寝子島某所にあるダストちゃんのお店。
そこは疲れた人々の憩いの場である。マッサージで心も体もほぐし、人々に活力を与えるそんなお店だ。
「ダストちゃん、今日もありがとう。これ、少ないけど取っといてよ」
「あはは、貰えませんよぉ、でもでも、どうしてもっていうならぁ受け取っちゃいますかねぇ」
店先で黒髪青眼の女性、ダストが中年と思わしきおじさんに体を引っ付けている。
彼はお店のお客様であり、彼女の店に通う常連さんだ。
胸をむにっと押し付けられ、まんざらでもない様子。鼻の下はのびのびである。
「いやーっはっはっは、こっちは大分ご無沙汰でね。裏オプションのお礼も兼ねてるんだ。それじゃ、また来るね」
「はぁーい、またのご来店、お待ちしておりまぁーす」
笑顔で手をふりふりするダスト。そして、その背後に迫るよく似た姿の女性。そう、ツクヨだった。
彼女はダストとその見た目の違いはほぼ色だけだ。
なぜなら、とある事件にてダストはツクヨの姿を大変気に入り、彼女の姿を模して自分を構成しているからである。
金髪紅眼で肌色は普通の人と変わりがないツクヨに対し、ダストは黒髪に青目、肌は褐色肌だ。パッと見、姉妹に見えなくもない。
「まだ裏オプとかやってるんですか、あなたは! いい加減、その姿でアレなことするのやめて欲しいんですけどねぇ」
「ええー好評なんですよぉ? ツクヨちゃんには手が出せないから、ダストちゃん助かるぅって。妹みたいで可愛いって言われてますしぃ」
妹と口走ったダストの言葉で何かを思い出し、ツクヨの頭に怒りマークが浮かぶ。イライラが募ってくるのには訳があった。
「妹で思い出しましたけどねぇ! 何かと私の妹って言わないでくれますぅ!? やれ妹ちゃんが来たよーとか、妹ちゃんによろしく、とか言われる身にもなってくださいよ!」
「いいじゃないですかぁ、おねーちゃん?」
ぞわわっと鳥肌が立ったツクヨは頭を抱えて唸る。
妹と考えればいいのだろうが、顔は自分と瓜二つ。そんな顔で自分が言いそうにないこと言うのだ、彼女の苦労も分かるだろう。
「それでぇ、ツクヨお姉ちゃんはぁ、何しに来たんですかぁ?」
「お姉ちゃんって次言ったら首飛ばしますよぉ? はぁ……最近、ここいらで妙な不定形魔獣の目撃証言があるんですよ。一応の注意喚起って奴ですねぇ」
ツクヨがあまりダストを心配していないのには理由があった。
実際に過去の事件で命のやり取りをした際、ダストは戦闘狂であるツクヨと互角以上に戦ったのである。並の魔獣ならば相手にならないだろう。
「わざわざ心配してきてくれたんですねぇ? 優しい所、あるじゃないですかぁ」
「優しくなんか……ああもうっ調子が狂いますねぇ。とりあえず、注意するようにと。それじゃ私はもう行きますから!」
それだけ言うと、ツクヨはさっさと店の前から去っていく。
ダストは考え込むように顎下に手をやった。ふむむと考え込むさまは何か悪だくみしているようにも見えるが、そのつもりはない模様。
「不定形魔獣ですかぁ……ここは不定形の先輩に話を聞いてみるしかありませんよねぇ」
そうして、ダストがやってきたのはファミレスだ。
件の人物に不定系魔獣についての見解を求める為に、お昼ご飯を奢るからと呼び出したのである。
そうしてしばらくダストが軽く食事をしながら待っていると、やってきたのは
白石 妙子だった。
「あ、こっちですよぉ。やっぱり不定形のお話を聞けるのは、貴女しかいないと思いましてぇ。お忙しい所、すいませんねぇ」
「いえいえ大丈夫ですよ。私でお役に立てることがあればいいんですけど」
ダストから詳しい話を聞いた妙子は不定形ならば移動できるであろう位置をシーサイドタウンの地図に書き記していく。流石はろっこん【スライムレディ】の持ち主。ジェル状になる身体は伊達じゃない。
「ここの家と家の隙間も怪しいですね。相手がどのぐらい不定形か、といった所によりますが……結構軟体なら恐らく行けると思います」
「なるほどぉ、そうなると……法則性が見えてきましたねぇ。これで移動経路はわかりました、それじゃ後は敵の反応に関する調査をしましょうか。手伝ってくれますよね?」
押しの強いダストに完全に押し切られる形で、妙子は調査に半ば強制的に参戦させられてしまうのだった。
そして。時刻は深夜。
暗い路地裏に、女子高生が二人……いや、女子高生の“格好”をした女性が二人。
「あ、あのっこれって本当に必要なのでしょうか!? 結構、その、恥ずかしいのですが!」
「不定形の魔獣はぁ、女子高生しか狙わないらしいですからぁ、誘きだすには最適な格好だと思いますぅ」
妙子は女子高生の服に身を包んだ自分を見る。どう見ても怪しいお店の衣装にしか見せない。誰か知り合いに会ってしまったらと考えると戦慄ものである。
体を腕で必死に隠している恥ずかしそうな妙子とは対照的に、ダストは慣れた風で女子高生の服を着こなしている。彼女が言うには、オプションでそういうコスプレサービスもお店にはあるんだとか。
「さてぇ、どこから来ますかねぇ? 来るなら来いって感じですよぉ」
「うう……早く終わって……ん? 雨?」
ぽたぽたとした水滴を肩に感じ、上を向くとなんと木の上からどろどろの液体が垂れてきている。それは肩に触れるなり、彼女の衣服をじゅううっと溶かした。
「だ、ダストさん! 魔獣です、上から来ますっ!」
「承知しましたぁ、幸い動きは鈍いですねぇ……一撃でノックアウトしてあげますよぉ!」
その手に長剣を作り出したダストは振り被って不定形の魔物【ジェルバスター】を狙った……のだがそれよりも早く、ジェルバスターはダスト目掛けて広がる様に拡散する。
「わぷっ、一体、何がっ、ちょっ妙な所を触らなっ、ひゃううう!?」
服を溶かしていくジェルバスターはダストの身体の上を這いまわっていく。ぞわぞわした悪寒がダストの身体に広がった。
その直後、身体から力が抜けていき、ダストの身体は自由が利かなくなってしまった。
「ぐっ、ああぁ、力が、抜けて……くっ」
服が無くなり、とてもアブない姿になっていくダストを救出する為、慌てて妙子がダストの落とした剣を拾って無我夢中で振り下ろした。
するといい所に当たったのか、ジェルバスターは弾け飛び、それぞれが拡散してどこかへと逃げていく。
ほぼ一糸纏わぬ姿となったダストは妙子の肩を借りて、何とか立ち上がった。形のいいバストが丸見えだ。
「うぐぐ、服を溶かしながら生気を奪うとは……やりますねぇ。来れる皆さんに連絡をお願いします。アレを狩らないと、ここらの女子高生が危ないですからねぇ」
「わ、わかりました。あの、私もお手伝いしますね。子供を持つ親としてはああいう怖い魔獣を放っておけませんし」
「あひゃはっ、ありがたい申し出ですねぇ。不定形のプロがいれば百人力って奴ですよぉ」
こうして、寝子島シーサイドタウンを逃げ回る不定形魔獣を狩る作戦が開始されたのであった。
お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
ダストちゃんシリーズ三作目です。
今回は不定形の魔物が夜な夜な人を襲っているんだとか。なぜか女子高生限定で。
果たして、魔獣を討伐し寝子島の夜に平和は戻るのでしょうか。
それでは皆様のご参加をお待ちしております!
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◆場所
夜中の寝子島シーサイドタウン
:夜も更けてほぼ深夜。明るい所には人の往来もある。
ジェルバスターは暗がりや小さな灯りを好むので、そう言った場所にいるかもしれない。
暗がりを女子高生の服を着て訪れれば……誘きだせるかも。
◆予想される敵
ジェルバスター
:不定形のスライムのような大型の魔物。大きく広がると、人間一人程度なら覆ってしまう。
何体の身体を生かして鞭のように殴ってくる他、取り込む様に覆い被さり、服を溶かしながら生気を奪う。
なお、人体は溶かせないようだ。
かなり柔らかい為、物理的なダメージは効きにくい。
スライムにありがちなコアのような核はなく、液体全てが本体そのもの。
なお、なぜか男性女性問わず、女子高生の服装に目がない模様。
ジェル
:ジェルバスターが自衛のために大漁に生み出した小型分身。
何らかの感覚が繋がっているようで、ジェルが敵を見つけるとジェルバスターに通知される。
本体と同じく女子高生の服装に目がないが、なぜかこちらは女性にしか反応しない。
本体と同じ点として、ひっついて服を溶かしながら生気を奪う点がある。
◆支給される装備
一つだけ選んで持っていくことができる装備。
なお女子高生の服装は希望さえあれば装備とは関係なく、ダストからレンタル可能。
・サムライソード
:ちーあが時代劇を見てそれに影響されて作成した試作刀。
切れ味は良いが刃こぼれしやすく、扱いが難しい物だった。
廃棄品の中にあったので、ダストが了承を得て回収。そのまま改造した。
鋭い切れ味はそのままに耐久が大幅に上がり、ほぼ刃こぼれしなくなった。
デメリットとして長時間持つと怪しい妄想が止まらなくなる精神汚染に掛かってしまう。
精神汚染は1日で治る。
・しびびガン
:電流を放ち、相手を痺れさせることができる銃。
ちーあの試作品らしく、威力は高いのだが数回に一回の確率で自分自身にも電流が流れる。
とある電流ロッドのパーツが流用されて開発されている模様。
・剛腕女子高生
:珍しくダストの開発品。
これを着ると誰でもパワー自慢の女子高生に早変わり。
なぜか女子が着ると全員【巨乳女子高生】へと変貌する。
年齢が当の昔に女子高生を超えていても一時的に若返る優れもの。
男性が着ると、なぜか貧乳美人女子高生へと変化する。
変化の効果時間は着ている間だけ。脱ぐと戻る。
◆登場人物
ダスト
:黒髪青眼の女性。巨乳。
寝子島に住み着いた悪魔だが、今は平和に暮らしている。
マッサージ店を営んでおり、結構繁盛しているんだとか。
店にくるお客さんや、その娘たちを守る為、討伐に参加している。