そのお店『somnium(ソムニウム)』は、シーサイドタウン駅から少し離れた、ちょっと裏路地のような、けれどもどこか洒落た雰囲気を持つ通りの一角にある。
取り扱っているのは色んな雑貨や、アクセサリー。それから店主夫婦が毎日心を込めて焼いている、焼き菓子やケーキの類。
雑貨類は店主夫婦が気に入ったものだけを取り寄せたり、時には手作りをして売っているとかで、素朴だけれども優しい雰囲気のものが多い。それはともすれば、売り物ではなくそれ自体が店を彩る装飾にも感じられる。
――のだけれども、ここ数日はちょっとだけ、その様相が変わっていた。というのも、その手作り小物やアクセサリーをいつも作っている店主夫妻の奥さん、伊都子(いつこ)さんが手に怪我をしてしまったのだ。
最近、伊都子さんが気に入って作っていたのは、紙ねんどスイーツ。紙ねんどでこしらえた、本物そっくりのお菓子に丁寧に色を塗り、防水効果のあるニスを塗ってマグネットにしたり、ストラップにしたり、はたまたただの置物としてちょこんと棚に置いたりしては、にこにこと嬉しそうに眺めていて。
けれども、お買い物の途中でうっかり転び、痛めてしまった左手は、1ヶ月はあまり動かさないように、とお医者様に言われてしまった。日常生活には大きな支障はないけれども、こんな状態ではお店の給仕はできないし、新しい小物もろくに作れなくって。
だから今日も伊都子さんは、お店の奥にある母屋の縁側から庭を眺めて、大きな大きなため息を吐く。
「――……はぁ」
がっかりしている伊都子さんに、ご主人の高明(たかあき)さんもどこか落ち込んだ顔だった。『somnium』は伊都子さんと高明さんの好きなものを詰め込んだ、2人の夢のお店だからなおさら、奥さんがお店に立てなくて落ち込んでるのが心配で仕方ない。
なるほど、とそんな高明の言葉に頷いたのは、普段は商店街のコンビニでアルバイトをしている、皆川 一和(みながわ・いちかず)だった。somniumの常連でもある一和は、珍しく1人きりでお店に立っていた高明さんに「あれ、伊都子さんは?」と何気なく尋ね、伊都子さんの怪我の事を聞いたのである。
どうりでどこか寂しい感じがする、と雑貨コーナーの方を眺めた。お店で売ってる小物の多くは、夫婦で旅行やなんかに行った先で見つけた品だから、全体の雰囲気が変わるわけではないのだけれども、伊都子さんの手作り小物もその中にあって、しっかりとお店の穏やかな空気を形作っていたのだから。
うーん、と少し考えて、一和はこう申し出た。
「だったら、俺が手伝いましょうか? や、もちろん伊都子さんのには敵わないと思いますけど……ちょうど今日、明日と暇なんですよ」
「おや、アルバイトはいいのかい?」
「妹達がどっか連れてけってうるさかったんで休みもらってたんですけど、その妹達が急に海外赴任中の両親のところに遊びに行くことになって」
一和は月曜日にどうしても休めない講義があるので行けず、留守番で暇を持て余すことになったのだと肩をすくめる。それはそれは、と暖かな苦笑いを浮かべた高明が、奥の母屋に居る伊都子さんに声をかけた。
話に聞いた通り、何だかしょんぼりした様子で出てきた伊都子さんだったが、「実は一和君がね……」と高明さんが事情を説明すると、みるみる顔が明るくなっていく。そうして「どうかな」と尋ねた夫に、「嬉しいわ」と伊都子さんはぱっと顔を輝かせて喜んだ。
いかにもうきうきとした様子で、一和へと向き直る。
「どうぞ、上がって頂戴? せっかくだから意見も聞きたいし、他にも色々、お話を聞かせて下さると嬉しいわ」
「あ、はい。お邪魔します」
「うふふ、嬉しい事。皆さん、怪我に気を使って下さるから申し訳なくて、あまり人と会ってなくて寂しかったのよ。他にもお客様がいらして下すったら嬉しいわ」
「それは良い。せっかくだから皆さんに、うちのケーキとお茶をご馳走しようか」
どうやら小物が作れない事はもちろん、お客様とおしゃべり出来ないのも寂しかったらしい伊都子さんの嬉しそうな様子に、高明さんも嬉しそうにそう付け加えた。そんな老夫婦を見比べて、そうですね、と一和は考える。
大学の友人連中は、島外の大学だから呼んですぐに来れるわけじゃない。だったら寝子島の人々に呼びかけた方が人も集まるだろうし、何より伊都子さんも高明さんも喜ぶだろう。
そう考えて一和は、じゃあ他にも声をかけてみますよと、ねこったーに『【ゆるぼ】今日明日、somniumで小物作りの手伝いが出来る人。奥さんが手に怪我をして作れないらしい。報酬はsomniumのお茶とケーキ!』と書き込んだ。そうして、早く早く、と伊都子さんがうきうき手招きするお店の奥の母屋へ、足を踏み入れたのだった。
いつもお世話になっております、水無月深凪と申します。
先日はリアクションを大変お待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。
今後は皆様をお待たせしないよう、よりいっそう気を引き締めて頑張りたいと思います(土下座
さて、そんなわけでお久し振りです、のシナリオはカフェ&雑貨のお店『somnium(ソムニウム)』での、こんなお手伝い依頼です。
メインは伊都子さんのお手伝いで紙ねんど細工を作って頂く事になります。
見本の紙ねんど細工を見ながら思い思いにお菓子を作って、乾いたらアクリル絵の具で着色して、防水効果のあるニスで仕上げ――という流れになります。
伊都子さんも色んな意見が聞きたいようですから、他にも好きな物を作って頂いても構いません。
ただ、大物ですと乾くのに時間がかかるので、着色まで辿り着かないかもしれません、くれぐれもご了承下さいませ。
<大雑把なスケジュール>
1日目(土曜日)→造形
2日目(日曜日)→着色&ニス塗り
なお、時間の限り紙ねんどスイーツを無心に作って頂いても、カフェで休憩をしたりしながらのんびり手伝っていただいても構いません。
紙ねんど細工に限らず、他にも思いついた事があればご自由に。
伊都子さんが喜ぶ事なら高明さんは大歓迎で、高明さんが喜ぶ事なら伊都子さんは大喜びです(こく
お礼のケーキは、一般的にケーキ屋さんに並んでいるものならたいていあるとお考え下さい。
珍しいものでなければ、お願いすれば高明さんが作ってくれるかもしれません。
お茶も同様に、一般的にカフェに在るものならたいてい揃っています。
『somnium』が初めての方はこちらをご覧ください。
『somnium』へようこそ!
『somnium』の店主夫婦は、ご主人が定年を迎えた後に夫婦揃って寝子島に移り住み、趣味を一杯に詰め込んだお店を開いたという、木原 高明(きはら・たかあき)さんと伊都子(いつこ)さん。
揃って68歳を迎える今も、海外や国内各地に旅行に赴いては、あちらこちらで仕入れてきた雑貨なんかをお店に並べていたりします。
髪に混じった白いものも目立つお年頃ですが、どこか可愛らしいような、優しい雰囲気が親しみやすい、とご近所では評判だとか。
皆様との関係は、無理のない範囲でご自由に設定して頂いて構いません。
なお、同じくガイドに登場する皆川 一和については、スルーして頂いて構いません。
参考までに、島外の大学に通う4年生、就職も無事に決まり最後の学生生活をエンジョイしようと頑張る22歳です。
こちらも関係は、無理のない範囲でご自由に設定して頂いて構いません。
と、ご紹介は致しましたものの、もちろんNPCに関係なくご自由にお過ごし頂いても構いません。
お気が向かれましたらお気軽に、どうぞよろしくお願い致します(ぺこり