霊界の銀朱駅で下車した者は鳥居で囲まれた道をゆく。何本もある為、すぐには歩き出せず、立往生となる者も少なくない。
一方で別の流れを生み出す。大柄な鬼は酒樽を抱えて大股で向かう。大家族の妖狐は子供達が弁当の中身の予想で盛り上がる。陽気な様子に釣られた者が次々と現れ、時に長い行列を作った。
目指す先には桜が咲いている。樹齢、百年を超えるような大樹が多く、青い空を薄桃色に染め上げた。
満開の桜の下、笑い声が絶えない。迷い込んだ人やほしびとの姿が、ちらほらと見受けられる。人種の垣根を超えて花見を楽しんだ。
「……ここは?」
グレーのスーツを着た若い男性は声を震わせた。目の前の光景が信じられないという風に何度も強い瞬きをした。夢の類いではないことがわかると身を縮めて目立たないようにそろそろと歩き始める。
屋台を出していた油屋 銀は目敏く見つけて声を掛けた。
「そこのスーツを着たお兄さん。万年桜を見るのは初めてですか」
「え、はい、と言いますか、甘い香りがして気づいたら、ここにいたのですが……どこなのでしょう?」
「霊界です。最近ではよくあるのですが、お兄さんも誘い込まれたようですね」
銀は糸目で微笑む。男性はやや青ざめた表情で視線を下げた。
「……私は、どうなるのでしょう」
「心配はいりません。時間が過ぎれば勝手に戻れますよ。それよりも万年桜を楽しんでいってください。お供には是非、油屋特製の稲荷寿司をどうぞ」
商売人の顔となって手前に積まれた弁当箱を勧めるのだった。
今回のシナリオは霊界の銀朱駅の近くにある、万年桜が舞台となります。
詳しい内容は下記をご覧ください。
∞∞∞ 今回の舞台 ∞∞∞
霊界の銀朱駅近くにある万年桜。複数の樹が何年も咲き続けている為、
一斉に花が散ることはない。四季に関係なく花見を楽しむことができる。
今回は花の甘い匂いが現世(寝子島、星幽塔)に漏れ出し、意識が遠のいた者達を霊界に誘い込んだ。
時間の経過で効果は薄れて、いつの間にか戻っている(帰還の方法はアクション次第)。
∞∞∞ 万年桜周辺 ∞∞∞
大樹の桜が何本も咲き誇る。下は草地で柔らかく直に座って飲食を楽しめる。
大小の東屋が幾つも作られた。家族連れや恋人達の利用が多い。
知らずに訪れる者にも人々は寛容で酒や肴を勧めて仲間に引き入れる。
誰とも関わらず、一人で花を愛でることもできる(アクション次第)。
∞∞∞ イベント&NPC ∞∞∞
・酒呑童子(二本角の巨大な赤鬼)
配下の鬼達を引き連れて盛大な宴会を催している。通り掛かる人物を見つけては酒を勧める。
酒豪を好み、張り合っては豪快に笑う。手土産に『鬼惚れ』という霊界の地酒を渡す。アルコール度数は高い。
・豆腐小僧(一つ目の小僧)
わんこ蕎麦ではなく、わんこ豆腐を開催中。豆腐の美味しさの宣伝が目的なので誰でも無料で挑戦できる。
時間は五分。お椀に一口大の豆腐が次々と入れられる。健闘すると記念品が貰える(品はアクション次第)。
・油屋 銀(銀髪で糸目の妖狐)
妖術に長けた狐。人前では人間の若い男性に化けている。
今回は屋台を出して稲荷寿司を売っている。具材には工夫を凝らす。
猫系の人物にはマタタビ入りの物を勧める。酒粕を取り入れた物や激辛の物まで含む。
説明は以上になります。
霊界のお花見ですが、のんびりと過ごしてもいいですよ。
自分をさらけ出して大いにはしゃぐこともできます。
万年桜は多くの種族の想いを受け止めてくれます。
甘い香りに包まれて楽しく、賑やかに過ごしましょう。