、決して躊躇うな。
人間、いつかは死にます。
ならば自分より秀でている他者を妬んで蹴落としたとしても、
死という概念の前では平等なのではないでしょうか?
だったら、今はひたすら歌いましょう。
狂ったように踊りましょう。
形振り構わず足掻きましょう。
他者を羨み凶器を手に取りましょう。
それが誰かの手のひらの上での出来事だと分かっていても――。
難易度:絶 望
※難易度については、焼きスルメのマスターページ参照
※この難易度は、乾物のシナリオのみに適用されるものです。
【過去の七罪シリーズ】
※第1部※
<序 幕・原罪>怪人セブンの邂逅
<第1幕・憤怒>怪人セブンの断罪
<第2幕・傲慢>怪人セブンの正義
<第3幕前編(番外編)>芽森菜々緒の友愛
<第3幕中編(外伝)>レディ・ロゼッタの運命考察 ※清水るねマスターとのコラボシナリオです!
<第3幕後編(本編)・嫉妬>このシナリオガイドです。
【目的】
???
(何を以て勝利条件とするのか、皆様のアクション次第である)
※相談時、決めておくと勝率が上がるかもしれません……。
【概要】
・ネットにアップされた七男からの『招待状』。
関係者たちはこれに応じる形で七男の居場所を特定した後、
直接乗り込んで七男との決戦に臨め。
(ただし、参加者全員が乗り込む必要はない)
・七男は現在、『オペラハウス』に滞在中。
・『オペラハウス』内ではレディ・ロゼッタ以外のもれいびが人質となっている模様。
・画像がアップされたのは金曜の深夜。
・調査アクションを掛けることで新たに行けるようになる区画も存在する。
(例:隠し部屋の鍵など)
・重要:PL情報は調査・検証アクションで初めてPC情報化される。
ただし、『何処を』『どのように』調べたかが重要となる。
・オペラハウス内の各区域間の移動時間は5分前後である(※)。
1つのアクション(戦闘・調査など)で20分前後経過(※)。
時短アクションは積極的に採用する。
ここから下記は全てPL情報(PCの皆さんの知らない情報)です。
アクション記入の際には、PL情報とPC情報を混同しないよう注意されたし。
【世間話】
『土曜日から天気がぐずつき、日曜日は昼から夜間にかけて雨が降るでしょう』
(金曜夕方の天気予報より)
『夏本番を迎え、酷暑の寝子島で酒類が飛ぶように売れているようです』
『レジャーシーズン本番、スポーツ用品も売れ行き好調です』
『今年は有名選手の活躍の影響で、野球とゴルフに人気が集中しているようです』
(ニュース番組より)
『オペラハウス内は他のお客様のご迷惑になるため、携帯電話のご利用はご遠慮下さい』
(???)
『一蓮托生』
(四字熟語)
【オペラハウス】
七男が偶然発見した、限りなく寝子島と異空間に隣接した特異点に存在する施設。
彼はかねてからここをアジト兼もれいび収容所として利用してきました。
失踪したもれいびたちは全てここに連行されています。
一般人(ひと)には目視すらできませんが、もれいび(または霊感強い方)は認識可能。
ただし、入館には『条件』を揃える必要があります。
入ったら最後、出口はありません。
外へ出るためには七男に会う必要があります。
七男は『マスターキー』を所持しており、無条件で自由に出入りが可能です。
ただし、『マスターキー』が通常の鍵の形をしているとは限りません。
推理次第では、あなたたち自身が『マスターキー』を発見することも可能かもしれません。
館内には時限爆弾が至る所にセットされています。
PCの皆様が到着してから3時間後(※)に爆発するように設定されています。
解除するためには、3つの起爆装置を停止させなければなりません。
そのためには、起爆制御装置へ数字3桁のパスを入力しなければなりません。
オペラハウスにはパソコンが3台あります(下記参照)。
それぞれボイスチャット機能が搭載されており、情報のやり取りが可能です。
施設内の仕掛けは連動しているため、どれか1つに集中するとクリアは絶対に出来ません。
<Tip>
・オペラハウスと寝子島の時間の流れは異なります。
『寝子島1日分=オペラハウスの24日分』
(※)館内時間換算と考える。
・テオは事件に手を出しませんが、どこかで様子を伺っているかもしれません。
アクション記入時、必ずご希望のルートを明記して下さい。
明記されない場合、オペラハウスへ乗り込むことは出来ません。
【オペラハウス内の構造】
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<方角>
南→北
A→B→C
D→E
F→G→H
IとJはどこにあるか不明
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<A:西館エントランス>
受付にパソコンがあります。
Dへは透明の壁に阻まれて行けません。
壁には「オペラハウスで」と真横に落書きされています。
何故かその近くに小さく『酢=死す』『炉=キオ』と書かれています。
<B:展示ホール>
七男が書いたと思しき縦長の掛け軸が掛けられています。
掛け軸には『君と握手』と書かれています。
その他、壺やビスクドールが飾られています。
<C:赤黒い部屋>
何が行われていたか容易に推測できてしまう部屋。
部屋の中に一通の封筒が落ちています。
以下、その中身。
『柿・猫・ヒ素・点線・世話・否認権を』殺して、破滅に向かう砂時計を止めろ。
一定人数が足踏み入れると扉が閉まり、出られなくなります。
この部屋の鍵は施設内の何処かに隠してあります。
<D:正面エントランス>
AとFへは神魂の影響からか、見えない壁が存在しており行けません。
(お互いの姿は確認できますが、音声は届きません)
受付カウンターにパソコンがあります。
ボイスチャットを介して七男と会話が出来ますが、
PL側からの質疑応答には無反応です。
七男から小ホールの開錠暗号記されたtxt.ファイルが提示されます。
キハユデアペシスユウアデシス
トスキデシストペアデアオアスユラ
ユデクラミハシデシス
ミデシウミオミウシスシウ
ユハキスユデアハアオユハトス
「ぼくの殺意は、『君たちの一歩先を行く』」
開錠すると、拳銃(S&W M37)が2丁手に入ります。
弾はそれぞれ1発のみ装填されています。
これらを使って『ある行動』を行うと……?
<E:小ホール>
小ホールの扉は施錠されている上に高圧電流が流れています。
解除するためには、Dのモニターへパスワードを入力する必要があります。
パスワードは『ひらがな』入力です。
入力失敗すると感電します。
ロゼッタは小ホール内に居ますが、護衛のもれいびが多数存在します。
小ホールは前列席、後列席、2階のボックス席が存在します。
収容可能人数は400名。一般的な舞台装置を備えています。
起爆制御装置の1つがロゼッタの体に括りつけられています。
ロゼッタは護衛もれいびによって透明化されているため、
場当たり的な行動は時間の浪費に直結し、爆弾解除が難しくなります。
七男の思考(嗜好)を読み取りましょう。
<F:東館エントランス>
受付にパソコンがあります。
Dへは透明の壁に阻まれて行けません。
数々の有名な絵画が掛けられています。
恐らく七男の模写と思われます。
その中に1つ、『5人目と10人目と29人目は涙を零す』という題名で、
額縁だけの絵画があります。
<G:トイレ>
11人の小人の人形が飾られています。
様々な大罪をモチーフにしたオブジェのようです。
11人目だけ身を屈めています。
人形は手に取って調べることが可能です。
<H:石像の間>
巨大な裸の中年男性の石膏像が待ち構えています。
胸元に起爆制御装置が埋め込まれています。
(一目見れば分かるようになっております)
一定人数が足踏み入れると扉が閉まり、出られなくなります。
また、石膏像は神魂の影響を受けており、侵入者を襲います。
石膏像を破壊した後、起爆制御装置を止めることにより脱出できます。
<I:大ホール>
何処かにある大ホール。
辿り着くためには綿密な調査と大胆な推理が必要です。
収容人数1200人。
かなり強力なもれいびたちが集結しています。
七男はここにいます。
怪人セブンは体に起爆制御装置を括りつけています。
ありとあらゆる最悪の事態を想定しなければ打ち勝つことは困難でしょう。
ただし、うまく行動すれば、50名全員が大ホールへ辿り着くことも可能です。
<J:留置所>
何処かにある人質を収監する場所。
全員、ろっこんを悪用する犯罪者ばかりです。
牢には鍵が掛かっていますが、ここに来ることができたのなら牢の開錠は容易いでしょう。
しかし、あなたたちは人質を助けてもいいですし、見捨てても構いません。
【起爆制御装置】
外見はタブレットPC。
アプリによって時限装置のON/OFFが可能。
正規の手順以外で停止させると、時限爆弾のカウント速度が1台につき2倍速になります。
全部エラーになると8倍速に!
停止させるには、起爆制御装置へ数字3桁のパスを入力しなければなりません。
【その他】
このシナリオはPCが重傷以上を負う恐れがあります。
寝子島に戻っても負傷箇所はリセットされません。
ご参加の際は、その点をあらかじめご了承の上でお願い致します。
リアクション返却までの間、他のシナリオへは問題なく参加可能です。
【アクションの書き方のヒント】
・GAを活用し、要相談。
・指揮系統など、連携がモノを言うシナリオです。
・役割分担は大事。人間の出来ることは案外と限られています。
・推理し、心情を読み取り、然るべきモノを暴きましょう。
・NG行為がある場合、明記願います。
(ただし、負傷度合いは考慮致しません)
・生き延びたい場合、最低限の自衛手段は考慮願います。
(より詳細なアクションほど、生存率は高くなります)
【マスターより】
目の前の情報だけが全てだと思わないほうが身の為でしょう。
乾物こと焼きスルメです。
遂に七罪シリーズ第一部『ナナオ編』の完結シナリオです。
難易度は『絶 望』、シリーズ最高難易度です。
※難易度については、焼きスルメのマスターページ参照
いつも以上に周波数高いデモニックで猟奇的な殺伐電波シナリオをお届けします。
よろしくお願いします。
今回は、文字数がPCの行動力に直結します。
曖昧な表記(『○○を調べる』のみ、など)はマイナス方向へ判定します。
文字数目一杯に詳細をお書き頂きますようお願い致します。
GA(グループアクション)による連携と役割分担を最大限に活用しましょう。
ただし、GAは他人のアクションを指定できません。
必ず自身のアクションのみを記入願います。
このシナリオは、その辺りをシビアに捉えていく所存です。
何卒あらかじめご了承下さいませ。
さぁ、決戦の時です。
伏線は全て、過去のあらゆるシナリオに置いてきました。
全ての点が、今、1本の線となって繋がります。
そして更にその先を見通して下さい。掴み取って下さい。
番外編、外伝を挟み、遂に『嫉妬』が牙を剥きます。
何を救い、何を守り、何を打倒し、何を裁くのか?
それを決めるのは、皆様次第です。
とうとう賽は投げられた。
存在証明の意味を答えよ。
戦うための理由を求めよ。
救済のための犠牲を欲せよ。
光なき絶望を、打破せよ。
どんな結果であれ、ナナオを笑顔にできるのは、あなただけしかいません。